王子は公爵令嬢を溺愛中

saku

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次の日、レイラは早く起きてしまったので早めに学園に行くことにした。学園に行くと、やはり誰も来ていなかった。
レイラは教室の自分の席に座り、外の景色を眺める。
窓から入ってくる風が、レイラの頬を撫でる。
外の景色を眺めながら、今日の朝あった事を思い出す。

レイラは、あの夜の事は公爵家の者達には伝えなかった。
自分の命が狙われたのだから、伝えなければいけない事は分かっている。でも、レイラはクロウと一回会っただけでクロウの事を気に入ってしまったのだ。
レイラが貴族と分かっていながらあの態度。それに、自分の力量を把握しているということ。
何よりも、クロウはあんな事を言っていたがレイラの攻撃を防御していた。

(クロウは、強いから私の護衛になって欲しいぐらいだわ)

何よりも、物語の中ではクロウの事についてあまり書かれていなかったので、レイラはクロウについて気になっていたのだ。

「お嬢様? どうしたんですか? ボーッとして」

レイラがそんな事を考えていると、レイラの髪をセットしていたヴィオラが心配そうに横から覗き込んでいた。

(ヴィオラには、相談してみても良いかしら……。)

「ねぇ、ヴィオラ。気になる人が居るんだけれど、どうしたらいいと思う?」

「えっ! 浮気ですか!? やめて下さいよ!? あの魔王からとばっちりを食らうのは、私なんですから!!」

(……魔王? 時々、ヴィオラやお父様達の話に出てくるけれど……誰の事を言っているのかしら??  もしかして……。いえ、気のせいよね?)

「魔王って?」

「殿下ですよ。」

(やっぱり!! ユーリ様の事なのね!!)

「ユーリ様が魔王な訳ない!」と、レイラは直ぐ様ヴィオラに言い返した。
レイラにとっては、ユーリは優しく。笑顔がキラキラとしていて、文武両道で素敵な王子様だと思っている。
レイラからは、ユーリの良いところがどんどんと出てくるぐらい、ユーリはレイラとヴィオラに接している態度が違うのだ。

「……殿下の本当の姿は、お嬢様が思っているのと違いますよ?」

「な~に? それ。ヴィオラは、ユーリ様の本当の姿を知っているっていうの? ……狡いわ!」

「なんでそうなるんだ……。はぁ~、それで? 気になる人って……浮気ですか?」

呆れた様な表情で、ヴィオラは頭を抱える。

「だから違うわ! 一度だけ会って喋ったことある人なんだけどね?  黒髪で糸目な人なんだけど……。なんか気になるな~って思って。」

「それは貴族ですか?」

「いえ。平民の方よ?」

そう言うと、ヴィオラは顎に手を当て。悩んでいる様な表情をしている。
レイラが街に行くときは、ヴィオラと一緒。でも、街で黒髪で糸目な人と会ったことが無いことに、ヴィオラは疑問を覚えていた。

「その男をどうしたいんですか?」

「私の事を貴族だと知っていたのに、普通に私と接してくれたから、それが嬉しくって! 仲良くなれないかな~って思って。後ね、その人強いのよ!」

「……確かに。お嬢様は、普通の方達より強いですからね。強いのは良いですね。お嬢様らしくしてもらう為にも護衛に欲しい。」

(……ヴィオラ? 凄く頷きながら貴方言っているけれど、失礼な事を言っている自覚あるかしら?)

「その人と仲良くなりたいんだったら、ユーリ様か旦那様に相談してみてはいかがですか?」

ユーリやカーチスに相談したら、暗殺されそうになった事も言わないといけない。レイラは、自分の命を狙われた人を雇いたいと言ったら絶対に反対されてしまうと思った。

「言えないからヴィオラに言っているんじゃない。ん~。何かいい方法は無いかしら?」

(依頼主の人に失敗したと報告すると言っていたから、クロウがまた私の所に来るとは限らないし……。居るとしたら酒場? そうよ! 酒場に行ったら、会えるんじゃないかしら!! 物語の中でも、クロウは酒場に居るって書いてあったし!!)

レイラは、勢い良く座っていた椅子から立ち上がる。

「そうと決まれば、行くしかないわね!!」

「(嫌な予感がする)……何処にですか?」

「酒場よ!」

「はぁ~!?  いやいや、お嬢様が酒場になんて行ったら駄目でしょ!! 何しに行くんですか!」

ヴィオラが必死な顔で止めてくる。

(やっぱり駄目か……。)

「う~ん。どうしましょ」

「はぁ~……では、私が探して来ます。黒髪に糸目な男なんて、珍しいですからすぐ分かると思いますよ。」

確かに、黒髪はこの世界では珍しい。

(ヴィオラに任せた方が、ユーリ様やお父様達にバレないし、良いかもしれないわね!)

「じゃぁ、ヴィオラお願いね!」

「はい。では、私は少し失礼致します。(まぁ、殿下に伝えないとは言ってないんですがね……。)」

「……? えぇ、何処かに行くの?」

「はい。なので、行きだけは違う者をつけますので……。」

ヴィオラはそう言ってレイラに頭を下げると、何処かに行ってしまったのだ。結局、ヴィオラが言っていた様に違う使用人がレイラを送ってくれた。

朝あった事を思い出していると、続々と令嬢や令息が教室内に入ってくる。
レイラは挨拶を返しながらも、朝のヴィオラの態度が気になっていたのだった。


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