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CASE9 救済者 vs レジスタンス

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エドガーがアゲハを背負って

私は一人で歩いて外に出た頃には


太陽はだいぶ傾いていて、もうすぐ夕方になりそうだった。


城から出て少ししたら私たちの姿を見たスーたちが近づいてきて、それからビックリしていた。


左腕から血がボタボタ垂れているエドガー

背中がざっくり斬られた私

そして、気を失ったままのアゲハ


みんなが待機している場所は少しだけ木や草が生えている場所で、少しだけ隠れる事ができた。


「ねぇっ!アゲハは大丈夫なの!!?」

ミレイは必死にエドガーに聞いているけど、エドガーも困り顔。

大丈夫……ではないだろうね。


現に今も、少し苦しそうに息をしているし。


「今は……分からない。目が覚めたら私たちに襲いかかる可能性も、、ある」

みんなの目が見開かれて、エドガーとアゲハを交互に見ていた。

それで、気づいたんだと思う。


私とエドガーの、怪我の原因。


「とは言えアゲハの怪我を放ってはおけない。誰か手当てを頼む。もし目が覚めたら……ジェス、頼めるかな?」


「アゲハくんだけを別の空間に閉じ込めろって事かい?あまり気は乗らないが……」


ジェスさんは本当に嫌そうに言っていた。


「アゲハがいつものアゲハなら、もちろん不要だ。だが……まぁ、大丈夫だと信じたい。ね、ソラ?」


「うん。きっと大丈夫……でも、身体が大丈夫かどうか……」


すごい高熱があるって事は、エドガーも運ぶ時にすぐに気づいた。

だから、こんな状態のアゲハを戦わせた花将軍に対して、かなり怒っていた。


「ソラもね、キミも身体は大事にしなさい。ルーラ、ソラを頼めるかな?」


私はルーラが手当てをしてくれることになったし、アゲハはミレイが怪我の具合を診ている。



……あ、そうだ。


ポケットに手を入れたらちゃんとある。


ランさんから預かっている薬。


「ミレイ。これ、ランさんから預かっている薬なの。たぶんいいヤツなんじゃないかな??だから、アゲハに使って?」


アゲハがいなくなった日からはじめて

ミレイに話し掛けた気がする。


気まずいし、何言われるか分からなくて、ミレイを避けていたもんなぁ、私。



だけどミレイは鋭い目で私を見て


手に持っていた薬を叩き落とした。



「やめてよ。アゲハを嫌っているランの薬とか、アンタが渡してくる物なんて……怖くて使えるわけないじゃない」


ミレイが怖くて、黙って拾ってポケットに戻した。

ランさんは悪意があって私に渡したんじゃないと思う。


でも……ミレイは信用できないんだね。

ランさんだけじゃなくて……私の事も、、、


私とミレイのやり取りを見ていたスーとイブキは何も言えずにただ見ていて

二人には目で謝って、ルーラのところに戻った。



「ソラ……本当はものすごく痛いでしょ?」


「うん………まぁ……熱いし痛い」


「魔法で治してもいいくらい深いよ。絶対に跡になるし、魔法で治そうか?少しは跡も薄くなる」


ルーラの申し出に、ちょっと悩んだ。


跡になるのは嫌だし、血がダラダラ流れてるの分かるから貧血になりそうだし。

それに、、アゲハがこの怪我で罪悪感を感じるかもしれないし……。



でも、リスクがある。

アゲハがこの怪我を魔法で治したと知ったら?

それもそれで、罪悪感を感じるだろうなぁ……。



「このままでいいよ。寝れば治る」


「治んないってっ!!戻ったらちゃんとお医者さんに診てもらうからねっ!?もう安静にしててよっ!?」


ルーラの勢いが予想以上でたじろいだ。


応急手当をしてもらって、みんなのいるところに戻ったら

エドガーも応急手当が終わったみたいだった。


みんな、アゲハの傍で何かを見て驚いた様子だった。



「どうしたの?……って、、これっ!!」


アゲハの怪我の手当てのため

服のボタンを外した先にあったのは


アゲハの核……なんだけど、、、



核周辺の皮膚は所々裂けているし、どう見たって腫れている。

その腫れたところにある小さい傷から、膿も出ている。


なのに、、手当てをされた形跡は、ない。


「なんで……酷い、、」


アゲハの状態を見て、ミレイは泣き出してしまった。



こんな状態で、、苦しくないはずはない。

きっと痛いし辛かったと思う。


なのに、、アゲハは………。



「……みんな、私は戻るから。アゲハを頼んだよ?」

アゲハの顔を撫でたエドガーは、静かにそう言って立ち上がった。



「エドくんも怪我は軽くないよ!?無理しちゃ……」


スーが止めようとしたけど、止めなかった。


ううん、止められなかった。



エドガーは、誰も話し掛けたらいけないくらいの

そんな空気を纏っていたから。

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