転生悪役兄と秘密の箱庭でxxx生活

悪役兄の日常

少女はその世界に迷い込んだ、薄暗く怪しい森の中に…

美しく妖しい魔族達が少女を迎え入れて共に生活を始める。

その中で彼らと交流をして、愛を育む物語。

登場人物は5人、魔族や聖人達が少女を中心に集まってくる。

俺は大学とバイトで時間が埋まっていて、気分転換にゲームをしようかなと思ってゲームを探していた。
頭を使うゲームは疲れるからしたくないな。

ノベルゲームならいいかなと思い、そのゲームを手にした。

恋愛が中心のゲームをするのは初めての事だった。

ゲーム機がなくて、慌てて中古のゲーム機も買った。
やっぱりやると決めたら全て揃えるつもりだ。
携帯ゲーム機だから、持って帰るのは苦ではなかった。

一人暮らしの家に帰ってきて、早速ゲームをやった。

なかなかギリギリを攻めたような大人っぽい内容だった。
俺も20歳だから大人ではあるけど、そういう事ではない。

つい年齢制限を確認してしまう、何度見ても全年齢だ。

ただのキスシーンも激しくて、覗き見をしている気分でドキドキする。

とりあえず、買ったからにはゲームを全クリする。
休日は今日以外いつ取れるか分からないが、頑張ろう。

そして、攻略キャラクターの勇者と竜王騎士団長を攻略し終えて今日は終わった。

人が幸せな顔をしているのは創作話でも嬉しいな。

また休みの日にやろうかと思ったが、寝る前に少し進められるなと考えながら翌日自転車で走っていた。
いつもの暗い夜道を走り、アパートに向かっていた。

これが俺の何でもない前世の記憶、そして俺は生まれ変わった。

序盤にしか登場しない前世のヒロインのライバル少女の兄に…

なにがどうしてこうなったのか、正直理解出来ない。

名前が似ているだけだと思っていた、そこまで珍しい名前ではないから…

でも、妹が成長するとゲームにちょいちょい出てくる悪役少女に近付いてきた。
少し強気な黒髪清楚の美少女、本当に俺と兄妹か疑いたくなるほど似てる部分がない。

ゲームのヒロインはこの世界の事を悩んでいた。

悪役少女に学校でいじめられて、兄して必要以上に迫られていた。
兄…つまり俺に追いかけられて、ヒロインは森の中に迷い込んだ。

なかなか危ないキャラクターだな、この男は…

俺はヒロインの女の子と会った事はあるが、可愛い子ぐらいしか思わなかった。

でも、俺が追いかけないとヒロインは森の中に行かないんだよな。
どうすれば良いんだ、ヒロインを森に行かせるために追いかけっこをするのか？

いや、あんな怯えた顔を知っているからフリでも出来ない。

ヒロインが森に行かないとゲームが進まない。
俺がやらなきゃ強制的に別の用事で森に行くのかもしれないな。

「兄さん、由里ゆりの事好きでしょ」

「えっ！？違うけどなんで？」

「私の女の勘は当たるのよ」

妹は誇らしげに言ってるが、残念ながら外れだ。
確かにゲームではそうだったのかもしれない。
でも今はこれっぽっちもない、女の子は好きだけどヒロインはゲームのヒロインだとしか思っていない。

まさか、こんなところで強制的にそう思われるとは思わなかった。
それで俺が「そうなんだ、好きなんだ」と心変わりするはずがない。

これって、俺がヒロインを追い詰めろって事？

ゲームを知っているからこそ、そこは回避出来る。
俺が前世の記憶を知っているのはそういう事だと思っている。

妹がこのくらいの年齢でヒロインは森に迷い込む。

行方不明になった話は聞かないから、まだ行っていないんだろう。
舞台は暑かった気がするけど、もう夏休みも終わる。

俺は夏休みが終わると一人暮らしの家に帰る。
だから夏休み中がヒロインの運命を変えるのだろう。

その後だと冬休みになるけど、ゲームは一年間の話だった。
いろいろとイベント事がズレるな、そうなったらどうなるんだろう。

ゲームに出てきたそれっぽい森もある、立ち入り禁止のロープが張ってあって誰も入れないようになっている。
ヒロインはそれどころじゃなかったから入った。

やっぱりきっかけがないとダメなのか、でも大学生が女子高生を追いかけるのは自分でも怖い。

俺は前世でゲームをやっていた年齢になっている。
それもなにか関わりがあるのかな、悪役モブ男が前世を知ってどうするんだとは思うけど…

夕陽に染まるバイトの帰り道、いつもの帰り道の前で自転車を止めた。

目の前にあるのはいつもと変わらない道、そして横には怪しげな雰囲気の森があった。

ここからヒロインは迷い込むんだ、でももしかして森だけ別の森なのかもしれない。
そんな事あるか分からないが、俺は確かめようと思った。

魔物達がいる森は、彼らに導かれて人を迷い込ませる。
普通にしていたら勝手に迷い込む事はない。

俺は迷い込まないから、森を歩いても大丈夫だ。

ちょっとだけ、どういうものか見てみたい。
そしてちゃんとゲームの森なのか確認したい。

自転車は入れないから、一度家に帰って自転車を置いた。

家から徒歩で20分以上ある森の前に戻ってきた。

ロープをくぐり、すぐに引き返すつもりで歩いた。

森は何処も似ていて、あの森かどうか分からない。

頬に冷たい雫が落ちて、びっくりして見上げた。
木の隙間から雨雲がチラッと見えて、もう一度雫を落とす。

雲一つなかったように見えたのは俺の気のせいだったのか。

雨が本降りになり、俺の身体を急激に冷やす。

早く帰ろうと思って目の前を見ると、視界が薄暗くなっていた。
さっきまで夕方だったのに、なんで急に薄暗くなっているんだ？

ここで遭難は嫌だ、必死に来た道を引き返そうと走った。
しかし何も見えない、ここはいったい何処だ？

こんな事になるなら荷物持ってくればよかった。
一度家に帰った時に邪魔になるからと置いて行ってしまった。

走っても走っても全然出口に辿り着かない。

全身は雨に濡れるし、この歳になって迷子で不安な気持ちだ。

何処か雨宿りを出来る場所がないか走り続ける。

すると、遠くから光が見えてやっとなにか見つけたと走った。

ログハウスでもあるのかと思っていたら、そこにあったのは城だった。

この城って、なんでどうしてここにあるんだ？

ここに来るべきは、俺ではないはずなのに…

城の前に立つ銀髪の男は、俺を見て美しい顔で微笑んでいた。