不能だと噂の騎士隊長が『可能』なことを私だけが知っている(※のぞきは犯罪です)

南田 此仁

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71~最終話

お店のこと【中】

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「そうじゃなくって……継ぎたいのは本気だけど、その……昨日は酷いことを言ってごめんなさい!」

背中から伝う温もりに勇気を貰い、一番伝えたかった言葉を口にした。

「バカ息子のことなら、事実を突きつけられてカッとなっちまっただけだ。リゼットが謝るようなこっちゃねえ。――ったく、どいつもこいつも頑固で嫌んならぁな」

 おじいちゃんに許してもらえた。もう一生口を聞いてもらえなかったらどうしようかと思った。
 言ってしまった言葉をなかったことにはできないけれど……それでも、ちゃんと謝れてよかった。
 胸のつかえが取れた心地でほぅーと息を吐く。

「だがな、いくらリゼットにやる気があろうと店は一人じゃ回らねえぞ」

 おばあちゃんが亡くなってしばらくはおじいちゃんが一人で切り盛りしていたという話だけれど、自分にそこまでの技量がないことくらいはわかる。
 昨晩ヨルグにも聞かれて考えたことだ。

「そうなったときには、お会計を任せられる人を雇うつもりよ」

「信頼できる人間を雇うってのぁ、言うほど簡単なことじゃねえ。給金だってそう多くは――、あぁ? なんだ、デファーロット」

 おじいちゃんの視線に釣られて隣を見れば、これまで黙って見守ってくれていたヨルグが、発言の許しを乞うように小さく挙手していた。

「会計係であれば俺が力になれるかと……。実家にいたころ、領地運営を学ぶ一環として経営学にも触れています。残念ながら優秀な成績だったとは言いがたいですが……」

「?? ヨルグさんは騎士のお仕事があるでしょう? ずっとお休みして手伝ってもらうわけにはいきませんよ」

 非番の日に手伝ってくれるのなら嬉しいけれど、会計係には毎日いてもらわないと困ってしまう。
 おじいちゃんだって無理と言うだろう、とおじいちゃんをうかがうと、「そうきやがったか……」と唸りながら片手で目元を覆っていた。
 どうも、私の知らない何かを知っていそうな気配だ。

「リズ。まだ先のことになるからと伝えていなかったが、結婚を機に城にはを願い出てある。引き止められているせいで少々時間がかかりそうだが、リズが店を継ぐ頃までには十分間に合うだろう」

「え……なんで…………」

 驚きのあまり言葉が出ない。

 ヨルグが騎士じゃなくなる? 十一年前も、今も、騎士のヨルグしか知らないのに。ヨルグは騎士で、それは当然で、ずっと変わらないものだと思っていた。
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