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11~20話
17b、熱に浮かされる
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鍛練が終わったのを見計らい、ワゴンを押しながらグレニスの元へ向かう。
それにしても今日は暑い。
まだ朝も早い時間だというのに、日陰にいた私でさえじっとりと汗ばんでしまった。
「お疲れ様です……っ」
「ああ」
昨日の想像のせいでつい唇に目が行きそうになり、慌てて手元の水差しへと視線を落とす。
「ど、どうぞ」
ぎこちない動作ではちみつレモン水を注いで差し出せば、グレニスの右手がゴブレットを取り上げた。
はちみつレモン水を呷るグレニスの、左腕がゆるく開いて私を待つ。
ゴクリ、ゴクリ
「———っぷは。どうした? 今日は嗅ぎに来ないのか?」
「いえ、嗅ぎます!! 嗅ぐんですけど……ちょっと、心の準備というか何というか……」
吸引タイムが失われそうなピンチに勇んでワゴンの後ろから飛び出したはいいものの、唇が気になってグレニスの顔を直視することもできず、ゴニョゴニョと言い訳しながら視線をさ迷わせる。
香りが好きなのも、抱きしめられると嬉しいのも、一緒にいたいと思うのも、すべて恋のせいだなんて聞いてしまったせいで。
グレニスに対してどんな行動をとっても、何もかも自分の好意をさらけ出しているような気がして身動きがとれない。
「なんだ、顔が赤いぞ。熱でもあるんじゃないか?」
グレニスが一歩距離を詰める。
「い、いえっ! これはあの、そういうのじゃなくってですね……!」
顔を隠すように手をかざし、一歩後ろへ下がる。
「いいから見せてみろ」
グレニスがさらに一歩前へ出たのに合わせもう一歩後ろに下がろうとして、トンッとお尻がワゴンに当たった。
それにしても今日は暑い。
まだ朝も早い時間だというのに、日陰にいた私でさえじっとりと汗ばんでしまった。
「お疲れ様です……っ」
「ああ」
昨日の想像のせいでつい唇に目が行きそうになり、慌てて手元の水差しへと視線を落とす。
「ど、どうぞ」
ぎこちない動作ではちみつレモン水を注いで差し出せば、グレニスの右手がゴブレットを取り上げた。
はちみつレモン水を呷るグレニスの、左腕がゆるく開いて私を待つ。
ゴクリ、ゴクリ
「———っぷは。どうした? 今日は嗅ぎに来ないのか?」
「いえ、嗅ぎます!! 嗅ぐんですけど……ちょっと、心の準備というか何というか……」
吸引タイムが失われそうなピンチに勇んでワゴンの後ろから飛び出したはいいものの、唇が気になってグレニスの顔を直視することもできず、ゴニョゴニョと言い訳しながら視線をさ迷わせる。
香りが好きなのも、抱きしめられると嬉しいのも、一緒にいたいと思うのも、すべて恋のせいだなんて聞いてしまったせいで。
グレニスに対してどんな行動をとっても、何もかも自分の好意をさらけ出しているような気がして身動きがとれない。
「なんだ、顔が赤いぞ。熱でもあるんじゃないか?」
グレニスが一歩距離を詰める。
「い、いえっ! これはあの、そういうのじゃなくってですね……!」
顔を隠すように手をかざし、一歩後ろへ下がる。
「いいから見せてみろ」
グレニスがさらに一歩前へ出たのに合わせもう一歩後ろに下がろうとして、トンッとお尻がワゴンに当たった。
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