195 / 213
71~最終話
お店のこと【中】
しおりを挟む
「そうじゃなくって……継ぎたいのは本気だけど、その……昨日は酷いことを言ってごめんなさい!」
背中から伝う温もりに勇気を貰い、一番伝えたかった言葉を口にした。
「バカ息子のことなら、事実を突きつけられてカッとなっちまっただけだ。リゼットが謝るようなこっちゃねえ。――ったく、どいつもこいつも頑固で嫌んならぁな」
おじいちゃんに許してもらえた。もう一生口を聞いてもらえなかったらどうしようかと思った。
言ってしまった言葉をなかったことにはできないけれど……それでも、ちゃんと謝れてよかった。
胸のつかえが取れた心地でほぅーと息を吐く。
「だがな、いくらリゼットにやる気があろうと店は一人じゃ回らねえぞ」
おばあちゃんが亡くなってしばらくはおじいちゃんが一人で切り盛りしていたという話だけれど、自分にそこまでの技量がないことくらいはわかる。
昨晩ヨルグにも聞かれて考えたことだ。
「そうなったときには、お会計を任せられる人を雇うつもりよ」
「信頼できる人間を雇うってのぁ、言うほど簡単なことじゃねえ。給金だってそう多くは――、あぁ? なんだ、デファーロット」
おじいちゃんの視線に釣られて隣を見れば、これまで黙って見守ってくれていたヨルグが、発言の許しを乞うように小さく挙手していた。
「会計係であれば俺が力になれるかと……。実家にいたころ、領地運営を学ぶ一環として経営学にも触れています。残念ながら優秀な成績だったとは言いがたいですが……」
「?? ヨルグさんは騎士のお仕事があるでしょう? ずっとお休みして手伝ってもらうわけにはいきませんよ」
非番の日に手伝ってくれるのなら嬉しいけれど、会計係には毎日いてもらわないと困ってしまう。
おじいちゃんだって無理と言うだろう、とおじいちゃんをうかがうと、「そうきやがったか……」と唸りながら片手で目元を覆っていた。
どうも、私の知らない何かを知っていそうな気配だ。
「リズ。まだ先のことになるからと伝えていなかったが、結婚を機に城には辞職を願い出てある。引き止められているせいで少々時間がかかりそうだが、リズが店を継ぐ頃までには十分間に合うだろう」
「え……なんで…………」
驚きのあまり言葉が出ない。
ヨルグが騎士じゃなくなる? 十一年前も、今も、騎士のヨルグしか知らないのに。ヨルグは騎士で、それは当然で、ずっと変わらないものだと思っていた。
背中から伝う温もりに勇気を貰い、一番伝えたかった言葉を口にした。
「バカ息子のことなら、事実を突きつけられてカッとなっちまっただけだ。リゼットが謝るようなこっちゃねえ。――ったく、どいつもこいつも頑固で嫌んならぁな」
おじいちゃんに許してもらえた。もう一生口を聞いてもらえなかったらどうしようかと思った。
言ってしまった言葉をなかったことにはできないけれど……それでも、ちゃんと謝れてよかった。
胸のつかえが取れた心地でほぅーと息を吐く。
「だがな、いくらリゼットにやる気があろうと店は一人じゃ回らねえぞ」
おばあちゃんが亡くなってしばらくはおじいちゃんが一人で切り盛りしていたという話だけれど、自分にそこまでの技量がないことくらいはわかる。
昨晩ヨルグにも聞かれて考えたことだ。
「そうなったときには、お会計を任せられる人を雇うつもりよ」
「信頼できる人間を雇うってのぁ、言うほど簡単なことじゃねえ。給金だってそう多くは――、あぁ? なんだ、デファーロット」
おじいちゃんの視線に釣られて隣を見れば、これまで黙って見守ってくれていたヨルグが、発言の許しを乞うように小さく挙手していた。
「会計係であれば俺が力になれるかと……。実家にいたころ、領地運営を学ぶ一環として経営学にも触れています。残念ながら優秀な成績だったとは言いがたいですが……」
「?? ヨルグさんは騎士のお仕事があるでしょう? ずっとお休みして手伝ってもらうわけにはいきませんよ」
非番の日に手伝ってくれるのなら嬉しいけれど、会計係には毎日いてもらわないと困ってしまう。
おじいちゃんだって無理と言うだろう、とおじいちゃんをうかがうと、「そうきやがったか……」と唸りながら片手で目元を覆っていた。
どうも、私の知らない何かを知っていそうな気配だ。
「リズ。まだ先のことになるからと伝えていなかったが、結婚を機に城には辞職を願い出てある。引き止められているせいで少々時間がかかりそうだが、リズが店を継ぐ頃までには十分間に合うだろう」
「え……なんで…………」
驚きのあまり言葉が出ない。
ヨルグが騎士じゃなくなる? 十一年前も、今も、騎士のヨルグしか知らないのに。ヨルグは騎士で、それは当然で、ずっと変わらないものだと思っていた。
98
あなたにおすすめの小説
【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される
奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。
けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。
そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。
2人の出会いを描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630
2人の誓約の儀を描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」
https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)
かのん
恋愛
気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。
わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・
これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。
あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ!
本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。
完結しておりますので、安心してお読みください。
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
愛しい人、あなたは王女様と幸せになってください
無憂
恋愛
クロエの婚約者は銀の髪の美貌の騎士リュシアン。彼はレティシア王女とは幼馴染で、今は護衛騎士だ。二人は愛し合い、クロエは二人を引き裂くお邪魔虫だと噂されている。王女のそばを離れないリュシアンとは、ここ数年、ろくな会話もない。愛されない日々に疲れたクロエは、婚約を破棄することを決意し、リュシアンに通告したのだが――
転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました
桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。
言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。
しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。
──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。
その一行が、彼の目に留まった。
「この文字を書いたのは、あなたですか?」
美しく、完璧で、どこか現実離れした男。
日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。
最初はただの好奇心だと思っていた。
けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。
彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。
毎日19時に更新予定です。
【完結・おまけ追加】期間限定の妻は夫にとろっとろに蕩けさせられて大変困惑しております
紬あおい
恋愛
病弱な妹リリスの代わりに嫁いだミルゼは、夫のラディアスと期間限定の夫婦となる。
二年後にはリリスと交代しなければならない。
そんなミルゼを閨で蕩かすラディアス。
普段も優しい良き夫に困惑を隠せないミルゼだった…
勘違い妻は騎士隊長に愛される。
更紗
恋愛
政略結婚後、退屈な毎日を送っていたレオノーラの前に現れた、旦那様の元カノ。
ああ なるほど、身分違いの恋で引き裂かれたから別れてくれと。よっしゃそんなら離婚して人生軌道修正いたしましょう!とばかりに勢い込んで旦那様に離縁を勧めてみたところ――
あれ?何か怒ってる?
私が一体何をした…っ!?なお話。
有り難い事に書籍化の運びとなりました。これもひとえに読んで下さった方々のお蔭です。本当に有難うございます。
※本編完結後、脇役キャラの外伝を連載しています。本編自体は終わっているので、その都度完結表示になっております。ご了承下さい。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる