死にきれない私

やぼ

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未練などないのに。

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「ねえナナ、もう生きるの
どうしても嫌になったの?」

「うん。クロちゃんも知ってる
でしょ。私、普通に生きること
出来ない人間なのよ」

「そんなことないよ。ナナは
忘れたのかもしれないけど
ナナに助けられた人達は、今でもナナに会いたがってるんだよ、生きてる人も死んだ人達でさえ。」

「私、誰も助けてないよ。
多分、ね。」

「もう亡くなって、あの世に
行ったけど、ここでお茶を一杯
飲んでいったお婆さん、相澤ナナちゃんに最後に会いたかったって言ってたんだよ。」

「誰?」

「梅子さん、小学校の隣に
住んでたお婆さん。
僕にいつも優しくしてくれて
ナナちゃんと何度も遊びに
行ったよ。覚えてないの?」

「あ、梅子さん、覚えてる!」

「ナナが可愛いくて、引き取って養子にしたかったけど、年齢のことと家族に反対されたので、ナナとの約束を果たせなかったって
とても嘆いていたよ。
ナナが家族より梅子さんのこと
心配してくれて好きだったんだって。」

「そっか。
梅子さん、ナナちゃんのお母さんにはなれないけど、おばあちゃんになるよって、いつも家族
が欲しいって言うと、言ってくれたっけ。」

「クロちゃん、私、梅子さんに
会いたくなった、あの世へ
連れて行ってくれない。」

「ちょっと待って、ナナ、
もう少し話させてくれる。」

「クロちゃん、それにさ
私の身体は、海の上を無惨な
姿でプカプカ浮いてるんでしょ?」

「身体なら連れて来てるよ。
あそこに。」

え?、驚いてナナは飛び上がって
後ろを見た。

ずぶ濡れで青白い顔のナナが
横たわっていた。


「どうやって、見つけたの?」

「僕は黄泉の番人なんだよ、見損わないでくれる!」

クロ猫は、ニヤリとして
ナナに、当然だろと言った、


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