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51~60話
57d、パパと、ママ
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夕食は四人揃ってテーブルを囲んだ。
前侯爵様は、よく話し、よく笑う人らしい。
グレニスと私は時折振られる話に答えるだけで、ひとりでに会話が成立している。
うちの実家でお母様がしていたような『面接』めいた意図は微塵も感じられず、振られる質問も「兎肉は食べたことがあるか?」だとか「椅子の座り心地は悪くないか?」だとか「普段どんなおやつを食べてるんだ?」だとか、どれもとりとめもないものばかりだった。
物静かな夫人は話に相槌を打つ程度で、ちらりと目が合うと、また微かに眉をひそめられてしまった。
「グレン……、夫人の好きなものってなんれふか?」
グレニスの膝の上。湯上がりのグレニスに抱きついて首筋に鼻を埋めながら、石鹸混じりの香りを堪能して気疲れを癒す。
「母上の好きなもの? さあ、そういった話をしたことはないな」
「むぅ……」
好きなものをプレゼントして取り入ろう作戦は早速頓挫した。
母親にとって息子というのは特別な存在で、ぽっと出の嫁に盗られるのは気にくわないものだと聞く。
お母様だって、お兄様のお嫁さんがやって来た当初はかなり厳しく接していた。
厳しいだけならまだいい。しかし嫌われすぎて「結婚は認めません」などと言われてしまっては大変だ。
どうにか夫人に気に入ってもらえる手段を考えなくては……。
夕食は四人揃ってテーブルを囲んだ。
前侯爵様は、よく話し、よく笑う人らしい。
グレニスと私は時折振られる話に答えるだけで、ひとりでに会話が成立している。
うちの実家でお母様がしていたような『面接』めいた意図は微塵も感じられず、振られる質問も「兎肉は食べたことがあるか?」だとか「椅子の座り心地は悪くないか?」だとか「普段どんなおやつを食べてるんだ?」だとか、どれもとりとめもないものばかりだった。
物静かな夫人は話に相槌を打つ程度で、ちらりと目が合うと、また微かに眉をひそめられてしまった。
「グレン……、夫人の好きなものってなんれふか?」
グレニスの膝の上。湯上がりのグレニスに抱きついて首筋に鼻を埋めながら、石鹸混じりの香りを堪能して気疲れを癒す。
「母上の好きなもの? さあ、そういった話をしたことはないな」
「むぅ……」
好きなものをプレゼントして取り入ろう作戦は早速頓挫した。
母親にとって息子というのは特別な存在で、ぽっと出の嫁に盗られるのは気にくわないものだと聞く。
お母様だって、お兄様のお嫁さんがやって来た当初はかなり厳しく接していた。
厳しいだけならまだいい。しかし嫌われすぎて「結婚は認めません」などと言われてしまっては大変だ。
どうにか夫人に気に入ってもらえる手段を考えなくては……。
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