魔王様に溺愛されながらも異世界快適ライフ

saku

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1.魔王様との出会い

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黒髪に紅い目をしている男の人に首根っこを掴まれ。一人の子供は、宙ぶらりんになっていた。

「……お前、何処から来た」

「やぁ~!! はなちて~!!」

何故、こんな状況になったかは数分前まで遡る……。

日本と呼ばれる国で生まれ。普通の家庭で育って、就職をして。結婚は出来なかったけれど、友人達と遊んだりとそれなりに人生を楽しんでいた。
いつもと変わらず、仕事から帰り。その日は凄く疲れていたので、着替えなどもしないままベッドに倒れ込んだところまでは覚えていた。

(何故、知らない森に居るの? きちんと思い出さないと……。)

ここが何処なのか分からなくなり、キョロキョロと周りを見回してみるが、周りに見えるのは木だけ。

(それも、なんか気味が悪い。暗くて、変な生き物もいるし……。)

目の前を、本で魔物と呼ばれていたスライムが通った。

「しゅらいむ!?」

子供の様な、舌ったらずな喋り方。そして、子供の様なぷにぷにとした小さな手……。
やっと、自分が小さくなっている事に気がつく。

(とにかく、此処から移動しよう……。)

魔物に見つからない様に、隠れながら移動する。
草が生い茂っているから、小さい体を隠すのには最適だ。
しばらく歩くと、湖みたいな所が見えてきた。

「みずぅ~!!」

湖に駆け寄り。水面を覗き込むと、こちらを可愛い女の子が見ている。
銀の髪の毛に、左目が薄紫。右目が水色のオッドアイだ。

「ふあぁぁぁぁ!! かぁ~い~!!」

思わず頬に手を当てると、水面に写っていた子も頬に手を当てている。

(これが、私?? 凄く可愛い顔をしている。)

でも、こんな小さな子供がこんな森に一人で居るなんて可笑しいと思い始めた。

(何かあったのだろうか……。)

何度考えても分からなく、首を傾げていた時だった。

ヒュー……ドーン。

何かが落ちてくる音がし、後ろで砂埃が上がった。
振り向くと、黒色の長髪の男の人が立っていた。
男の頭には、角が生えている。

(コスプレ……?)

男の目がゆっくりと開き、此方を見る。紅い瞳が此方をジーッと見ている。

「お前は誰だ? 何故、人間が此所にいる」

低い声色だが、聞きやすい安心する声だ。

綺麗な顔……。
そう思いながら、男の人をボーッと見ていたら冒頭の様に首根っこを掴まれて宙ぶらりんになってしまったのだ。

「聞いているか? お前は、何処から来た」

「わかんにゃいの~!! はなちて~」

「分からない? もしかして、親に捨てられたのか??」

手を振り回して、バタバタと暴れていたが。そう言われピタリと止める。
(……やっぱりそうなのかな?)

親らしき人なんて居なかったし、魔物が通る所にほったらかしにされていたんだもの。
この体の持ち主は、捨てられてしまったのだと実感する。

「ふぅ……うぅ~」

捨てられたと自覚すると、涙が止まらない。魔物を見ても、怖いという感情が出てこなかったのに。
ポンポンッ……。
いつの間にか、首根っこを掴まれて宙ぶらりんになっていたのを男の人は、抱き抱えながら背中を優しく叩いてくれてた。

「しゅたれちゃったの~? うぅ~!!」

涙を隠すように、男の人の服にしがみつく。

「……此所に子供が居ると言うことは、珍しい。……でも、たまに来る子供達はそう言う理由で来ている者達が多いのだ。」

男の人は、ゆっくりと説明をしてくれた。
悪魔を召還するのに生け贄がいるのだと。その多くは、子供や放浪者など様々らしい。生け贄として使われた者が、悪魔の気まぐれでこの魔界に落ちてくるらしい。
只。ほとんどの者が、魔物に殺られたりと生きている事がないらしい。

(……ここ魔界なの? す、すごーい!!)

そう思うと、流れていた涙も止まった。

「ど、どうした? いきなり目をキラキラさせて」

「ねぇねぇ、おにいしゃん。まおうしゃんっていましゅか?」

「魔王? 私だぞ?」

「……。」

(えっ!? この男の人が、魔王様!?)

「しゅ、しゅご~い!!」

手をパチパチと叩く。

「まおうしゃま。魔法はつかえましゅか?」

「ん? 使えるぞ?」

ドーン!!

そう言うと、魔王は目の前にあった木々を焼き付くした。

「ふぉぉぉぉぉ!!」

(私も使えるのだろうか!!)
魔王みたいに火を出したいと思いながらも、前に手を出すが手からは何も出ない。

「クククッ」

「でにゃい!!」

(何故!?)
魔王様を見ても、楽しそうに笑っているだけ。

「……魔力を感じられてないのであろう。」

「まりょく?」

首を傾げていると、魔王様は何処かに歩きだした

「どこいくの~?」

「帰る」

(……そうか。魔王様、もう帰ってしまうのか。これから私は、どうしよう? 捨てられたのだったら、人間が居るところに帰るのは難しそうだし。かといってこの魔界で暮らしていくには、力が無さすぎてすぐに死にそう……。)

そんな事を考えていると、足が地面から離れていた。

「よし、行くぞ」

「えぇぇぇぇ!? まおうしゃま、わたちをどこにつれていくの?」

先ほどの様に、また首根っこを掴まれて宙ぶらりんになっている。

「……? 何を言っている。居場所が無いのであれば、城に来るがいい。」

そう言うと、魔王は空にふわりと飛び上がった。

「ぴえぇぇぇぇぇ!! (高い!!)」

そう思ったと同時に、少女の目の前は真っ暗になり。意識が無くなった……。


これが、魔王と一人の少女との出会いだった。

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