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21~30話
28a、番外編 ご主人様の追憶
強い父を尊敬していた。
人にも己にも厳しく、決して弱音を許さない人だった。
そんな父が何よりも大切にしていたのが、妻である俺の母だった。
母は儚なげに楚々と咲く一輪の花のような人で、いつの日か遠巻きに見た静かな笑顔だけが痛烈に網膜に焼き付いていた。
俺にも笑いかけてほしいと、幼き日々はどれほど渇望したことか。
か弱く脆い母は、生まれ出た俺の赤い瞳を見て産後のベッドの上で意識を失った。
その瞬間から俺の世話は全て乳母に一任され、歩けるようになった後もずっと、母に近づくことを禁じられ続けた。
その昔実在したという歴史上の存在。
人々の堕落と死を司るとされる『悪魔』は、その魔力の高さ故炎を吹き出しそうなほど鮮烈な赤い瞳をしていたという。
ウォールナットの瞳を持つ父と、ヘーゼルの母。
なぜ俺だけが真っ赤な瞳に生まれたのかはわからない。
母の不義の子だと、悪魔の生まれ変わりだと。
血の繋がったはずの親戚は幼い俺の面前で、口を揃えて「恐ろしい目でこちらを見るな」と言った。
望んで赤い瞳に生まれたわけではない。
魔力なんて、これっぽっちも持たなくてよかった。
ただ目を合わせて、正面から母の笑顔を向けられたかった。
人にも己にも厳しく、決して弱音を許さない人だった。
そんな父が何よりも大切にしていたのが、妻である俺の母だった。
母は儚なげに楚々と咲く一輪の花のような人で、いつの日か遠巻きに見た静かな笑顔だけが痛烈に網膜に焼き付いていた。
俺にも笑いかけてほしいと、幼き日々はどれほど渇望したことか。
か弱く脆い母は、生まれ出た俺の赤い瞳を見て産後のベッドの上で意識を失った。
その瞬間から俺の世話は全て乳母に一任され、歩けるようになった後もずっと、母に近づくことを禁じられ続けた。
その昔実在したという歴史上の存在。
人々の堕落と死を司るとされる『悪魔』は、その魔力の高さ故炎を吹き出しそうなほど鮮烈な赤い瞳をしていたという。
ウォールナットの瞳を持つ父と、ヘーゼルの母。
なぜ俺だけが真っ赤な瞳に生まれたのかはわからない。
母の不義の子だと、悪魔の生まれ変わりだと。
血の繋がったはずの親戚は幼い俺の面前で、口を揃えて「恐ろしい目でこちらを見るな」と言った。
望んで赤い瞳に生まれたわけではない。
魔力なんて、これっぽっちも持たなくてよかった。
ただ目を合わせて、正面から母の笑顔を向けられたかった。
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