10 / 31
本編
EXー1 シンラ視点
僕は男爵家の三男、シンラ・ルーデウス。エルフォード学園高等部の2年生だ。騎士に憧れるごく平凡な生徒、気の弱さゆえに時々いじめられるのが最近の悩み。
そんな僕のクラスには、この国の第一王子であるアレクサンダー・エルフォード様がいらっしゃる。眉目秀麗、頭脳明晰、文武両道の聖人君子、……と言われている。
だが僕は知っている、殿下はいい人ではない。
僕の話に戻るが、僕の父はギャンブル中毒だ。賭け事にハマり、家計は火の車なのだがまぁそんなことは置いといて。父を連れ戻しに僕は何度か賭場に足を運んでいる。そこでは素性を隠すために誰もが仮面をかぶっており、会場も薄暗く相手の容貌はわからなくなっている。
僕はそこで殿下を見た。
それは本当に偶然の出来事、酔った父が殿下にぶつかり仮面が落ちたのだ。だが殿下はまるで焦る様子もなく、僕らを一瞥し会場へ戻って行った。その瞳は普段の殿下とは全く違う、背筋が凍るほど恐ろしいものだった。
それから注意深く殿下を見ていると、綺麗に微笑んでると思っていたその瞳が全く笑っていないことに気づいた。誰にも優しいようで本当は誰にも興味がない、どうでもいいと思っているんだ。その事実に気づいてから僕は殿下が恐ろしくなり、関わることのないよう細心の注意を払って過ごしていた。
そんなある日、僕らのクラスに転入生が現れた。
ルカ・シルビア、彼は明るい色の髪や目がほとんどのわが国では珍しい漆黒の瞳と髪をもっていた。猫のようにツンとした瞳はキツく見られるが、感情豊かな表情がそれを中和して凛々しさの中に可愛さを感じる容姿をしていた。
気さくで親切、なぜかいつもペットの犬を連れて楽しそうに過ごしているルカくんはすぐクラスの人気者になった。さらに彼の我流の剣は異常に強く美しく、そのギャップでさらに人気が爆発した。
そんなルカくんに興味を持ったのか殿下から声をかける事が多々あり、殿下の本性を知る僕はハラハラしながらそれを見ていたが、彼は全ての誘いを悪気なく華麗にスルーしていた。天然ってすごい。
そんな彼に変化が起きたのはひと月ほど前。赤い目で枯れた声で、腰を庇って登校した彼は、控えめに言ってめっちゃエロかった。教室中が俺たちのアイドルに何が起きたのかとざわついていた。
おそらく注視していた僕しか気づいてないと思うが、殿下とルカくんが言葉を交わした後、殿下が一瞬ルカくんを引き寄せ耳元で何かを囁いた。ルカくんは赤くなった頬を顔を伏せて隠していたが、2人の間で何かが起こったのは明白だった。
僕に出来ることは殿下と一緒にいたくなさそうなルカくんと、殿下の逆鱗に触れないレベルで共に過ごすことくらい。時々あの全く笑っていない微笑みで牽制されることもあるけど、僕は僕が出来る範囲でルカくんを守ると決めた。
「ルカくん、帰ろう。今日は訓練に付き合ってくれる?」
「そうだな、やろうか。」
「ありがとう、この前の型なかなか馴染まなくて」
「あれは、足の踏み込みが大事で」
今日も突き刺すような殿下の視線、邪魔をするなとその瞳が語っている。恐ろしく冷たいそれに背筋が震える。
でも僕は負けないぞ!僕を守ってくれたルカくんに恩返しをするために!
そうして、今日も僕はルカくんと帰路に着いた。
あなたにおすすめの小説
また恋人に振られたので酒に飲まれていたらゴツい騎士に求婚していた件
月衣
BL
また恋人に振られた魔導省のエリート官吏アルヴィス。失恋のショックで酒に溺れた彼は勢いのまま酒場に現れた屈強な王宮騎士ガラティスに求婚してしまう。
翌朝すべての記憶を保持したまま絶望するアルヴィスだったが当のガラティスはなぜか本気だった。
「安心しろ。俺は誠実な男だ。一度決めたことは覆さない」
逃げようとするエリート魔導師と絶対に逃がさない最強騎士
貢ぎ体質な男が捕まる強制恋愛コメディのつもりです!!
【完結】執着系幼馴染みが、大好きな彼を手に入れるために叶えたい6つの願い事。
高月 壬黎
BL
ヤンデレ執着攻め×鈍感強気受け
ユハン・イーグラントには、幼い頃から共に過ごしてきた幼馴染みがいる。それは、天使のような美貌を持つミカイル・アイフォスターという男。
彼は公爵家の嫡男として、いつも穏やかな微笑みを浮かべ、凛とした立ち振舞いをしているが、ユハンの前では違う。というのも、ミカイルは実のところ我が儘で、傲慢な一面を併せ持ち、さらには時々様子がおかしくなって頬を赤らめたり、ユハンの行動を制限してこようとするときがあるのだ。
けれども、ユハンにとってミカイルは大切な友達。
だから彼のことを憎らしく思うときがあっても、なんだかんだこれまで許してきた。
だというのに、どうやらミカイルの気持ちはユハンとは違うようで‥‥‥‥?
そんな中、偶然出会った第二王子や、学園の生徒達を巻き込んで、ミカイルの想いは暴走していく────
※旧題「執着系幼馴染みの、絶対に叶えたい6つの願い事。」
金曜日の少年~「仕方ないよね。僕は、オメガなんだもの」虐げられた駿は、わがまま御曹司アルファの伊織に振り回されるうちに変わってゆく~
大波小波
BL
貧しい家庭に育ち、さらに第二性がオメガである御影 駿(みかげ しゅん)は、スクールカーストの底辺にいた。
そんな駿は、思いきって憧れの生徒会書記・篠崎(しのざき)にラブレターを書く。
だが、ちょっとした行き違いで、その手紙は生徒会長・天宮司 伊織(てんぐうじ いおり)の手に渡ってしまった。
駿に興味を持った伊織は、彼を新しい玩具にしようと、従者『金曜日の少年』に任命するが、そのことによってお互いは少しずつ変わってゆく。
有能副会長はポンコツを隠したい。
さんから
BL
2.6タイトル変更しました。
この高校の生徒会副会長を務める僕・東山 優真は、普段の仕事ぶりから次期生徒会長の最有力候補と言われている。……んだけど、実際は詰めの甘さやうっかりミスを根性論でカバーしてきたポンコツだ。
こんなに頑張れているのは、密かに思いを寄せている安西生徒会長のため。
ある日、なんの奇跡か会長に告白され晴れて恋人同士となった僕は、大好きな人に幻滅されないためにポンコツを隠し通すと決めたけど……!?(内容は他サイト版と同じですが、こちらの方がちょっと読みやすいはずです)
人気アイドルの俺、なぜかメンバー全員に好かれてます
七瀬
BL
デビュー4年目の人気アイドルグループ「ECLIPSE(エクリプス)」に所属する芹沢 美澄(せりざわみすみ)は、昔からどこか抜けていてマイペースな性格。
歌もダンスも決して一番ではないはずなのに、なぜかファンからもメンバーからも目を離されない存在だった。
世話焼きな幼なじみ、明るく距離の近い同い年、しっかり者で面倒見のいい年上、掴みどころのない自由人、そして無言で隣にいるリーダー——。
気づけば、美澄の周りにはいつも誰かがいて、当たり前のように甘やかされていく。
一度も話したことないイケメンのクラスメイトと二人組になったらめちゃくちゃ執着されてた
時
BL
「はい、じゃあ二人組作って」──あまり人付き合いが得意ではない夏稀(なつき)にとってそれは地獄の言葉。
けれど高校ではちがう。なぜなら新しくできた友達と『二人組』協定を結んだから。
もう二人組なんて怖くないと思っていた矢先、その友達が風邪で欠席。
ほかに組む相手が見つからず、先生と組むことも覚悟する夏稀だったが、そこで声をかけてきたのは美形の転校生──緒川聖夜(おがわ・きよや)だった。
「俺と二人組にならない?」
その一言をきっかけに聖夜は夏稀との距離を急速に縮めてきて──。
執着美形攻め×平凡受けのちょっと不穏な学園BL。
約九万字、全三十話+αの物語です。
【完結】一生に一度だけでいいから、好きなひとに抱かれてみたい。
村松砂音(抹茶砂糖)
BL
第13回BL大賞で奨励賞をいただきました!
ありがとうございました!!
いつも不機嫌そうな美形の騎士×特異体質の不憫な騎士見習い
<あらすじ>
魔力欠乏体質者との性行為は、死ぬほど気持ちがいい。そんな噂が流れている「魔力欠乏体質」であるリュカは、父の命令で第二王子を誘惑するために見習い騎士として騎士団に入る。
見習い騎士には、側仕えとして先輩騎士と宿舎で同室となり、身の回りの世話をするという規則があり、リュカは隊長を務めるアレックスの側仕えとなった。
いつも不機嫌そうな態度とちぐはぐなアレックスのやさしさに触れていくにつれて、アレックスに惹かれていくリュカ。
ある日、リュカの前に第二王子のウィルフリッドが現れ、衝撃の事実を告げてきて……。
親のいいなりで生きてきた不憫な青年が、恋をして、しあわせをもらう物語。
※性描写が多めの作品になっていますのでご注意ください。
└性描写が含まれる話のサブタイトルには※をつけています。
※表紙は「かんたん表紙メーカー」さまで作成しました。