死にきれない私

やぼ

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もうやってけない。

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売れない絵本作家、相澤ナナ。
絶望の淵にいた。
もう思い残すことなどない。

眼下は、断崖絶壁、
自殺の名所と呼ばれる場所。

ふと、空を見上げる。

生まれて物心ついた時は
児童養護施設だった。

父親も母親も知らない。
兄弟姉妹がいるのかも分からない。

親友とか、いない。

だが、恋人はいた。
昔、絵本作家大賞を受賞すると、いきなり現れて
まとわりついてきたエディターだ。

あ~しろ、こ~しろと
何かと作品に難癖つけてきて
何の手応えもない
売れそうにない物書きだと
分かると自然と消えて行った。

2番目の恋人は
結婚詐欺師だった。

出会い系で知り合った男。
ナナの預金も現金も、
持ってたお金を全て盗んで
消えた。

もう明日食べてくことさえ
出来なくなった。

というか、
生きていくことが
煩わしかった。

さあ、飛ぼう!

ナナは、一歩を踏み出した。



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