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本編
セフレじゃねぇか!
学校が終わった後、呼び出されてアレクの部屋でセックスをする。
抱かれるために自ら支度をして部屋に向かうのは今でもかなり抵抗があるが、脅されてる限り避けられるものではないし、どうせやられるなら痛いのも苦しいのもごめんだ。
アレクに抱いていた淡い恋心は、最初の夜に無惨に踏み潰され儚く散った。今更アレクの言動に胸を痛めることもない。人間良くも悪くも順応する生き物、繰り返すうちに、だんだん慣れて感じなくなっていく。
今日もさんざん犯されて目を覚ますと、変わらずアレクの部屋、ベッドの上。ゆっくり上半身を起こすと体が軋み下肢に鈍痛が響く。
「起きたか」
視線を声の方へ向けると、シャワーを浴びたのだろう。アレクが上裸で水を飲んでいる。こいつ、自分だけスッキリしやがって。恨みがましい目で男を見やると、とんでもないセリフが飛び出した。
「飯作れ」
「…………………………は?」
現在21時、売店も食堂も閉まり外出も不可な時間帯。確かに授業後に呼び出されて、すったもんだやっていた俺たちはメシ抜きだ。腹は減っている、だが、しかしだ。
「腹減ったんだよ」
「お前、ふざけんなよ」
「……あ~教室で手が滑ったらどうしよう、クラス中にお前が淫乱の変態ってバレちゃうな~」
「……………………しね」
「あ?」
いけない、つい心の声が。この男は言い出したら聞かない、諦めて酷使された体を起こす。
「なんでもない、作れったってそんな大したもんは作れないぞ」
「腹が膨れればなんでもいい、お前も食えよ、毒味だ」
「上手くはないがそこまで下手でもねぇよ」
「期待はしてないが、はやくしろ」
「はぁ」
ゆっくり立ち上がりベッドの脇に落ちた制服を拾い身につける。腰に響く鈍い痛みに気づかないふりをして、体を動かす。
そういえば、行為の後とは思えないほど体がさっぱりしている。これは、このクズ王子が後始末をしてくれたのか、珍しい。じっとアレクを見た。
「なに、まだやりたいの?」
「誰が!この発情王子が!」
アレクの笑い声を背にキッチンに向かう。
最初にこの部屋に来た時は、不安と緊張で生きた心地がしなかった。今も体は辛いが、アレクに対する異常な恐怖心は薄れている。
「いや、現在進行形でめっちゃ脅されてはいるんだけど」
横暴で独善的、人を人と思わない最低な男だが、命令することに慣れたアレクの言葉にはあまり反発心が湧かない。自然に人を従わせるカリスマ性がアレクにはあった。そうであっても、素直に従ってしまっている自分に悔しくなるのだが。
さて、なにを作ろうか。俺は学生の部屋には合わない巨大な冷蔵庫を開けた。
神様の言語変換能力は偉大で、この世界の食べ物は俺の世界での似たものに自動で変換される。変換された食べ物は味も形も似たようなものなので、料理に関しても前の世界での調理法と同じでもほぼ同じものが作れる。
施設では当番制で子供たちが料理をしていたため、簡単なものなら一通り作れる程度の料理スキルはある。
「楽なのがいいな、チャーハンでいっか」
ベーコンと卵とネギ、あと米(に似た食品達)を取り出して調理を始める。フライパンで材料を炒めながらぼーと思案に耽る。
アレクは不思議な男だった。脅して性行為を強要するくせに、俺の抵抗や軽口を許す。全てを支配して奴隷のように従わせることも出来るだろうに、そうはしない。セックスも暴力的な行為はなく、多少ハードではあるが(アレクの精力が旺盛すぎて)耐えられないほどではない。
「よし、できた」
俺たちの今の関係は何だろう。友達というにはこの部屋以外で接点が無いし、身分の差が大きすぎる、信頼関係も皆無だ。でも下僕というには俺の忠誠心が低すぎる、アレクもそれを求めてこない。
気軽に呼んで、やるだけやって、適当に過ごす。
「セフレじゃねぇか!」
「なんだ?うるせぇな」
気付いた事実に愕然とする俺を横目に、アレクがチャーハンを見つける。
「んだこれ?米か?」
「…………チャーハン」
「?聞いたことない料理だな」
2人分のチャーハンをテーブルに運び、席につく。
「早く食え」
「言われなくても食べるよ」
なんでこんな急かされてんだ、俺は。
「うん、うまい」
「よし、食べたな」
俺が食べ終わったのを見て、アレクがチャーハンを口に含む。あ、眉毛が上がった、満足げな顔、気に入ったみたいだ。
食べ進めるアレク、さすが王族、食べる所作は非常に美しかった。
「そんなに腹減るなら、専属の料理人でも通わせればいいじゃん」
「お前は馬鹿だな」
「は?」
「俺はこの国の王子だぞ、過去何度毒殺されかけたと思ってる。俺の口に入るもんは、安全性を考慮して厳選された料理人が作り、何人もの毒味係を通してやっと俺の元まで届くんだ。そんな簡単なもんじゃねぇんだよ」
王族の食事なんて、想像したこともなかった。普段食べる料理に毒が仕込まれてる可能性があるなんて、恐ろしすぎるだろ。
「いや、ちょっと待てよ。だとしたらこれ、ダメじゃね?」
俺は目の前のチャーハンを見る、俺が適当に作って一口食べただけで、アレクは自分のチャーハンを食べ始めた。そんな適当に食べていいものなのか?
「これはいいんだよ」
「え?よくないだろ」
「俺がいいって言ってるからいいんだよ、お前はこれからも俺が腹減ったら料理を作れ」
「え~~~?」
アレクの言ってることは無茶苦茶だった。でも何となく感じるアレクから俺への信頼みたいなものに、ちょっと嬉しいと思ってしまう俺はやっぱり救いようのない馬鹿なんだと思う。
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