八咫烏 〜神になるか、人として戦うか〜

秀零

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プロローグ

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私達は、何処にでも居て
何処にも居ない……。
人々は知らない。
この世界の裏で、
終わりを迎えようとしている未来があることを。
「……やめて……お願い……これ以上奪わないで……」
静まり返ったビルの屋上。
制服姿の少女が、震える手でフェンスを掴みながら、夜の街を見下ろしていた。
遠くで響くサイレンの音。
誰も気づかない。
彼女が、今ここで終わろうとしていることに。
家族を失ったあの日から、何もかもが色を失った⸺。

「……もう、いいよね……」
そう呟いて、少女――神楽天音は、踏み出そうとした足に力を込めた。
その時⸺。

「……死ぬな」
低く冷たい声が、闇の中から響いた。
驚いて天音は振り返る。
そこには、月明かりに照らされた青年が立っていた。
黒いコートに、無表情の瞳。
その存在は、夜の闇に溶け込み、この世のものとは思えなかった。

「俺の名は紫苑。
 ……世界を変える気はないか?」

「え……?」
意味がわからない。
世界を変える?
そんなこと、私にできるわけが――。
青年は無言で手を伸ばす。
「来い、お前には、その力がある。」
月明かりに照らされた紫苑の瞳には、冷たさの奥にかすかな哀しみと決意が宿っていた。
彼の手を取った瞬間、私の世界は音を立てて崩れ、そして新しい世界が始まった。
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