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1:バースでの新生活
16:アスコットとアーサー
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騎士団の中を歩いていると「あれがアーサーのとか」ヒソヒソ話が聞こえて来る。
気にせず歩いていると、
「失礼ながらゼオン侯爵令嬢であらせられるか?」
と声をかけて来られる。
振り向くと30代くらいの騎士が明るく笑いながら立っている。アーサー以上の長身で190cmほどだろうか。身体つきはかなり逞しいのだが、表情は優しげで親近感が持てる。
アーサーもそうだけど見上げるようだわねと思いながら、
「はい、そうです。失礼ですが、貴方様は?」
と尋ねると、
「ああ、私は第四騎士団団長のアスコットです。お見知りおきを。ゼオン侯爵とは同級生でして。そして、アーサーは、もともと私が剣を指導していたのですよ。」
嬉しそうに自己紹介して騎士の礼をとってくれる。
「まあ、第四騎士団と言えば、街の平和維持が役割で麻薬問題も取り扱っていらっしゃると聞いてます。ケントの件ではご迷惑をおかけしました。」
シャーロットがカーテシーをして、謝罪する。
アスコットが慌てたように、
「そ、そんな、あなたがあやまることではない、あなた方は被害者なのですから。アーサーのところに来たのでしょう?ご一緒させてください。惚けた顔のあいつを見ておきたいですからな。ハハハ」
と大声で笑う。
「ありがとうございます。では、ご一緒させてください。」
「あなたには本当に感謝しているのです。生きていてくださって」
歩きながら、アスコットが微笑み言う。
「え?」
「あなたが亡くなったと聞いてからのあいつは本当に酷かった。死んだ魚の様な目というかな。心から笑っている姿を見ることは無くなってしまったんです。ゼオンから戻って来たあいつは別人だ。本当に良かったとホッとしています。総団長も、あいつがまだ忘れられずにいるのはわかっていても跡を継がせなければならない、それに新しい相手を見つけて幸せになってほしいんだと、飲みに行くと俺にこぼしておられましたから。」
「私がいなくなったことで色々な方にご迷惑をおかけしたのがだんだんとわかってきて申し訳なく思っているのです。」
シュンとすると
「あ、あなたは何も悪く無い、悪いのはゲルトランです。あいつを幸せにしてやってください。」
慌ててアスコットが言う。
「はい、約束いたします」
シャーロットは微笑む。
デイビッドは、後ろで感無量である。
アーサーの部屋に到着する。
「シャーロット、よく、来たね。疲れてないかい?」
アーサーが急いでシャーロットの元にやってきて、嬉しそうに軽く抱きしめ頰にキスをする。
「アーサー大丈夫よ。」
アーサーを見ながら微笑む。
「いよお、アーサー、わたしには言ってくれないのぉ?」
「団長・・、どうしてシャーロットと一緒に・・」
苦虫を潰したような顔をアーサーはする。
「いや、シャーロット嬢の案内だ。案内。」
アスコットが笑いながらヘラっと弁明すると、冷たく
「では案内ありがとうございます。御用が終わりましたからお帰りください。」
アーサーが返事する。
「ほんと、つれない態度だなあ。」
二人は仲良さげにふざけ合っている。
「お二人はとても仲が良いのですね。」
感心して話す。
「まあ、なんせ、アーサーが小さい頃からの付き合いですからね。」
アスコットが、アーサーの首に腕を回す。
いつものことなのだろう、アーサーは、兄に揶揄われた弟の様にため息をつく。
ふと、シャーロットは、この間の女子会のことを思い出す。そ、そう、確か師弟愛って。この二人のことをみんなそういう風に想像しているってこと?
思わず、まじまじとじっと二人を見てしまう。つい、月夜に二人が見つめあう姿を想像してしまった。
「シャーロット?アスコット殿をそんなに見つめてないでくれ。嫉妬してしまいそうだ」
アーサーが牽制して、指先に口付けしてくる。
「ご、ごめんなさい。つい。気にしないで。ほんと、大丈夫だから」
「はぁ、アーサー、お前、本当に嫉妬深いな。俺様の素敵さにいくらシャーロット嬢がぼうっとなったからって。」
アスコットが肩をすくめて頭を振る。
「そ、そんなことはないです。全然ないですから」
ブンブンと首をよこにふって慌てて否定する。
「いや、シャーロット様、全力で否定するのはちょっと・・」
デイビッドが焦ってフォローしてくる。
「ご、ごめんなさい。でも、アーサー、好きなのは貴方だけだからね」
シャーロットも混乱している。
「シャ、シャーロット・・・」
シャーロットが他の男を少し見つめていただけで嫉妬していたアーサーだが、貴方だけが好きとみんなの前で言われた途端嬉しくて真っ赤になる。
デイビッドは、はあ、もう収集がつかないと困惑している。
ドアがバンッと開いたと思ったら、
「みなさんで何をしているんです。ほら、若、さっさと屋敷に戻らないと奥様の怒りを買いますよ。シャーロット様が来られるのを今か今かとずっと待っていらっしゃるんですからね。アスコット様もいい加減、若をからかうのはやめてください。デイビッド、お前もなんだ。もっとしっかりしろ!」
ちょうど、部屋に入って来たオスカーがどんどんみんなを促していく。
さすがオスカーである。
気を取り直したアーサーがシャーロットに声をかける。
「そ、そうだね。さあ。今日は一緒にイーズス家で夕食を食べる約束だろ?母上もエリザベスも君がくるのを楽しみにしている。移動しよう。」
「では、失礼します、団長」
「おお、総団長によろしく。あと、奥方にもな」
アスコットが笑いながら送り出してくれた。
気にせず歩いていると、
「失礼ながらゼオン侯爵令嬢であらせられるか?」
と声をかけて来られる。
振り向くと30代くらいの騎士が明るく笑いながら立っている。アーサー以上の長身で190cmほどだろうか。身体つきはかなり逞しいのだが、表情は優しげで親近感が持てる。
アーサーもそうだけど見上げるようだわねと思いながら、
「はい、そうです。失礼ですが、貴方様は?」
と尋ねると、
「ああ、私は第四騎士団団長のアスコットです。お見知りおきを。ゼオン侯爵とは同級生でして。そして、アーサーは、もともと私が剣を指導していたのですよ。」
嬉しそうに自己紹介して騎士の礼をとってくれる。
「まあ、第四騎士団と言えば、街の平和維持が役割で麻薬問題も取り扱っていらっしゃると聞いてます。ケントの件ではご迷惑をおかけしました。」
シャーロットがカーテシーをして、謝罪する。
アスコットが慌てたように、
「そ、そんな、あなたがあやまることではない、あなた方は被害者なのですから。アーサーのところに来たのでしょう?ご一緒させてください。惚けた顔のあいつを見ておきたいですからな。ハハハ」
と大声で笑う。
「ありがとうございます。では、ご一緒させてください。」
「あなたには本当に感謝しているのです。生きていてくださって」
歩きながら、アスコットが微笑み言う。
「え?」
「あなたが亡くなったと聞いてからのあいつは本当に酷かった。死んだ魚の様な目というかな。心から笑っている姿を見ることは無くなってしまったんです。ゼオンから戻って来たあいつは別人だ。本当に良かったとホッとしています。総団長も、あいつがまだ忘れられずにいるのはわかっていても跡を継がせなければならない、それに新しい相手を見つけて幸せになってほしいんだと、飲みに行くと俺にこぼしておられましたから。」
「私がいなくなったことで色々な方にご迷惑をおかけしたのがだんだんとわかってきて申し訳なく思っているのです。」
シュンとすると
「あ、あなたは何も悪く無い、悪いのはゲルトランです。あいつを幸せにしてやってください。」
慌ててアスコットが言う。
「はい、約束いたします」
シャーロットは微笑む。
デイビッドは、後ろで感無量である。
アーサーの部屋に到着する。
「シャーロット、よく、来たね。疲れてないかい?」
アーサーが急いでシャーロットの元にやってきて、嬉しそうに軽く抱きしめ頰にキスをする。
「アーサー大丈夫よ。」
アーサーを見ながら微笑む。
「いよお、アーサー、わたしには言ってくれないのぉ?」
「団長・・、どうしてシャーロットと一緒に・・」
苦虫を潰したような顔をアーサーはする。
「いや、シャーロット嬢の案内だ。案内。」
アスコットが笑いながらヘラっと弁明すると、冷たく
「では案内ありがとうございます。御用が終わりましたからお帰りください。」
アーサーが返事する。
「ほんと、つれない態度だなあ。」
二人は仲良さげにふざけ合っている。
「お二人はとても仲が良いのですね。」
感心して話す。
「まあ、なんせ、アーサーが小さい頃からの付き合いですからね。」
アスコットが、アーサーの首に腕を回す。
いつものことなのだろう、アーサーは、兄に揶揄われた弟の様にため息をつく。
ふと、シャーロットは、この間の女子会のことを思い出す。そ、そう、確か師弟愛って。この二人のことをみんなそういう風に想像しているってこと?
思わず、まじまじとじっと二人を見てしまう。つい、月夜に二人が見つめあう姿を想像してしまった。
「シャーロット?アスコット殿をそんなに見つめてないでくれ。嫉妬してしまいそうだ」
アーサーが牽制して、指先に口付けしてくる。
「ご、ごめんなさい。つい。気にしないで。ほんと、大丈夫だから」
「はぁ、アーサー、お前、本当に嫉妬深いな。俺様の素敵さにいくらシャーロット嬢がぼうっとなったからって。」
アスコットが肩をすくめて頭を振る。
「そ、そんなことはないです。全然ないですから」
ブンブンと首をよこにふって慌てて否定する。
「いや、シャーロット様、全力で否定するのはちょっと・・」
デイビッドが焦ってフォローしてくる。
「ご、ごめんなさい。でも、アーサー、好きなのは貴方だけだからね」
シャーロットも混乱している。
「シャ、シャーロット・・・」
シャーロットが他の男を少し見つめていただけで嫉妬していたアーサーだが、貴方だけが好きとみんなの前で言われた途端嬉しくて真っ赤になる。
デイビッドは、はあ、もう収集がつかないと困惑している。
ドアがバンッと開いたと思ったら、
「みなさんで何をしているんです。ほら、若、さっさと屋敷に戻らないと奥様の怒りを買いますよ。シャーロット様が来られるのを今か今かとずっと待っていらっしゃるんですからね。アスコット様もいい加減、若をからかうのはやめてください。デイビッド、お前もなんだ。もっとしっかりしろ!」
ちょうど、部屋に入って来たオスカーがどんどんみんなを促していく。
さすがオスカーである。
気を取り直したアーサーがシャーロットに声をかける。
「そ、そうだね。さあ。今日は一緒にイーズス家で夕食を食べる約束だろ?母上もエリザベスも君がくるのを楽しみにしている。移動しよう。」
「では、失礼します、団長」
「おお、総団長によろしく。あと、奥方にもな」
アスコットが笑いながら送り出してくれた。
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