終わらないエピローグを君に

胡桃 ぱん

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本編

EXー1 シンラ視点



 僕は男爵家の三男、シンラ・ルーデウス。エルフォード学園高等部の2年生だ。騎士に憧れるごく平凡な生徒、気の弱さゆえに時々いじめられるのが最近の悩み。

 そんな僕のクラスには、この国の第一王子であるアレクサンダー・エルフォード様がいらっしゃる。眉目秀麗、頭脳明晰、文武両道の聖人君子、……と言われている。

 だが僕は知っている、殿下はいい人ではない。

 僕の話に戻るが、僕の父はギャンブル中毒だ。賭け事にハマり、家計は火の車なのだがまぁそんなことは置いといて。父を連れ戻しに僕は何度か賭場に足を運んでいる。そこでは素性を隠すために誰もが仮面をかぶっており、会場も薄暗く相手の容貌はわからなくなっている。

 僕はそこで殿下を見た。

 それは本当に偶然の出来事、酔った父が殿下にぶつかり仮面が落ちたのだ。だが殿下はまるで焦る様子もなく、僕らを一瞥し会場へ戻って行った。その瞳は普段の殿下とは全く違う、背筋が凍るほど恐ろしいものだった。

 それから注意深く殿下を見ていると、綺麗に微笑んでると思っていたその瞳が全く笑っていないことに気づいた。誰にも優しいようで本当は誰にも興味がない、どうでもいいと思っているんだ。その事実に気づいてから僕は殿下が恐ろしくなり、関わることのないよう細心の注意を払って過ごしていた。


 

 そんなある日、僕らのクラスに転入生が現れた。

 ルカ・シルビア、彼は明るい色の髪や目がほとんどのわが国では珍しい漆黒の瞳と髪をもっていた。猫のようにツンとした瞳はキツく見られるが、感情豊かな表情がそれを中和して凛々しさの中に可愛さを感じる容姿をしていた。

 気さくで親切、なぜかいつもペットの犬を連れて楽しそうに過ごしているルカくんはすぐクラスの人気者になった。さらに彼の我流の剣は異常に強く美しく、そのギャップでさらに人気が爆発した。

 そんなルカくんに興味を持ったのか殿下から声をかける事が多々あり、殿下の本性を知る僕はハラハラしながらそれを見ていたが、彼は全ての誘いを悪気なく華麗にスルーしていた。天然ってすごい。

 そんな彼に変化が起きたのはひと月ほど前。赤い目で枯れた声で、腰を庇って登校した彼は、控えめに言ってめっちゃエロかった。教室中が俺たちのアイドルに何が起きたのかとざわついていた。

 おそらく注視していた僕しか気づいてないと思うが、殿下とルカくんが言葉を交わした後、殿下が一瞬ルカくんを引き寄せ耳元で何かを囁いた。ルカくんは赤くなった頬を顔を伏せて隠していたが、2人の間で何かが起こったのは明白だった。

 僕に出来ることは殿下と一緒にいたくなさそうなルカくんと、殿下の逆鱗に触れないレベルで共に過ごすことくらい。時々あの全く笑っていない微笑みで牽制されることもあるけど、僕は僕が出来る範囲でルカくんを守ると決めた。



「ルカくん、帰ろう。今日は訓練に付き合ってくれる?」
「そうだな、やろうか。」
「ありがとう、この前の型なかなか馴染まなくて」
「あれは、足の踏み込みが大事で」

 今日も突き刺すような殿下の視線、邪魔をするなとその瞳が語っている。恐ろしく冷たいそれに背筋が震える。

 でも僕は負けないぞ!僕を守ってくれたルカくんに恩返しをするために!

 そうして、今日も僕はルカくんと帰路に着いた。

 
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