不能だと噂の騎士隊長が『可能』なことを私だけが知っている(※のぞきは犯罪です)

南田 此仁@書籍発売中

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71~最終話

十数年ぶりの会話【下】

 複雑そうな顔で俯いたヨルグを、肩越しにそっとうかがう。

 少しでも安堵はあるだろうか、今さら何をという猜疑心のほうが強いだろうか。わだかまっていた過去を解消したい思いと、親の行動が正解だったとは認めたくない気持ち。
 ヨルグは心配する私の視線に気づくと、ふっと微笑んでから顔を上げた。

「騎士は、近く辞するつもりです。あなたの決めた道を歩くのは終わりにします」

「……おまえは貴族としての役割を果たすより、そうして庶民に手なずけられて、庶民の腹具合でも気にしているほうが性に合っているようだな」

 私とお店へのさげすみとも取れる言葉に、ヨルグの全身が強張る。

「もう、二度と――」

 決定的な言葉を告げようとするヨルグを止めたくて、咄嗟にぎゅっとしがみつく。その瞬間、場違いなほど明るい声が、張り詰めた空気を壊して入った。


「おや、デファーロット子爵じゃないか。こんな所で会うとは奇遇だな。息災か?」

「貴様、何を――っ」

 馴れ馴れしく肩を叩かれたヨルグのお父さんが苛立ちもあらわに振り返ると、フードの男は目深に被ったフードをペラリと上げて見せた。
 背の高いヨルグのお父さんで死角になって、私からはよく見えない。ただ声と背格好から察するに、先日お店に来たフードの男と同一人物であるようだ。

「あ、あなた様は……! なぜ斯様かような場所にいらっしゃるのです?」

の結婚パーティーとあらば、プレゼントの一つも持参しなくてはと思ってね」

 怒るかと思ったヨルグのお父さんが、途端に恭しく接しだす。フードの男も当然のようにそれを受け止め、自身は気さくな振る舞いのままだ。
 噂に聞く、貴族の『家格』の上下というものだろうか。

、ですか……?」

 答えを探るように、ヨルグに向けられる視線。
 ヨルグはみんなを助けてくれる頼もしい騎士だ。恩の百や二百、感じられていてもなんら不思議はない。
 自慢の夫を誇って胸を張る私へと、フードの男が顔を向ける。

「ああ。にはその昔、窮地を救われたことがあるんだ」

「……………………えっ、私!?」

 驚いて目を見開くと、同じように目を見開いたヨルグのお父さんとようやく目が合った。
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