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CASE10 傷痕

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血液検査をするらしいから、何かされてたら分かるらしい。

それから、点滴はしばらく続くみたいで終わるまではお医者さんとレオンがついているから私は休めって言われた。


私がまだ色々と聞きたそうにしても、私の怪我と体調を心配されちゃって、、

夜もふけてきたし、夕飯は食べてないけどお腹は空いてないし……

って事で、寝ることにした。



隣の部屋に入って着替えてベッドに潜り込んで


隣のアゲハの部屋に人がいる気配を感じながら眠りについた。





**********




まだ夜が明けきる前で外が薄暗い時間


隣の部屋から、激しい音が聞こえてきて、目が覚めた。


金属製の物が倒れる音と、複数の足音


それと、アゲハの叫び声。



なんて言ってるかは分からないけど、昨日の夜みたいな、、そんな声で



だから、慌てて飛び起きて部屋から出たら、廊下にはお医者さんとゼロさん

それから、私と同じタイミングで左端の部屋からエドガーが出てきた。



「悪かったからっ!!武器は降ろせ!!なっ?あぶねぇだろ?」


部屋の中からは焦ったようなレオンの声



「俺に……近づくなッッ!!!」


それから、怒っているアゲハの声。




部屋に近づいて中を覗くと

両手をあげているレオンと、そのレオンに対して大鎌を向けているアゲハ。



部屋の中では点滴の台が倒れているけど……何があってどういう状況?



「話を、な?話をしよう!!話せばお前だって分かるはずだ!」


そう言いながらレオンが一歩前に進んだら

アゲハは武器を自分の方へ引いた。


先端にも刃がついているアゲハの武器だから

真っ直ぐに、胸の真ん中

心臓の辺りに、刺さった。


ジワッと服に血が滲んだけど、まだ深くは刺していないはず。

レオンを睨み付けながら、手に力を込めたのが見えた。



「ちょ………ッ!!おまっ!なんで自分を……!!?」


「馬鹿!レオンが下がれ!!なんかヤバイ状況だ!」


ゼロさんに服を引っ張られて、レオンが数歩下がった。


「ゼロ!アゲハは混乱しているだけだから!話せば分かるって!なぁ、アゲハ?」


レオンがアゲハに向かって声をかけたけど

アゲハには、届いていないみたい。


すごい顔でレオンたちを睨みながら、叫んだ。



「俺を、、、こんなにした世界の人間を……信じられるか!!!」


この言葉に、この場にいた全員が目を見開いて驚いていた。


でも、誰も何も言わなくて……。


みんな、すごく悲しい顔をしていた。





「俺に何をした!!!俺に……俺の身体に触るな!!!誰も近づくな!!!」


アゲハは叫びながらも泣いていて

武器を強く握っている手も震えていた。



アゲハはこのままだと本当に自分で自分を刺し殺す……って私も感じたから

私もレオンの服を引っ張って、首を横に振った。



「分かった。部屋には入らねぇ………悪かったな、アゲハ。お前を苦しめる事、しちまったみたいで……」


レオンはそう言って部屋から出て、ドアを閉めた。




「……先生も、悪かった。一晩中付き合わせたのに、迷惑をかけた。すまない」


レオンが頭を下げたけど、お医者さんは「気にしないでくれ」と言って苦笑いをしていた。


「何があった?」

エドガーの問いかけにレオンはアゲハの部屋のドアをちらっと見て、それからエドガーに向き直った。


「下で話す……立話じゃあなんだしな」


みんなで一階に降りて椅子に座って。

お医者さんだけは、ソファに腰掛けて会話を聞くだけみたいな様子だった。



「端的に話すと目を覚ましたアゲハが点滴をぶち抜いて点滴の台をぶっ倒してから俺らに向かってキレたんだよ『俺に何をした!』って感じでね。で、説明しようとしたら武器を出して威嚇されたって感じ」


レオンの説明でなんとなく状況は分かったけど……

点滴がキレたポイント?


「昨日無理に治療したのが余計だったかな?」


「いや、治療しなきゃアイツ死んでただろうから」


エドガーの言葉に間髪いれずにゼロさんが答えたけど、エドガーが首を横に振った。


「いや、だからね……アゲハ自身が“治療されるなら死んだ方がマシ”って思ったのかもしれないな……とね。
今までアゲハに何かあった時のためにと何人の医者に有事の際は治療してくれないかと頼んで、どんな断られ方をしたか……。
了承した医者もいたけど、それは新人類を調べるための…人体実験を兼ねてだと分かって、あの子の心を何度傷つけたか……。
だから、あの子が医者に治療されるなら……って思ってもおかしくない」


エドガーの話は私も知らなかった話だった。

きっと、酷い事を言われたり、怖がられたり、気持ち悪がられたり……したんだろうね。
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