277 / 277
61~最終話
エピローグ4b、お楽しみはこれから
しおりを挟む
「あの、湯浴みは……?」
「ふっ……まだしていない。奥さんが悲しむかと思ってな」
そう言ってベッドに寝そべる私へと、覆い被さるように上体を寄せてくれる。
「ん、さすが旦那様……」
重い腕を僅かに持ち上げ、目の前にあるシャツの襟元を握りしめて引き寄せる。
しっかりと頭を抱き込まれ、心置きなく逞しい首筋へと鼻先を擦りつけた。
すんすんすんすん
ほんの一刻前まで嗅いでいた、むせ返るほど情熱的な香りとは違う。
ミントの石鹸と、顔を出したばかりのお日さまと、野性的な汗の混ざった、清々しい朝の香り。
どんなグレニスの香りも、それぞれに趣があって最高に———
「あっ!!」
「ん? どうした?」
すべてを受け入れてくれるような甘い声。
額を合わせて覗き込まれ、きらきらと瞳を輝かせて見つめ返す。
「昨日の甲冑はどこですか!?」
忘れてはならない。昨夜お風呂に入ってしまったグレニスの代わりにと、あとで嗅ごうと期待していたお楽しみ。
夏の日差しでしっかりと蒸らされた、グレニスの香りの籠もった甲冑!!
今日は一日ベッドから出られそうもないけれど、ベッドの上で甲冑を嗅いで過ごせばいいのだ。そうだ、我ながらなんと素晴らしいアイディアだろう。
「あー……もしや、嗅ぐつもりだったのか……?」
「はい、もちろんっ! 昨夜から楽しみにしてたんです!」
「———すまない」
「え?」
謝罪の意味がわからず、笑顔のままで問い返す。
「すでに手入れに出してしまった」
「え?」
脳が理解を拒否したので、やはり笑顔で問い返す。
「大事な記念の衣裳が錆びてはいけないと思い、昨日脱いですぐに……。今頃は綺麗に拭き上げられて、庭で陰干しでもされていると思うが……」
「え……………………え゛っ!!!!?」
———そうしてグレニスは、悲しみに打ちひしがれる妻へと献上するべく、婚姻休暇の初日を甲冑姿で過ごすことになるのだった。
お し ま い
■ ■ ■ ■ ■ ■
あとがき
完結までお付き合いくださりありがとうございました!ヽ(*゚Д゚*)ノ
読んでよかったと思っていただける作品になっていれば嬉しい限りです。
感想はいつも、とても心の励みになっていました。
みなさまの応援のおかげで、こうして完結まで書き切ることができました。
ご精読ありがとうございました!
「ふっ……まだしていない。奥さんが悲しむかと思ってな」
そう言ってベッドに寝そべる私へと、覆い被さるように上体を寄せてくれる。
「ん、さすが旦那様……」
重い腕を僅かに持ち上げ、目の前にあるシャツの襟元を握りしめて引き寄せる。
しっかりと頭を抱き込まれ、心置きなく逞しい首筋へと鼻先を擦りつけた。
すんすんすんすん
ほんの一刻前まで嗅いでいた、むせ返るほど情熱的な香りとは違う。
ミントの石鹸と、顔を出したばかりのお日さまと、野性的な汗の混ざった、清々しい朝の香り。
どんなグレニスの香りも、それぞれに趣があって最高に———
「あっ!!」
「ん? どうした?」
すべてを受け入れてくれるような甘い声。
額を合わせて覗き込まれ、きらきらと瞳を輝かせて見つめ返す。
「昨日の甲冑はどこですか!?」
忘れてはならない。昨夜お風呂に入ってしまったグレニスの代わりにと、あとで嗅ごうと期待していたお楽しみ。
夏の日差しでしっかりと蒸らされた、グレニスの香りの籠もった甲冑!!
今日は一日ベッドから出られそうもないけれど、ベッドの上で甲冑を嗅いで過ごせばいいのだ。そうだ、我ながらなんと素晴らしいアイディアだろう。
「あー……もしや、嗅ぐつもりだったのか……?」
「はい、もちろんっ! 昨夜から楽しみにしてたんです!」
「———すまない」
「え?」
謝罪の意味がわからず、笑顔のままで問い返す。
「すでに手入れに出してしまった」
「え?」
脳が理解を拒否したので、やはり笑顔で問い返す。
「大事な記念の衣裳が錆びてはいけないと思い、昨日脱いですぐに……。今頃は綺麗に拭き上げられて、庭で陰干しでもされていると思うが……」
「え……………………え゛っ!!!!?」
———そうしてグレニスは、悲しみに打ちひしがれる妻へと献上するべく、婚姻休暇の初日を甲冑姿で過ごすことになるのだった。
お し ま い
■ ■ ■ ■ ■ ■
あとがき
完結までお付き合いくださりありがとうございました!ヽ(*゚Д゚*)ノ
読んでよかったと思っていただける作品になっていれば嬉しい限りです。
感想はいつも、とても心の励みになっていました。
みなさまの応援のおかげで、こうして完結まで書き切ることができました。
ご精読ありがとうございました!
応援ありがとうございます!
30
お気に入りに追加
1,243
この作品の感想を投稿する
みんなの感想(173件)
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。
初めまして( ᵕᴗᵕ )✩
実は、3周目、読んでます。何回、読んでも飽きないのは
スハスハの良いところですね!
自分もにおいフェチなので…
リヴェリーが可愛くて仕方ないし共感ももてます
(*´︶`*)❤︎
では、続きを!!
読んでまいりまーす⊂(◜ω◝⊂ )))Σ≡GO!!
ご感想ありがとうございます~!(;ω;`*)
応援駆けつけていただいて嬉しいです(TдT)
においフェチの方に認められたリヴェリー!Σ(゚д゚*)やった~!
普段男女ものは余り読まないのですが、とても斬新で面白かったので、ついつい最後まで読んでしまいました。匂いフェチ、とても共感できました!
文の書き方も好きなので、南田先生の他の作品も是非読ませて頂きます。
応援しています。
ご感想ありがとうございます!( *´艸`)
楽しんでいただけて何よりです✨
気に入って他作品まで追っていただけるなんて感激です✨(;ω;`*)
他作品ですと、『偽聖女の汚名を着せられ~』と『一目惚れの理由が~』が似た系統かと思います*。・+(人*´∀`)+・。*
完結おめでとうございます🎉
一言…寂しい…
終わってほしくない😢
そんな作品でした!
とても楽しかったです☺️✨
ありがとうございました!
完結お祝いありがとうございます!(* >ω<)✨
終わりを惜しんでいただけるほど作品を愛していただけて、作者冥利に尽きます(;ω;`*)
楽しみに読んでくださる読者様がいるからこそ、意欲的に書き続けることができました!
最後までお付き合いいただきありがとうございました~!ヽ(*゚Д゚*)ノ