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1~10話

3d、私は新しい家をわかっていない

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 ガルは強張る私の身体をゆるく腕に囲ったまま、話を続けた。

「先ほども告げたが、俺の事はガルと呼ぶように。君には名前があるか? 俺が名付けるのだろうか?」

 腿の上に座っても尚少し上にある目線が、近い。顔が近い。

「名前くらいあります! 紺野……いえ、真矢です。真矢と言います」

「マヤ。マヤか。悪くない」

 近い近い近い! 私のおでこを鼻先でくすぐるのは止めて!

「マヤ、体調はどうだ? 顔色が良くない。医者に見せるか? 風呂は? 腹は空いていないか?」

 あまりの近さに目を伏せると、ガルの息が睫毛を揺らした。
 無口な人ではなかったのだろうか。
 しかしこんなに近くで触れ合っているというのに、不思議と性的な雰囲気は一切感じない。

「体調は、あまり良くない、です。お医者さんは要りません。……たぶん、食事をして睡眠をとれば、回復すると思います。その、お風呂も入りたい、です、が、今はお腹が空きました」

 こんなに要求して大丈夫だろうか?
 ガルは怒り出さないだろうか?
 契約違反で首輪は発熱しないだろうか?
 首輪とガルの様子を気にしつつ、つっかえながらもおずおずと要求を伝える。

「そうか、ではまず食べ物だな。愛玩奴隷というのは何を食べるんだ?」

 ガルの声色に気分を害した様子はない。
 額を付き合わせ瞳を覗き込むようにされ、視線をさ迷わせる。

「普通に……パンやスープなどを食べます」

「食べ物は我々と変わらないのか」

 人を何だと思っているのだろう? いや、愛玩奴隷だと思われているのは理解しているが。
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