5 / 8
第5章
ひょこっ、と厨房の扉から顔を出したのは、三人目のメイドだった。
ふわふわの蜂蜜色の髪を、頭の高い位置でツインテールに結んでいる。
大きなエメラルドグリーンの瞳は、少し眠たげで、どこを見ているのか分からない。
幼さを感じさせる、まるっこい輪郭。
エリナの「爆乳」、スズネの「スレンダー」とはまた違う、小動物的な愛らしさと、守ってやりたくなるような儚さを兼ね備えた少女だ。
彼女のメイド服は、エリナやスズネのものとは違い、淡いパステルピンクを基調としている。
襟や袖口にあしらわれた過剰なまでのフリルとリボンが、彼女の妹的な魅力をさらに引き立てていた。
その手に、美しいティーカップが乗った銀色のお盆を持っている。
「ご主人様、はじめまして。わたくし、マリー=フォルティアです。どうぞ、よろしくです~」
ぺこり、と頭を下げるマリー。
「紅茶ですよぉ~。エリナちゃん直伝の、心がぽかぽかする魔法をかけておきましたから、どうぞです~」
にこにこと、無垢な笑顔でこちらに歩み寄ってくるマリー。
そして、次の瞬間。
すてんっ!
何もない、本当に何もない、床の上で、マリーは見事なまでに派手に転倒した。
「ひゃああっ!?」
彼女の可愛らしい悲鳴と共に、銀色のお盆が宙を舞う。
放物線を描いたティーポットから、熱い紅茶が勢いよく飛び出し――その液体は、まるで意思を持っているかのように、この場で最も不運な人物、スズネの身体へと降り注いだ。
「――ッ!? あっつ!?」
ジュワッ、という音と共に、スズネの白い肌が蒸気で赤く染まる。
そして、彼女が身に着けていた最後の砦である純白のショーツが、濡れたことで肌にぴったりと張り付き、下の地形まで透けて見えるようになってしまった。
もはや、隠している意味がない。
だが、悲劇はそれだけでは終わらない。
転倒したマリー本人は、ぐるんと一回転し、俺の足元へと滑り込んできたのだ。
その勢いで、彼女のパステルピンクのスカートが、無慈悲に、そして完璧に、めくれ上がる。
そこには、小さなイチゴの柄がプリントされた、これまた純白の、恐ろしく可愛らしいパンツが、無防備な姿を晒していた。
カオス。
まさに、カオスという言葉がふさわしい。
一人は胸を、もう一人は尻を。
二人の美少女メイドが、揃いも揃って極上の下着姿を俺に披露している。
俺の脳の処理能力は、とっくの昔に限界を突破していた。
その、あらゆる理性が蒸発した空間で、スズネが、動いた。
彼女は、わなわなと震えながらも、無理やり平静を装い、俺を射殺さんばかりの瞳で睨みつける。
「……いいですか、よく聞きなさい、この変態雄(オス)」
スズネは、深く、深く息を吸い込むと、はっきりとした口調で、衝撃の事実を告げ始めた。
その姿は、半裸で紅茶まみれだというのに、不思議な説得力に満ちていた。
「第一に。わたしたちは、人間ではありません」
「……え?」
「わたしたちのような存在を、あなたたちの世界では、なんと呼ぶのでしたか……まあ、どうでもいいですね。とにかく、人間とは異なる理(ことわり)で生きる、高次の生命体だとお考えなさい」
目の前で魔法を使われ、今もなお、現実離れした美少女たちの痴態を拝んでいるのだ。
否定する方が、どうかしている。
「第二に。このカフェは、単なる飲食店ではありません。ここは、あなたの住む『現世(うつしよ)』と、わたくしたちの住む『異界(いかい)』を繋ぐ、唯一の『扉』なのです」
「扉……」
「そして第三に……。あなたはその『扉』を開き、干渉する力を持つ、イレギュラーな存在……古より、『鍵持ち』と、そう呼ばれてきました。」
鍵持ち。
俺が?
混乱する頭で、必死に言葉を反芻する。
その時だった。
俺の足元でうつ伏せになっていたマリーが、むくりと顔を上げた。
その眠たげなエメラルドの瞳が、まっすぐに俺の顔を捉える。
彼女は、こてん、と不思議そうに首を傾げた。
「あれ……? ご主人様、なんだか、とっても悲しくて、寂しい匂いがします……」
「……匂い?」
「はい。昔……どこかで……誰か、とっても綺麗な女の人が、同じ匂いをさせて、泣いていたような……?」
マリーの呟きは、誰に言うでもなく、静かな店内にぽつりと溶けて消えた。
スズネは眉をひそめ、エリナは心配そうにマリーを見つめている。
なんだ? 今のは……。
俺がその言葉の意味を考えるよりも早く、スズネが話を本題に戻した。
「……とにかく、あなたという存在は、あまりに危険すぎる。放置はできません」
そう言うと、スズネは何もなかったはずの空間に、すっと手を差し入れた。
すると、彼女の指先から紫色の光が溢れ出し、一枚の古びた羊皮紙(パーチメント)が、その手に具現化する。
「ただし……」
スズネは、その契約書らしきものを、俺の目の前に突きつけた。
「あなたには、この店の秘密を知った者としての『義務』と……そして、わたしたちを、あらゆる脅威から守る『責任』が発生しました」
ふわふわの蜂蜜色の髪を、頭の高い位置でツインテールに結んでいる。
大きなエメラルドグリーンの瞳は、少し眠たげで、どこを見ているのか分からない。
幼さを感じさせる、まるっこい輪郭。
エリナの「爆乳」、スズネの「スレンダー」とはまた違う、小動物的な愛らしさと、守ってやりたくなるような儚さを兼ね備えた少女だ。
彼女のメイド服は、エリナやスズネのものとは違い、淡いパステルピンクを基調としている。
襟や袖口にあしらわれた過剰なまでのフリルとリボンが、彼女の妹的な魅力をさらに引き立てていた。
その手に、美しいティーカップが乗った銀色のお盆を持っている。
「ご主人様、はじめまして。わたくし、マリー=フォルティアです。どうぞ、よろしくです~」
ぺこり、と頭を下げるマリー。
「紅茶ですよぉ~。エリナちゃん直伝の、心がぽかぽかする魔法をかけておきましたから、どうぞです~」
にこにこと、無垢な笑顔でこちらに歩み寄ってくるマリー。
そして、次の瞬間。
すてんっ!
何もない、本当に何もない、床の上で、マリーは見事なまでに派手に転倒した。
「ひゃああっ!?」
彼女の可愛らしい悲鳴と共に、銀色のお盆が宙を舞う。
放物線を描いたティーポットから、熱い紅茶が勢いよく飛び出し――その液体は、まるで意思を持っているかのように、この場で最も不運な人物、スズネの身体へと降り注いだ。
「――ッ!? あっつ!?」
ジュワッ、という音と共に、スズネの白い肌が蒸気で赤く染まる。
そして、彼女が身に着けていた最後の砦である純白のショーツが、濡れたことで肌にぴったりと張り付き、下の地形まで透けて見えるようになってしまった。
もはや、隠している意味がない。
だが、悲劇はそれだけでは終わらない。
転倒したマリー本人は、ぐるんと一回転し、俺の足元へと滑り込んできたのだ。
その勢いで、彼女のパステルピンクのスカートが、無慈悲に、そして完璧に、めくれ上がる。
そこには、小さなイチゴの柄がプリントされた、これまた純白の、恐ろしく可愛らしいパンツが、無防備な姿を晒していた。
カオス。
まさに、カオスという言葉がふさわしい。
一人は胸を、もう一人は尻を。
二人の美少女メイドが、揃いも揃って極上の下着姿を俺に披露している。
俺の脳の処理能力は、とっくの昔に限界を突破していた。
その、あらゆる理性が蒸発した空間で、スズネが、動いた。
彼女は、わなわなと震えながらも、無理やり平静を装い、俺を射殺さんばかりの瞳で睨みつける。
「……いいですか、よく聞きなさい、この変態雄(オス)」
スズネは、深く、深く息を吸い込むと、はっきりとした口調で、衝撃の事実を告げ始めた。
その姿は、半裸で紅茶まみれだというのに、不思議な説得力に満ちていた。
「第一に。わたしたちは、人間ではありません」
「……え?」
「わたしたちのような存在を、あなたたちの世界では、なんと呼ぶのでしたか……まあ、どうでもいいですね。とにかく、人間とは異なる理(ことわり)で生きる、高次の生命体だとお考えなさい」
目の前で魔法を使われ、今もなお、現実離れした美少女たちの痴態を拝んでいるのだ。
否定する方が、どうかしている。
「第二に。このカフェは、単なる飲食店ではありません。ここは、あなたの住む『現世(うつしよ)』と、わたくしたちの住む『異界(いかい)』を繋ぐ、唯一の『扉』なのです」
「扉……」
「そして第三に……。あなたはその『扉』を開き、干渉する力を持つ、イレギュラーな存在……古より、『鍵持ち』と、そう呼ばれてきました。」
鍵持ち。
俺が?
混乱する頭で、必死に言葉を反芻する。
その時だった。
俺の足元でうつ伏せになっていたマリーが、むくりと顔を上げた。
その眠たげなエメラルドの瞳が、まっすぐに俺の顔を捉える。
彼女は、こてん、と不思議そうに首を傾げた。
「あれ……? ご主人様、なんだか、とっても悲しくて、寂しい匂いがします……」
「……匂い?」
「はい。昔……どこかで……誰か、とっても綺麗な女の人が、同じ匂いをさせて、泣いていたような……?」
マリーの呟きは、誰に言うでもなく、静かな店内にぽつりと溶けて消えた。
スズネは眉をひそめ、エリナは心配そうにマリーを見つめている。
なんだ? 今のは……。
俺がその言葉の意味を考えるよりも早く、スズネが話を本題に戻した。
「……とにかく、あなたという存在は、あまりに危険すぎる。放置はできません」
そう言うと、スズネは何もなかったはずの空間に、すっと手を差し入れた。
すると、彼女の指先から紫色の光が溢れ出し、一枚の古びた羊皮紙(パーチメント)が、その手に具現化する。
「ただし……」
スズネは、その契約書らしきものを、俺の目の前に突きつけた。
「あなたには、この店の秘密を知った者としての『義務』と……そして、わたしたちを、あらゆる脅威から守る『責任』が発生しました」
あなたにおすすめの小説
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ちょっと大人な物語はこちらです
神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な短編物語集です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
春の雨はあたたかいー家出JKがオッサンの嫁になって女子大生になるまでのお話
登夢
恋愛
春の雨の夜に出会った訳あり家出JKと真面目な独身サラリーマンの1年間の同居生活を綴ったラブストーリーです。私は家出JKで春の雨の日の夜に駅前にいたところオッサンに拾われて家に連れ帰ってもらった。家出の訳を聞いたオッサンは、自分と同じに境遇に同情して私を同居させてくれた。同居の代わりに私は家事を引き受けることにしたが、真面目なオッサンは私を抱こうとしなかった。18歳になったときオッサンにプロポーズされる。
義姉と押し入れに隠れたら、止まれなくなった
くろがねや
恋愛
父の再婚で、義姉ができた。
血は繋がっていない。でも——家族だ。そう言い聞かせながら、涼介はずっと沙耶から距離を取ってきた。
夏休み。田舎への帰省。甥っ子にせがまれて始まったかくれんぼ。急いで飛び込んだ押し入れの中に、先客がいた。
「……涼介くん」
薄い水色の浴衣。下ろした髪。橙色の光に染まった、沙耶の顔。
逃げ場のない暗闇の中で、二人分の体温が混ざり合う。
夜、来て。
その一言が——涼介の、全部を壊した。
甘くて、苦しくて、止まれない。
これは、ある夏の、秘密の話。
至れり尽くせり!僕専用メイドの全員が溺愛してくる件
こうたろ
青春
普通の大学生・佐藤健太は目覚めると、自宅が豪華な洋館に変わり10人の美人メイドたちに「お目覚めですか、ご主人様?」と一斉に迎えられる。いつの間にか彼らの“専属主人”になっていた健太は戸惑う間もなく、朝から晩までメイドたちの超至れり尽くせりな奉仕を受け始める。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!