探偵注文所

八雲 銀次郎

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ファイルⅢ:行方不明調査

#6

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 「リュー…。あんたもお人よしだよね…。」
 集中治療室の窓越しに、眠っている彼に、そう声をかけた。
 勿論、返事があるわけではないが、彼をじっと見つめた。もう、ウチのメンバーは誰一人と残っていない。無理もない。時刻もう二十時を回っている。面会時間はもう過ぎている。
 「私が敵、取るよ…。」
 そう言い残し、病院を出た。自分の車に近付いた時、見慣れた人影が見えた。
 長身で長い黒髪。モデル体型の女性だ。彼女は、私の車に背中を預け、しゃがんでいた。どうやら、スマホをいじっているらしい。
 「クマちゃんは帰らなかったんだ。」
 そう声をかけた。少々驚いたらしく、危うく、スマホを落としかけた。
 「アマキちゃん一人だと大変だろうから、加勢しに来ました。」
 「今回は危険かもしれないよ。」
 
 翌日、本格的に捜査に乗り出したのは、警察も同じだった。工藤刑事は謹慎も解けていなければ、課も違う。本来なら捜査をすることは不可能なのだが、前園警部の異例の推薦ということもあり、一時的ではあるが、捜査に加わることになった。
 「悪いね。謹慎中だっていうのに、来てもらって。」
 捜査会議が終わった直後、前園警部に声を掛けられた。彼は、工藤刑事の学生の時からの先輩で、昨年、晴れて警部に昇進した。
 「これは、警部殿。お誘い頂き、光栄であります。」
 「堅苦しいのは嫌いだって、言っただろ…。それより、今回はホームズの人たちと、連携が取れるようにと、君を入れた事になっている。あまり、でしゃばるんじゃないぞ。」
 「わかってますよ。しかし、あの日下部さんが、あそこまでやられる相手ですからね…。」
 「それを調べるのが、俺たちの仕事だろ。やる前から、怖気づくんじゃないぞ。」
 そう言って、会議室を出て行った。

 捜査に加わったとは言え、工藤刑事の行く場所は二か所しかなかった。さらに、一方は病院。彼らが目を覚まさないとなると、自然と行く場所は決まった。
 扉を少しだけ開け、中を伺った。昨日までと変わった様子はない。
ただ、少しばかり、落ち着きがないのは、彼らの行動からして分かった。
 とても話を聞けるような状況じゃないと判断し、扉を閉めた。
 「入らないの?」
 「わっ!」
 突然背後から声を掛けられ、工藤刑事の声が裏返った。声の主は、柏木さんだった。右手には、コンビニ袋をぶら下げている。
 工藤刑事は、事のあらましを説明した。
 「なるほど…。じゃぁ、前はあたしが協力してもらったから、今回はあたしが協力してあげる。」
 そういうと、扉を押し退けるように、開けた。一気に中に居た人たちの視線が集まる。それを気にもせず、ズカズカと柏木さんは歩いていく。カウンター前に持っていたコンビニ袋を置いた。
 「ミヤマさん、二人とも返して貰うよ。」
 「今は安静にしていた方が…。」
 心配そうな顔をしたリンさんが、声を上げた。
 「分かってます。でも、リュー君がやられてます。私はこの前も、その前も、何回も助けられました。今度は私たちが助けてあげる番だと思います。だから、私の班員を返してください。」
 柏木さんが深々と頭を下げた。その場がシンとした。リンさんはまだ心配そうな顔でこちらを見ていた。しばらくすると、ミヤマさんが深いため息つき、口を開いた。
 「どうして、こうも、我儘な娘に育ったんでしょうね…。どうせ止めても聞かないんだ。許可します。」
 「ありがとうござい…。」
 「その代わり、少しでも危ないと判断した場合、すぐさま撤退してください。」
 釘を刺す様に、宮間さんが付け足した。彼も彼なりに、心配なのだろう。この短期間で、メンバー合計四人が仕事上で怪我を負い、さらに、一人はかなり危険な状態だ。当然この様な仕事をしていれば、命と隣合わせというのは、覚悟しているはず。
 しかし、いざ実感してみると、そうはいかない。リンさんの不安そうな顔も、柏木さんの律儀な性格も、宮間さんの判断も、人一倍、他人の痛みや気持ちを知っている、彼らだから、そう言い合えるのだろう。
 「了解です。リンさん、全員あたしの家に呼んで。」
 リンさんも、深く頷く。
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