わたしを嫌う妹の企みで追放されそうになりました。だけど、保護してくれた公爵様から溺愛されて、すごく幸せです。

バナナマヨネーズ

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第十二話

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 ウェインは咳払いの後、ようやく口を開いたのだ。
 
「ゴホン。ハナビ嬢については、内膜については、医師の指示の通りに処置を進めています。近いうちに屋敷に医師を呼んで、診てもらう予定です。外皮についても……。現状、言葉が通じない状態ですが、彼女に不自由を感じさせないよう手を尽しています」

「そ……そうか。それならよい。そのうち、私が謝罪に……」

「大丈夫です。陛下のそのお心は、俺からハナビ嬢に行動で伝えますので、屋敷にお越しいただく必要はございません」

「いやしかし……」

「それに、ハナビ嬢の体のことを考えると、俺の屋敷から出るのは極力控えたいですし、警備面で陛下が俺の屋敷に来ることも遠慮していただきたく」

「いやいや、お前の屋敷こそある意味この国で一番の守りだと思うのだが……。何より、剣鬼がいるのだから……」

 フェデルが慌てたようにそう口にすると、ウェインは思い出したかのように口を開く。
 
「ああ、そう言えば、テイルは次席を辞しました」

「は?」

「ん??」

「え? えーーーーー?!」

 軽い口調でそう言ったウェインに対して、フェデル、セルジオ、ランジヤの順で反応を示した。
 中でもランジヤの反応は、ここが国王陛下の執務室だということも吹き飛んでしまったかのようなものだった。
 ウェインの座るソファーの前の方に回り込み、膝を付いて見上げるようにして、必死の形相でウェインの肩を強く揺らしたのだ。
 
「先輩! どーいうことですか?! マリアが次席の職を辞した? 何でですか? どうしてですか? せんぱい! せんぱーーーーい!!」

 グラグラと体を前後に激しく揺さぶられながら、ウェインは面倒くさそうに口を開く。
 
「はあ……。マリアは……」

 しかし、体を揺さぶる力はさらに強くなり、ウェインは言葉を続けることを止めて、きつく握ったこぶしを無言でランジヤの頭に振り下ろしていた。
 
 ゴォヂッ!!!
 
 到底、拳で流られたとは思えないような鈍い音が室内に響いていた。
 そして、拳をノーガードで受けたランジヤは、床を涙目でのたうち回るのだ。
 
「くぇrちゅいおpーーーーーーー!! 先輩……痛いです! 酷いです!!」

「黙れ」

「すいません……」

「はあ……。それで、マリアだが、次席を辞めて、うちで侍女をしている」

「は? え?」

「ハナビ嬢に初めてあった時だ。マリアは、『可愛い! 可愛いです! もう、私、この子の専属侍女になります! 私がこの子を全力で守ります!! すきーーー!!』と言って、自ら転職したのだ」

 途中、ウェインは顔色一つ変えずに、―――どこからその声を出したのか疑問すぎる―――マリアの声音でセリフを再現したのだ。
 
 ランジヤは、情報過多なウェインの言葉に呆然としたのは一瞬で、頭を抱えてこう言ったのだ。
 
「あああ、言いそうです……。確かに、ハナビ嬢は、小さくて、色白で、儚い感じで、守ってあげたくなるような、そんな感じで、マリアの好みドンピシャです。そうですか、そうですね……。マリアがハナビ嬢の傍に居るなら、安心ですね。剣姫が傍に居れば、そこが世界一安全な場所です……」

「ランジヤ……、マリアは剣鬼だからな」

「はい。剣姫ですね」

「…………」

「…………」

 世間一般的には、マリアの剣技は、鬼でさえも裸足で逃げ出すほどの鬼強な姿から【剣鬼】と称されていたが、ランジヤの中では、剣を持って戦う姿は、まるで舞でも踊っているかのように美しく、そのことから剣の舞姫、【剣姫】と呼んでいたのだ。
 その食い違いが【ケンキ】という言葉から微妙なニュアンスの違を滲みだし、ついついウェインは、ランジヤにその都度確認をしてしまうのだった。
 
 話がそれたものの、イスカニア王国最大の守り手ともいえる剣鬼がいるのであれば警備体制に不足はないと考えたフェデルだったが、隣にいるセルジオから首を横に振られてしまう。
 
「ん? どうしたのだ?」

 首を傾げるフェデルに対して、セルジオは身を寄せて出来るだけ小さな声で言うのだ。

「はぁ……。陛下、公爵閣下は警備面の問題と言いつつ、本音ではこう言いたいのです。好いた相手を出来るだけ独り占めしたいということですよ」

 セルジオの言葉に、フェデルはなるほどと手を打つ。
 
「なるほどな。うんうん。ああ見えて、ウェインの奴め、初恋のようだしな。くふ。愛い奴め」

「そうですねぇ。女性に黄色い声を上げられてはいますが、あれで浮いた話も聞いたことがありませんでしたし。春ですねぇ」

「ああ、春だなぁ」

 そんなことを言いつつ、微笑み合っていたフェデルとセルジオは、突然の寒気に背筋を震わせることになる。
 見なくても二人には分かったのだ。
 その寒気が正体が。
 現実逃避をしている間に、ランジヤへのお仕置が終わっており、執務室の床でぴくぴくと体を震わせるランジヤ。
 整った顔で目が全く笑っていない笑顔を見せるウェイン。
 ここは無理を言って面会を希望することは危険と判断したフェデルは、咳払いの後に言うのだ。
 
「ごほん……。あー、謝罪の場は改めてということで、これからもハナビ嬢のことはウェインに一任するので、彼女が不自由なく過ごせるように努めてくれ」

「御意に」

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