【ショートショート】冬・雪のおはなし

大切な人

十二月半ば。日に日に寒さが増し、この日は朝から雪が散らつき夜まで降り続いていた。

街ではクリスマスの音楽が流れ、イルミネーションがキラキラと輝いていた。

そんな幸福に満ちた雰囲気から一変、轟音(ごうおん)が響いた。
凍結した道路でスリップした車が人混みに突っ込んできたのだ。

逃げまどう人や泣き声で溢れる中、一組のカップルの姿があった。

(呼び掛ける感じで)おいっ！大丈夫かっ！しっかりしろっ！…聞こえるか？｢かすり傷なんだから大丈夫｣って？バカっ！
(声を小さくして)こんなに血が出てるじゃねぇか…

(焦って周りに叫んでる感じで)すみませんっ！誰か救急車をっ！(彼女に言っている感じで)…すぐ救急車来るからな！

早く処置しないと…このままじゃ…
俺がすぐそばにいながら守れなかったなんて…
俺が雪を見に出掛けようなんて言わなければ、こんな事に巻き込まれずに済んだのに…ごめん。
俺がずっとそばにいるから…