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5話
しおりを挟む準備のために与えられた10日はあっという間に過ぎた。
僕は今日、ついに後宮を去る。
後宮の外に、僕の夫となる禁軍将軍が迎えの牛車を寄越してくれるらしい。
夫となる人物がどのような人であるか、まだ僕は知らなかった。僕は王さま相手に2年、秀鴈さま相手に5年、そしてその他の間は男根を模したつややかな石を相手にしていた。
いまさら普通の男では、僕は貞淑な妻にはなれないだろう。後宮を出たら間違いなく男を漁る。
この10日間は、どうすれば体の疼きを我慢できるのか、それだけを考えていたが、答えなど出るはずもない。
僕は悶々としながら、ゆっくりと歩いて門へ向かった。気分は処刑場へ向かう罪人である。
後宮の門を出たところに、約束通り迎えの牛車が来ていた。
「……秀鴈さま?」
牛車の側には1年ぶりに見る顔があった。
「お迎えに参りましたよ」
彼は鷹揚に手を上げた。
「ええっと?」
「私が、あなたの夫になります」
困惑する僕に、秀鴈さまはさらりととんでもないことを言った。そして僕が何かを言うより早く、僕を抱き上げるとそのまま牛車の中に押し込んでしまった。
「さあ、私がいない間、あなたが浮気をしていないか確認しましょうね」
着物越しに乳首を摘ままれる。猛禽類のような目が、僕を射貫く。僕の心配は杞憂であったらしい。僕の尻穴がじくりと熱を孕んだ。
*秀鴈視点
後宮にはもともと麗しい人が多いが、その人はまた格別美しかった。ひとめで恋に落ちた。私は寝ても覚めてもその人のことで頭がいっぱいになってしまった。
後宮に出入りすると、この病にかかる男は多い。しかし、私の場合、状況は最悪だ。
「秀鴈よ。特別に光琳を見せてやろう」
王はその麗しい人の体を貪り、あまつさえ私にその様子を見せた。麗人は王の凶悪なまでのそれを尻穴で銜え込み、目に涙をためてあられもない嬌声を上げていた。
——私は、食い入るようにその痴態を見た。
そしてその痴態は私の病をより深刻にした。
私は王の褥に口を出すことをきらっていた。それは宦官の役目であって、武人の私の役目ではないと信じていた。しかし、進行した病は私の信念を崩した。
「陛下、あたらしい妾姫はたいへん美しいとか」
王に他の妾姫を推薦し、光琳に王の関心がいかないように仕向けた。もともと移り気な王はあっという間に他の妾姫のもとへ通いだした。
光琳は1年間沈黙を貫いた。
しかし、室の等級が下げられて、そしてようやく彼は私たちのところへと落ちてきた。
側人たちの控えの間には、王への取り次ぎを願う妾姫たちが次々と訪れる。そのほとんどは王の歓心を得ることよりも金を得ることを目的にしている。
妾姫たちは後宮にあって給金が低い者もいる。側人や宦官に媚びを売ってかんざしを買おうというのだ。たしかに、それは宮廷の外よりもはるかにいい商売である。
そのような場に、光琳はのこのことやってきた。美しい彼が現れたとき、何人もの側人たちが反応をしたが、私は誰よりも早く動いた。
他の男に触らせるくらいなら私が、と決めていた。
最初は、ほんの少し光琳に意地悪をして追い払うつもりだったのだが、乳首をつまんだだけで感じる彼の体を見て、抑えが効かなくなった。
そうして抱けば抱くほど気持ちは抑えられず、かといって悟られては足元をすくわれる。妾姫との恋愛など醜聞もいいところだ。私は必死にそっけないふりをした。
それに、彼を抱いたあとは闘志がみなぎっていた。彼を抱いたら、私はいつもその足で鍛錬場へ向かった。
どれほど茨の道であろうとも、彼と結ばれたかった。後宮の片隅でまぐわうような関係ではなく、正式に認められて結ばれたいのだ。
そのためには立身出世をするしかない。私は武人だ。手柄を立てなければならない。
私は人一倍鍛錬に励んだ。
東部で反乱の報せがあったとき、渡りに船、とはこのことだと思った。
私はいのいちばんに駆けた。
そして、ついにそのときが来た。
「お迎えに参りましたよ」
後宮の外でまちかまえていた私を見て、光琳は口をぽかんと開けた。
「ええっと?」
「私が、あなたの夫になります」
私は王の近衛兵から禁軍将軍になった。そして光琳は王の妾姫から私の妻になるのだ。
その事実が、たまらなくうれしい。
しかし、それ以上に気になることがある。
「さあ、私がいない間、あなたが浮気をしていないか確認しましょうね」
私の妻になる人がどれだけ淫乱であるか、私はよく理解していた。そして、淫乱ゆえに、私の手中に落とすこともたやすいはずだ。
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