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61~最終話
62c、【終】兜を被ってスハスハしていたら
しおりを挟む天高く響く美しい讃美歌が止み。
神に捧げる長い長い祈りの言葉が終わり。
聖典を閉じた大司教が、一呼吸置いて口を開いた。
「新郎グレニス=ジェルム。貴殿は最高神キアソウァの御名のもと、リヴェリー=メイラーを妻とし、光差す日も、翳りのときも、ともに分かち、助けあい、決して偽ることなく、その命ある限り真の愛を捧げることを誓いますか?」
「誓います。たとえ生が尽きようとも」
よく通る低い声が、迷いなく誓いを述べる。
ちらりとグレニスを盗み見る。
兜で表情が見えないのが、ちょっぴり残念だ。
「新婦リヴェリー=メイラー。貴女は最高神キアソウァの御名のもと、グレニス=ジェルムを夫とし、光差す日も、翳りのときも、ともに分かち、助けあい、決して偽ることなく、その命ある限り真の愛を捧げることを誓いますか?」
「はい、誓います」
一音一音、はっきりと。
間違いなく神の御元に届くように。
双方の誓いを聞き、大司教が鷹揚に頷いた。
「それでは、誓いの口付けを」
……ガシャッ
グレニスはこちらへ向き直ると、片膝をついて頭を垂れた。
会場中が固唾を呑んで見守っている。
……大丈夫、落ち着いて。打ち合わせの通りに。
目の前に差し出された頭の、その兜に手をかける。
「ほう、自らの命を預けるという演出か……」
感心したような誰かの呟きが聞こえるけれど、別にそんな意図はなかった。
重い兜を取り落とさないように両手でしっかりと支え、よいっしょ! っと力を込めて取り上げた。
はらりと二筋、乱れた前髪が額にかかる。
こめかみを伝う汗。
伏せられていた群青の双眸が、すいと上がって私を捉えた。
ああ……この人と婚姻を結ぶのだ。
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