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31~40話
31d、普通のことなんですよね?
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「……今日はありがとうございました。すごく、すごーく楽しかったです」
食事は美味しかったし、買ってもらったハンカチは可愛いし、グレニスが街の人たちからどんなに慕われているかもわかった。
スキンシップの多さにはドキドキして慣れなかったけれど、香りだってたくさん嗅がせてもらえたし。
「俺も有意義な一日だった。また近いうちに都合をつける。その時は一緒に出かけよう」
「はい……楽しみにしてます」
次への約束が嬉しくて、抑えようとしても頬が緩んでしまう。
馬車の中であれほどくっついていたというのに、グレニスは名残惜しむかのようにもう一度私を抱きしめた。
厚い胸に頬をすり寄せ、香りを吸い込む。
「…………おやすみなさい」
眠りにつく瞬間まで、この香りの余韻を残しておけるだろうか。
「ああ、おやすみ。また明朝に」
ゆっくりと抱擁を解き、前回と同様、グレニスに見守られながら通用口の扉を開け———
「あら! リヴ、今帰——」
バタンッ
…………
…………まずい。
咄嗟に閉めてしまった扉を前に、身動きが取れず硬直する。
「どうした? 入らないのか?」
「いっ、いえ……」
私が入るのを見届けないとグレニスも帰れないのだから、早く入ってしまわなくては。
すっと息を吸い込んで覚悟を決め。
「おやすみなさいっ!」
ガチャッ、バタンッ
素早く開けた扉の隙間に身体を滑り込ませ、グレニスを振り返りもせず後ろ手に扉を閉じた。
……さて。
「……」
実は見間違いだったのではないかとの期待を込めて、そろりそろりと瞼を持ち上げる。
「ねぇ、リヴ? 今後ろにいたのって……」
やはり見間違えなどではなかった実物のマニーが、土で汚れたシーツを抱えてそこに立っていた。
食事は美味しかったし、買ってもらったハンカチは可愛いし、グレニスが街の人たちからどんなに慕われているかもわかった。
スキンシップの多さにはドキドキして慣れなかったけれど、香りだってたくさん嗅がせてもらえたし。
「俺も有意義な一日だった。また近いうちに都合をつける。その時は一緒に出かけよう」
「はい……楽しみにしてます」
次への約束が嬉しくて、抑えようとしても頬が緩んでしまう。
馬車の中であれほどくっついていたというのに、グレニスは名残惜しむかのようにもう一度私を抱きしめた。
厚い胸に頬をすり寄せ、香りを吸い込む。
「…………おやすみなさい」
眠りにつく瞬間まで、この香りの余韻を残しておけるだろうか。
「ああ、おやすみ。また明朝に」
ゆっくりと抱擁を解き、前回と同様、グレニスに見守られながら通用口の扉を開け———
「あら! リヴ、今帰——」
バタンッ
…………
…………まずい。
咄嗟に閉めてしまった扉を前に、身動きが取れず硬直する。
「どうした? 入らないのか?」
「いっ、いえ……」
私が入るのを見届けないとグレニスも帰れないのだから、早く入ってしまわなくては。
すっと息を吸い込んで覚悟を決め。
「おやすみなさいっ!」
ガチャッ、バタンッ
素早く開けた扉の隙間に身体を滑り込ませ、グレニスを振り返りもせず後ろ手に扉を閉じた。
……さて。
「……」
実は見間違いだったのではないかとの期待を込めて、そろりそろりと瞼を持ち上げる。
「ねぇ、リヴ? 今後ろにいたのって……」
やはり見間違えなどではなかった実物のマニーが、土で汚れたシーツを抱えてそこに立っていた。
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