俺の最悪な異世界転移の顛末

胡桃 ぱんこ

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本編

優しいは怖い

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 俺の予想に反して、軟派男ことジェードは何度もやってきた。
 
 コイツは貴族の次男坊で宮殿騎士らしい。宮殿騎士は王族と貴族を守る騎士らしく、戦争には行かない。暇なのか毎日のように庭にやってきて、菓子や食べ物を俺に食わせる。
 

「今日は~!カップケーキです~!プレーンとチョコチップとこれはベリー!」


 数度話していくうちにわかったことだが、この男はとんでもなくモテるようだ。毎回のように令嬢の差し入れ菓子を持ってやって来る。今日の菓子はピンクの袋に包まれ、レースがふんだんに使われた白いリボンで飾り付けられている。


「こんなに贈り物をもらうなんて、お前は愛されているんだな」

「ん~、そうとは限らないかなぁ。それに俺なんかを好きっていう人間は、何にも見えてない大馬鹿者だよ。」

「……好かれているのは、いいことじゃないのか?」
「ふふふ、大人の世界はユウにはまだ早いかな~~~」
「はぁ?意味わかんねぇやつだな」


 コイツは時々意味が分からないことを言う。

 なんとなく思うのはコイツは自分のことがあまり好きじゃないのかなと言うこと。ムカついたので足元に蹴りを入れてやる。


「お前は確かに全てにおいて軽くて薄っぺらくて、人の好意をなんとも思っていない、息を吸うように嘘をつくクソ野郎だが」

「おいおいおい、とんでもない悪口だね」

「悪いやつじゃない。だからお前の悪口を俺以外が言うのはムカつく」

「……ふふ、それは俺が言うのもダメってこと?」
「そう」



「っ可愛いやつめ!」
「おいっ!バカやめろ!近寄るな!」
   

 頭を撫でてくるでかい手のひら。コイツはパーソナルスペースが狭すぎる!


「よしよしよし!ってかお前髪の毛ボサボサだな~!栄養が足りなすぎる!もっと食わせない…と……な」

 頭をのなぜている手が止まる。

「なんだよ……離せよ」

「ユウ……お前……」
「………………なん、だよ」
 

 胸がヒヤリとする。
 優しい人間は過去にもいたけど、その優しさは永遠じゃない。俺はそれを嫌と言うほど知っている。

 でも優しい人が優しくなくなる理由は何度経験しても分からなかったから、俺はきっと人の心がわからない欠陥品なんだ。
  
 頭に乗った手は動かない。庭の花が風に揺れる音が、やけに大きく聞こえた。

 ジェードがゆっくり動き出し俺の手を取った。膝をつき俺の手の甲に自分の額をつける、まるで神に祈るようなそんな姿勢。


「ねぇ、ユウ。俺を君の騎士にしてくれないか?何が相手だって、君を守ってみせるから。」


 射抜くような鋭いエメラルドの輝きに、一瞬時が止まったように感じた。

 初めて見た真剣な表情、目が合った瞬間口から勝手に言葉が溢れた。

 

 
「……………………やだよ、いらない」
  


 
優しいは怖い、永遠じゃないならそんなもの俺はいらない。


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