ご主人様は愛玩奴隷をわかっていない ～皆から恐れられてるご主人様が私にだけ甘すぎます！～

２１～３０話

２７d、私は新しい契約をわかっていない

「！」

ガルが驚きに固まっている間に、そそくさと上体を戻しガルの胸に顔を埋める。

「……マヤ？」

私はいません。留守です。

「マヤ、顔を見せて？」

無理です。私はいません。
ガルの厚い胸にしがみつき、ぐりぐりと顔を押し付ける。

「ほら、そんな抵抗をしても可愛いだけだぞ」

ガルは胸にくっつく私の両脇に手を差し入れると、顔がよく見えるよう、胸元からひょいと引っ張り上げた。

「うぅ……」

熟れた林檎よりも真っ赤に茹だった顔がガルの眼前にさらされる。

恥ずかしさに潤む目でちらりとガルを窺う。

「……勝手に……して、ごめんなさい……」

好きで好きで居ても立ってもいられず、どうしても触れたくなってしまったのだ。

「っ……マヤは俺を試しているのか」

「え？」

何と言ったのか聞き返そうとする私の後頭部を押さえるようにして、ガルはまたぎゅうと私を抱きしめた。

「っはぁー……」

ガルが深く息を吐くのを、髪をくすぐる息と触れ合った胸の動きから感じる。

ガルの腕の中はなんでこんなに安心するのだろう。
目を閉じて耳を澄ませれば、触れた胸からは力強い鼓動が聞こえてくる。

ああ、大好きだなぁ。
誰よりも近くにいられて嬉しいなぁ。
この場所を、誰にも渡したくないなぁ……。


触れた場所から全身へ沁み渡っていくような幸福を噛みしめ、二人静かに抱き合っていた。