不能だと噂の騎士隊長が『可能』なことを私だけが知っている(※のぞきは犯罪です)

南田 此仁@書籍発売中

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71~最終話

【終】噂の真偽【上】

「リズ……、父が酷いことを言ってすまなかった」

「ふふっ、実は庶民って『庶民だ』って言われても気にならないんですよ。だから大丈夫です! おじいちゃんのパンを悪く言われたら怒ってましたけどね!」

「俺は果報者だ」

 グッと肩を抱き寄せられ、ヨルグの熱い眼差しを頭頂部に感じながらお店へと戻る。
 先ほど奥さんたちに『セットが乱れる』と注意されたからか、抱きしめたいのを我慢してくれているようだ。



 ヨルグのお父さんとの対面で気が張っていたこともあり、ふぅ、と一仕事終えたような気持ちでお店のドアをくぐった。
 ――瞬間、目の前に降り注ぐ鮮やかな色の欠片。

「「「リゼットちゃん、隊長さん、ご結婚おめでとうーーー!」」」

「!!」

 おでこや鼻先をやわらかく撫で落ちていく色の正体は、高く放られた色とりどりの花びらだ。

「本当におめでとう! 二人ともお似合いだわ!」
「いつの間にかリゼットちゃんもこんなに大きくなって。娘を嫁にやる気分だよ」
「隊長さんはさすが人を見る目があるよなぁ!」

 口々に贈られるお祝いの言葉。
 やりかけで出てきてしまったテーブルセッティングもすっかり整えられて、あとはパーティーの開始を待つばかりとなっている。

「さあさ、主役はこっちこっち!」
「準備はバッチリ終わらせておいたわよ!」
「隊長さんが置いてった料理も並べといたからね!」

 たくさんの寿ことほぎや抱擁を受けながら、ヨルグは『任せたぞ!』と肩や腕をバシバシと叩かれながら。グラスを手渡され、ドアの対面――いつもはカウンターを置いている位置へと誘導された。


 帯状の布や花で飾りつけられた壁、テーブルの上にずらりと並べられた料理や焼き菓子。店内いっぱいに充満する美味しそうな香りに、コクリと喉を鳴らす。
 一角には酒樽が置かれ、ちゃっかりとその隣に陣取ったおじさんたちはすでに熟れたリンゴのような顔をしている。
 ふとドアのほうを見れば、ずっと気配を潜めていたのだろうか、目ぼしいパンを袋に詰めた王子が乾杯のジェスチャーをしながら出ていくのが見えた。

 ヨルグも椅子の背に引っ掛けていたマントを羽織って正装になる。前髪を上げていることもあり、格好よすぎて目のやり場に困ってしまう。

「おぅーい、みんな揃ったぞ! ガファスの旦那はまだかよぉ!?」

「今出来たところだ。ったく、黙って待てねぇのか」
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