不能だと噂の騎士隊長が『可能』なことを私だけが知っている(※のぞきは犯罪です)

南田 此仁@書籍発売中

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41~50話

シャツの内側は【上】 ※

 少量の白濁がシーツに落ち、ツン、と微かな青臭さが漂ってくる。
 これが精液のにおい……?

「これは違うんだ」

「えっ?」

「違うんだ……」

 左手をシーツにつき、上体を折るように項垂れたヨルグが深刻な様子で否定する。
 『精液のにおい』ではないということだろうか?

 そしてヨルグの右手は今なお、握り潰さんばかりにギリギリとを締め上げているのが見えた。

「あの、そんなに強く握ってたら痛くないですか……?」

「いや、全くもって問題ない。――ところでリズ、その…………先ほどから、見え……っ」

「みえ?」

 僅かに顔を起こしたヨルグに釣られて自分の身体を見下ろすと、膝を立てているせいでシャツの裾がめくれ、膝頭が覗いていた。
 庭でシーツ類を踏み洗いするときにもスカートの裾をまくるので、膝くらい見えたところで別に恥ずかしくもない……けれ、ど……。
 ヨルグと、その視線が注がれているらしき自分の膝下あたりとを視線で往復しながら、ある恐ろしい可能性に思い至る。

 もしかしてヨルグのいる位置からは、バッチリと見えているのではないだろうか。
 シャツの内側の、趣味を疑われるような|下《・)が――。

「!!! これは――っ!」

 ボスッと勢いよく膝を伏せ、先ほどまで見えていたであろう『光景』をかき消すように脚の前でブンブンと両手を振る。

「ごっ、誤解しないでください! これはその、たまたま買ってポシェットに入れっぱなしになってただけでっ! 綺麗な下着がこれしかなくって! 本当に、私の趣味じゃないんです……! ヨルグさんに見られても恥ずかしくないように、おしゃれな下着を買おうと思ったら……なぜかこんなことになって……」

 あのアダルトランジェリーのお店でおおよそ下着とは思えない『紐状の物体』を勧められつづけるうち、透け透けのレース地とはいえ全体にこの下着が比較的まともに思えてきてしまったのだ。
 冷静になってから見ると、これも十分とんでもない下着だった。だってすべてが透けている。

「俺に見せるために……?」

 いやいやいや、その表現は大分語弊がある。私に、際どい下着を嬉々としてヨルグに見せつけるような趣味はない。
 これは万一を想定した対策であって、断じてに用意したわけではないのだ。
 ――その『万一』が早くも訪れてしまった点についてはさておき。
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