王子は公爵令嬢を溺愛中

saku

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ガーネットにレイラが、ケーキを食べさせている時だった。
レイラ達の前にユーリが座り、肘を付き。手に顎をのせながらニコニコと笑い、レイラ達を見ていた。

(な、何故かしら? ユーリ様からの視線が痛いわ。ガーネット様が、私の隣に座っていたユーリ様を押し退けて私の隣に座っているから? それとも、私がガーネット様にケーキを食べさせているから!?)

「殿下。嫉妬は見苦しいですよ?」

ガーネットがクスクスと笑いながらユーリにそう言うと、ユーリは目を細め。微笑んでいる。

(……!? 何か、寒気がするわ)

「……僕の大事な婚約者なんだよ? 嫉妬もしちゃうよね?」

ガーネットとユーリは、微笑みながら睨み合っており。バチバチと火花が散っている。

「お嬢様~! お待たせ致しました~!!」

遠くの方から、用事が終わったヴィオラが急いだ様子で此方に走ってくる。
手前までくると、ユーリ達を見て驚愕した様な表情をする。

「お嬢様……何仕出かしたんですか?」

「何で、私が何かした様な言い方なのよ!」

「いや。殿下が不機嫌になる時は、お嬢様関連ですから。愛されてますね~」

「まぁ!」

レイラはヴィオラの言葉を聞くと、頬を少し赤らめ。照れたような表情をしていた。
そのやり取りを見ていたガーネットとユーリ。
ガーネットに勝ち誇った笑みを浮かべながら、ユーリはレイラが座っている方に向かった。

「愛しのレイラ。こんな嫉妬深くても、許してくれるかい?」

「ユ、ユ、ユーリ様!? 許します! 許しますから! 近いですわ!!」

ユーリに抱き締められたレイラは、焦ったような表情でユーリから離れようとするが、ユーリから離れられない。

「もう! レイラ様を独占しないで下さいませ!!」

ガーネットは、頬を膨らませながら二人を見ていた。
レイラとユーリがいちゃいちゃしている時、他の者に先程の令嬢を監視するように言いに行ったクロウが戻ってきた。

「うおっ! これ、どんな状況~?」

「あぁ、クロウお帰り。」

「殿下、只今戻りました~。」

ユーリは、レイラを抱き締めながらクロウと喋る。レイラはユーリと距離が近い為か、ユーリの腕のなかで固まってしまっていた。

「あ、あの!!」

クロウとユーリのやり取りを見ていたガーネットが、いきなり大きな声を上げる。
二人がガーネットの方を向くと、ガーネットは何故か顔を赤らめ恥ずかしそうにしていた。
いきなりどうしたのかと、ユーリは首を傾げる。
ガーネットは意を決したのか、クロウを真っ直ぐと見つめ。口を開く。

「あの、お名前を教えて下さいませんか?」

「申し遅れました。俺は、クロウと申します。今は、殿下の命令で婚約者であるレイラ・フォーカス様の護衛をしております。」

「……クロウ。そんなに丁寧に喋れたんだね?」

「殿下ひどいぞ~? 俺だって、やれば出来るんだから~。」

「いや。普通、その喋り方は僕に言わないといけないからね?」

「でも、殿下だったら許してくれるだろ~?」

「ハァー」

クロウはガーネットに喋っていた喋り方と一点変わって、いつもの喋り方に戻った。ユーリはクロウの言葉を聞き、深くため息をしながらレイラの首元に顔を埋めてしまった。
クロウはそんなユーリを見ながら、クスクスと笑い。ガーネットの方に向き直る。

「改めて、お嬢様のお名前を聞いても宜しいですか?」

「ガ、ガーネット・マーフィーと申します。」

「マーフィー様ですね」

「あ、あの! クロウ様、ガーネットとお呼びくださいませんか?」

「俺の事は呼び捨てで良いですよ?  ですが、私は平民なので……」

「いえ! 気にしませんわ! ガーネットと、お呼びください!!」

「……分かりました。ガーネット様」

「はい! クロウ様!!」

(何故だろうか……。ヒロインであるガーネット様が、クロウに対してキラキラとした目で見てる?)

ガーネットは、クロウに名前で呼んでもらった事が嬉しいのかニコニコとした表情をしていた。
そんなガーネットを見ながら、クロウも目を細めて笑っていた。

「……ガーネット嬢も、変な男を好きになってしまったね」

「えっ!?」

ユーリがレイラの首元に顔を埋めながら、小さな声でポツリとそんな事を言ったのを聞き、ついレイラはびっくりしてしまった。

(ガーネット様が、クロウの事が好き!? でも、今日初めて会ったのよ!?)

「そんな……物語と違いすぎるわ」

「……物語?」

ガーネットがクロウに気があるかもしれないと知り、レイラは動揺してしまい。つい、声に出してしまった。
内緒にしていたのに、近くに居たユーリに聞かれてしまった。
ユーリがレイラの首元から顔を上げると、少し距離をあける。真っ直ぐとレイラを見つめているユーリの瞳には、口に手を当てながら目を見開いているレイラが写っていた。

「……レイラ。話してくれるよね?」

「あ、あの、ユーリ様……。」

「今回は、きちんと説明してもらうよ?」

ユーリは、拒否を許さない様な言い方だ。

(やってしまったわ……。つい、声に出していたわ。どうしよう……ユーリ様に知られてしまった。誰にも言わない様にしていたのに……。)

「……ちょっと、レイラと二人で話をしてくるよ」

ユーリはそう言うと、レイラの肩を抱き。立ち上がった。ガーネット達の視線が刺さる。

「はい。畏まりました。」

「ユ、ユーリ様、待って下さい」

ヴィオラとユーリの従者が頭を下げ、二人を見送る。
レイラは慌ててユーリを止めるが、ユーリは「逃がさないよ?」と小さく囁くとレイラの肩を抱きながら歩き出してしまったのだった。


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