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41~50話
いつもの夜の【下】
「ここ……」
「客間の用意がなくてすまない。このベッドを使ってくれ。……シーツは清潔だから安心してほしい」
ヨルグに下ろしてもらい、狭い室内をぐるりと見渡す。
毎晩通りの向こうから『見て』いた寝室に――今、立っているのだ。
長身のヨルグが寝てもはみ出さないほど大きなベッドが部屋のほとんどを埋めつくし、窓辺とのあいだに置かれた小振りなサイドチェストには、ヨルグの『大事なもの』が入っているのを知っている。
ずっと見てきた。
見ているだけだった。
だってヨルグと想い通じ合うなんて、そんな夢みたいなこと、平凡な私には起こるはずがないと思っていたから……。
急激に実感が込み上げる。
ヨルグと両想いになった。ヨルグの『特別』にしてもらえたのだ。
こうして、『大事なもの』を置いている部屋に入れてもらえるくらいに。
引っ越してきた日からヨルグ以外、まだ誰も足を踏み入れたことのないこの部屋に――。
熱に浮かされたように、ふらりと窓辺に近づく。
「私の部屋が見える……」
暗い窓の外に見えるのは、見慣れた花柄のカーテン。昨日までの片想いしていた自分を眺めているような、ふしぎな気持ちになる。
自分は今、届くことがないと思っていた通りの向こう側にいるのだ。
「ち、誓ってリズの部屋を覗いたりはしていないからな!?」
隣にやってきたヨルグが焦った様子で弁明する。
ヨルグが私の部屋を覗いていないことは知っている。むしろ、ちょっとくらい覗こうとしてくれていれば好意に気付けたかもしれないのに。
しかも私からはヨルグの家を覗いていたと打ち明け済みなのだ。実際に覗いていたとしたって、ヨルグが慌てる必要はない。
「ふふっ、疑ってませんよ」
「それならいいが……。……では、俺はもう行く。ゆっくり休んでくれ」
「えっ」
私の頭をひと撫でし、くるりと背を向けて立ち去ろうとするヨルグの服の裾をきゅっと掴む。
「リズ?」
「あのっ! お、お風呂の前に、その……いつもの、しなくていいんですか……?」
「客間の用意がなくてすまない。このベッドを使ってくれ。……シーツは清潔だから安心してほしい」
ヨルグに下ろしてもらい、狭い室内をぐるりと見渡す。
毎晩通りの向こうから『見て』いた寝室に――今、立っているのだ。
長身のヨルグが寝てもはみ出さないほど大きなベッドが部屋のほとんどを埋めつくし、窓辺とのあいだに置かれた小振りなサイドチェストには、ヨルグの『大事なもの』が入っているのを知っている。
ずっと見てきた。
見ているだけだった。
だってヨルグと想い通じ合うなんて、そんな夢みたいなこと、平凡な私には起こるはずがないと思っていたから……。
急激に実感が込み上げる。
ヨルグと両想いになった。ヨルグの『特別』にしてもらえたのだ。
こうして、『大事なもの』を置いている部屋に入れてもらえるくらいに。
引っ越してきた日からヨルグ以外、まだ誰も足を踏み入れたことのないこの部屋に――。
熱に浮かされたように、ふらりと窓辺に近づく。
「私の部屋が見える……」
暗い窓の外に見えるのは、見慣れた花柄のカーテン。昨日までの片想いしていた自分を眺めているような、ふしぎな気持ちになる。
自分は今、届くことがないと思っていた通りの向こう側にいるのだ。
「ち、誓ってリズの部屋を覗いたりはしていないからな!?」
隣にやってきたヨルグが焦った様子で弁明する。
ヨルグが私の部屋を覗いていないことは知っている。むしろ、ちょっとくらい覗こうとしてくれていれば好意に気付けたかもしれないのに。
しかも私からはヨルグの家を覗いていたと打ち明け済みなのだ。実際に覗いていたとしたって、ヨルグが慌てる必要はない。
「ふふっ、疑ってませんよ」
「それならいいが……。……では、俺はもう行く。ゆっくり休んでくれ」
「えっ」
私の頭をひと撫でし、くるりと背を向けて立ち去ろうとするヨルグの服の裾をきゅっと掴む。
「リズ?」
「あのっ! お、お風呂の前に、その……いつもの、しなくていいんですか……?」
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