390 / 486
91~100話
92c、ご主人様は深夜の人影をわかっていない
しおりを挟む
………………
宵闇に硬質な蹄の音を響かせて、誰もいない街道を淀みなく馬車は進む。
冷たい夜風が静寂への闖入者を拒むようにきつく吹き付ける。
このまま夜通し奴らに付き合うつもりもなければ、みすみす逃してやるつもりもない。
馬車が住宅のひしめく市街地を抜けると、俺は速やかに行動に移った。
ボッ
馬の前足が着地する先へ、小さな火弾を飛ばす。
「ヒヒィーンッ」
「うわっ、急になんだ!?」
炎に驚いた馬が二の足を踏んで立ち止まると、鞭を入れようと腕を振り上げた御者の喉元に剣先を突き付けた。
「全員、馬車を降りてもらおう」
幌の中へ向けて令する。
「ひっ! 敵しゅ———」
痩せぎすな男の胸倉を掴んで御者台から引きずり下ろし、躊躇なく顎に拳を見舞った。
気絶させ無力化したそれを馬車の脇に放れば、幌の中から大柄な男が二人、抜き身の剣を手に姿を現した。
「おいおい、お前ぇも襲う馬車は選んだ方がいいぜ」
下卑た笑いを浮かべながら一人が言えば、もう一人も笑いながら同意する。
よほど自分達の腕に自信があるのだろう。
足元に転がる御者を邪魔そうに蹴り避ける姿は、用心棒というよりさながら破落戸といった様相だ。
宵闇に硬質な蹄の音を響かせて、誰もいない街道を淀みなく馬車は進む。
冷たい夜風が静寂への闖入者を拒むようにきつく吹き付ける。
このまま夜通し奴らに付き合うつもりもなければ、みすみす逃してやるつもりもない。
馬車が住宅のひしめく市街地を抜けると、俺は速やかに行動に移った。
ボッ
馬の前足が着地する先へ、小さな火弾を飛ばす。
「ヒヒィーンッ」
「うわっ、急になんだ!?」
炎に驚いた馬が二の足を踏んで立ち止まると、鞭を入れようと腕を振り上げた御者の喉元に剣先を突き付けた。
「全員、馬車を降りてもらおう」
幌の中へ向けて令する。
「ひっ! 敵しゅ———」
痩せぎすな男の胸倉を掴んで御者台から引きずり下ろし、躊躇なく顎に拳を見舞った。
気絶させ無力化したそれを馬車の脇に放れば、幌の中から大柄な男が二人、抜き身の剣を手に姿を現した。
「おいおい、お前ぇも襲う馬車は選んだ方がいいぜ」
下卑た笑いを浮かべながら一人が言えば、もう一人も笑いながら同意する。
よほど自分達の腕に自信があるのだろう。
足元に転がる御者を邪魔そうに蹴り避ける姿は、用心棒というよりさながら破落戸といった様相だ。
2
あなたにおすすめの小説
【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)
かのん
恋愛
気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。
わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・
これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。
あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ!
本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。
完結しておりますので、安心してお読みください。
借金まみれで高級娼館で働くことになった子爵令嬢、密かに好きだった幼馴染に買われる
しおの
恋愛
乙女ゲームの世界に転生した主人公。しかしゲームにはほぼ登場しないモブだった。
いつの間にか父がこさえた借金を返すため、高級娼館で働くことに……
しかしそこに現れたのは幼馴染で……?
泡風呂を楽しんでいただけなのに、空中から落ちてきた異世界騎士が「離れられないし目も瞑りたくない」とガン見してきた時の私の対応。
待鳥園子
恋愛
半年に一度仕事を頑張ったご褒美に一人で高級ラグジョアリーホテルの泡風呂を楽しんでたら、いきなり異世界騎士が落ちてきてあれこれ言い訳しつつ泡に隠れた体をジロジロ見てくる話。
婚約解消されたら隣にいた男に攫われて、強請るまで抱かれたんですけど?〜暴君の暴君が暴君過ぎた話〜
紬あおい
恋愛
婚約解消された瞬間「俺が貰う」と連れ去られ、もっとしてと強請るまで抱き潰されたお話。
連れ去った強引な男は、実は一途で高貴な人だった。
魔性の大公の甘く淫らな執愛の檻に囚われて
アマイ
恋愛
優れた癒しの力を持つ家系に生まれながら、伯爵家当主であるクロエにはその力が発現しなかった。しかし血筋を絶やしたくない皇帝の意向により、クロエは早急に後継を作らねばならなくなった。相手を求め渋々参加した夜会で、クロエは謎めいた美貌の男・ルアと出会う。
二人は契約を交わし、割り切った体の関係を結ぶのだが――
極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です
朝陽七彩
恋愛
私は。
「夕鶴、こっちにおいで」
現役の高校生だけど。
「ずっと夕鶴とこうしていたい」
担任の先生と。
「夕鶴を誰にも渡したくない」
付き合っています。
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
神城夕鶴(かみしろ ゆづる)
軽音楽部の絶対的エース
飛鷹隼理(ひだか しゅんり)
アイドル的存在の超イケメン先生
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
彼の名前は飛鷹隼理くん。
隼理くんは。
「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」
そう言って……。
「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」
そして隼理くんは……。
……‼
しゅっ……隼理くん……っ。
そんなことをされたら……。
隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。
……だけど……。
え……。
誰……?
誰なの……?
その人はいったい誰なの、隼理くん。
ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。
その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。
でも。
でも訊けない。
隼理くんに直接訊くことなんて。
私にはできない。
私は。
私は、これから先、一体どうすればいいの……?
巨乳令嬢は男装して騎士団に入隊するけど、何故か騎士団長に目をつけられた
狭山雪菜
恋愛
ラクマ王国は昔から貴族以上の18歳から20歳までの子息に騎士団に短期入団する事を義務付けている
いつしか時の流れが次第に短期入団を終わらせれば、成人とみなされる事に変わっていった
そんなことで、我がサハラ男爵家も例外ではなく長男のマルキ・サハラも騎士団に入団する日が近づきみんな浮き立っていた
しかし、入団前日になり置き手紙ひとつ残し姿を消した長男に男爵家当主は苦悩の末、苦肉の策を家族に伝え他言無用で使用人にも箝口令を敷いた
当日入団したのは、男装した年子の妹、ハルキ・サハラだった
この作品は「小説家になろう」にも掲載しております。
【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される
奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。
けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。
そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。
2人の出会いを描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630
2人の誓約の儀を描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」
https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる