転生悪役兄と秘密の箱庭でxxx生活

かなめのめ

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記憶にない

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子供の頃、夏祭りに家族と出かけた時…俺は迷子になった。

怖くて寂しくて泣いていた時、誰かが声を掛けてくれた。
その人の手を握り、俺は何処かに連れて行かれた。

あれは何処だっただろうか、それと…彼はいったい。

目を覚ますと、目の前に映るのは天蓋だった。
俺の家にこんなものはない、なにが起きたか考える。

ヤバい、夢であってほしい事ばかり思い出してしまう。

横を見ると、しゃがんで俺をジッと見つめている男がいた。
びっくりしてベッドから転がり落ちると、男はベッドに座っていた。

黒髪ウルフヘアーの男は俺を見て鼻で笑っていた。

「情けないな、そんなお化けを見たみたいに」

「だ、だって…」

「まぁいいや、俺に会いに帰ってきたんだろ?」

笑みを浮かべた男は俺に手を差し伸ばしていた。
この人とも知り合いなのか、全く思い出せない。

知らないのに嘘を付くわけにもいかない、ちゃんと分からない事を伝えよう。

差し伸ばされた手を握りしめて「ごめん、覚えてない…です」と言った。
ウルフヘアーの男は目を見開いたと思ったら、すぐに表情がなくなった。

俺の手を振り払い、立ち上がった。

行き場のなくなったヒリヒリ痛む手は握りしめるしか出来なかった。

さっきとは明らかに違い、雰囲気が冷たくなった。

「レイは覚えていて、俺は忘れたと」

「えっ…いや、レイも…」

「あーそうかよ、お前にとって俺は思い出すほどでもない記憶だよな」

レイの名前を覚えていたのはゲームをやっていたからだ。
当然彼の名前も知っている、誰を覚えていて誰を忘れたというわけではない。

でも、実際に会ったかと聞かれると何処か思い出せない。

怒っているというより、拗ねているように感じた。

何処で会ったかはまだ分からないが、男の手を掴んだ。
煩わしそうに睨みつけられて、手を引っ込めそうになるのを耐えた。

今知っている事だけでも伝えたい、彼が知る思い出は分からないが俺は俺の思い出がある。

「ディルス」

「…っ、お前」

「おや、目が覚めたんだな」

タイミングよく部屋のドアが開き、レイがやって来た。

レイはディルスが見えていないのか、俺の近くに来て身体を起こしてくれた。
さっきはあまり気付かなかったけど、ズキッと腰が痛い。

そしてレイの顔を見ると思い出してしまう。
顔が赤くなり、目を逸らすと楽しそうな声が聞こえた。
俺が恥ずかしがっているのはそんなに楽しいのか?

ゲームでもちょっとSっ気があったが、まさかここでもそれが見えるとは思わなかった。

もしかして、ヒロインをストーカーしたからお仕置きであんな事をされたのか!?

……俺、今の段階だとヒロインと無関係なんだけどな。

「ありがとう」

「構わないよ、その痛みは俺のせいだから…無茶をさせた、薬を塗らせてくれ」

「薬っ!?」

怪しいものに敏感になり首を横に思いっきり振った。
また変な薬かもしれない!あんな事はもう嫌だ。

レイは全力で拒絶する俺にクスクスと笑っていた。

「ただの塗り薬だよ、人間の副作用はない」と言われた。

怪しいが、レイはシャンプーの時も嘘は付いていない。
痛みが和らぐなら仕方ないか、とレイが持っている丸い入れ物に手を伸ばした。

その手は入れ物に触れる事なく、レイに届かない位置まで腕を上に伸ばされた。
あれ?今度はそういう意地悪をするのかよ。

「俺に持って来たものじゃないのか?」

「一人じゃ塗りづらいだろ、俺がやるよ」

「いや、一人で大丈夫」

「……本当に?」

レイは俺を見つめてだんだん近付いてくる。
俺が止める前に唇にレイの柔らかい唇が重なった。

舌を撫でられて、軽く吸われると身体の熱を思い出した。

俺を引き寄せるために腰に触れられているが、それ以外には触れていない。

それなのに俺はキスの一つで軽くイってしまった。
下半身が気持ち悪い、着ているバスローブの中が直接俺のに擦れて敏感に反応する。

レイは俺にだけ聞こえる声で「覚えちゃった?」と甘く囁かれた。

腰に触れていた手は太ももを撫でて、バスローブを捲り上げていく。

「俺を無視してんじゃねぇぞ!」とレイの手から薬の入れ物を奪ったディルスは、俺達を睨みつけていた。
ずっと視界に映っていたから忘れはしていないが、キスをされた一瞬だけ忘れていた。

レイは見えていなかったのか、ディルスを見て「おや、いたのか」と言っていた。
その一言でディルスの頭に血が上り、レイの肩を掴んだ。

さすがに殴り合いはダメだと、レイとディルスの間に無理矢理入った。
レイはなんでディルスが怒っているのか、状況を理解していなかった。

ディルスに「とりあえずそこに座ろう」とベッドに座らせる。
まだレイを睨みつけているが、掴みかかる事はなかった。

レイはディルスに「薬を返してくれ」と言ったが無視をされている。

レイに無視された事もあるが、俺が覚えていない怒りの方が強そうだ。

「ディルス、さん」

「なんで他人行儀なんだよ…敬語とその呼び名は二度とすんなよ」

「ご、ごめん」

「やっぱり覚えてないんだろ、俺の事…」

「実は名前以外覚えていないんだ、レイの事も」

「そうだったのか?」

レイは特にショックを受けているわけではなく、純粋に驚いていた。

俺が知っているのはゲームだ、彼らの知る思い出ではない。

ディルスは俺の方をジッと見つめて「本当か?」と聞いてきた。
その声と表情は怒っているようには見えなかった。

名前を知っている理由も、彼らが望んだ事ではない。
でも、知っている事は本当だし…説明が難しい。

急にゲームのキャラクターなんて言われて、そう簡単に受け入れられるのか?
まだ、出会って間もないから混乱させるわけにはいかない。

言った事は本当だから頷くと、ディルスは薬の入れ物を指で弄っていた。

「そろそろ薬を塗らないといけないから、返してくれないか?」

「あ?嫌だよ」

「ユウの事を想うなら治療が必要だ」

「お前が無茶させただけだろ」

ディルスの言葉にレイは何も言えなくなった。

「俺がやる」とディルスは言って、俺の腕を引っ張った。
やるって、もしかしてディルスが薬を塗るって事か?
レイなら見られたから治療のためなら恥ずかしいけど、多少は抵抗が薄い。

しかしディルスには初めて見られるから、正直嫌だ。

レイが俺の名前を呼んだから振り返ると、肩に担がれる。

そのままレイの声を無視したディルスは部屋から出た。
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