君の匂い

あおまる

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体育祭練習

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「…やばい、」

7月某日、体育祭まで一週間を切った紅組も白組も練習に熱が入っていた。

熱が入るとなるとリハーサルも細かくなり必然的に女子の日焼け止め対策や制汗剤や整髪料の匂いも強くなる。さらに炎天下ときた。

人より鼻がよく、今年は少し夏バテ気味の奏空(そうた)にはそれだけで倒れる理由には充分すぎた。

『あー…はるの初団長姿、見たいな…』

奏空の友達であり親友の藤原陽翔(はると)は紅組応援団長が決まってからというもの半端じゃない練習をしてきた。
奏空が好きな低く綺麗な声は掠れ咳も出る。
その度に奏空はのど飴やスポーツドリンクの差し入れをしていた。
奏空は今年白組で敵どうしだったがそんなことなど忘れ陽翔のサポートをしていた。
近くで見守ってたから1番頑張ってたのを知ってた。今日は紅白どちらの応援団長も袴に着替え一通り通す予定だ。陽翔の初袴姿を奏空が一番楽しみにしていたと言っても過言ではない。

応援団は団着がある体育倉庫横に着替えに行こうとしている。

あー、あとちょっと。

なのに。

気持ちが悪くなり頭がぐるぐるする。
足に力が入らなくなり、目の前が真っ暗になった。
だが奏空の膝が地面に着くことは無かった。

トスッ 後ろから誰かに肩を支えられた 
 …ん?あれ、この匂い…?
「奏空!大丈夫か?!」
え…なんで、
「なんで、はる、がここに?」

すぐ近くにある顔を見る
明るい髪の毛が風に揺れ陽翔の顔は不安げな顔をしていた

あれ…応援団、練習が、あるんじゃ…
「なに、やってんだ、はる…。お前、応援団が…」
「今は応援団とか後だろ!…ほら保健室行くぞ。」
俺のせいで迷惑かけられない。迷惑かけたくない。
「いやっ…いい、自分で。」
「そんなフラフラしといて何言ってんだ笑 ほらっ」
「いいって…迷、惑かける…」
「…はぁ~。しっかりつかまっとけよ。ょぃしょ!」

一瞬何が起こったかわからなかった。陽翔の胸が目の前にあり、見上げると顔が近い。いわゆるお姫様抱っこだ。周りの女子が興奮してうるさい。

「あっ…え、うわっ、下ろせっ」
「こらこら、暴れんな。先生ー!こいつ倒れたんで保健室連れて行きまーす!」
「あー、お前応援団長だろ?保健委員は?」
「俺っす笑 女の子にも頼めないしちゃちゃっと行ってくるんで。」
…嘘つけ。保健委員は田中と木村さんだろ
ちらっと目線の上の顔を見ると『しーっ』ってされて何も言えない。
ぐっ…まぁ、助かった。あのまま倒れてたらどうなってたか分からない。陽翔の匂い、嫌いじゃないし…少し、落ち着いたかも。

「おー!すぐ戻れよ!しゃあねぇ、リレーの…」

先生の言葉を背に保健室へ向かった
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