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13章:香織と少年の交換日記
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「でしたら、今日、賢太君が、どうして、貴女ここに連れてきたか、分かりますか?」
私は、更に、杏沙さんに問いただした。
「それは、あの子の思い付きとかじゃないでしょうか…。あの子、いつも思い付きで、行動する癖があるので…。」
「本当に、そうでしょうか…。」
私は、休憩室のテーブルの上から、一冊のノートを、持ち出し、杏沙さんに渡した。
「賢太君と、私が交わしている、交換日記です。といっても、その日あったことを、簡単にまとめているだけですが。」
「あの子が、日記を?」
少し驚いたように、訊ね返してきた。
「えぇ、私が、勧めました。さすれば、彼も、ここに来る口実ができますし、彼の、宿題の、糧になればと、思いまして。まぁ、彼がここに、通い始めて、まだ1週間ほど分ではありますが……。」
古川マスターが、答えた。
「とにかく、一ページ目から、読んでみな?僕も、時々読んでいるけど、なかなか、興味深いよ。」
8月18日 晴れ 賢太
今日、コーヒー屋さんによった。
店員の、お姉さんと、日記をすることになった。母さんが好きな、まっ茶をじゅんびしてくれることになった。
お姉ちゃん、むり言ってごめんなさい。
8月20日 晴れ 賢太
昨日は、かおりさんの友だちの寧々さんと、駅の周辺を、たんけんした。
母さんが、よりそうなコーヒー屋がたくさんあった。
8月22日 曇り 賢太
今日、まっ茶がとどいたらしい。明日、母さん喜んでくるかな…
「一言目、二言目には、“母さん”。杏沙さんが、賢太君を、想っているように、賢太君も、杏沙さんのことを、常に心配しているんですよ…。私には、それが羨ましくてなりません。」
私は、右の袖を、捲り上げた。それを見て、杏沙さんは、息を詰まらせていた。
「先ほど、申し上げた通り、私は親の愛情なんて知りません。知っているのは、非情だけです。
なので、私の勝手な理想なのかもしれませんが、家族というのは、心配し合うのが、常だと思っています。賢太君は、杏沙さんが思っている以上に、“今”のあなたを、気にかけています。母親がどうやったら、喜ぶかとか、どうやったら、元気になるかとか…。
偶には、それに甘えてみるのも、悪くないと思います。」
杏沙さんは、無言で俯いた。
「香織ちゃんの言う通り。偶には、羽目外して、自分の子と、向き合ってみなさい。」
今井さんが、杏沙さんの背中を、摩った。それに答える様に、何度か頷いた。
「話は変わるけど、あたしの下で働かない?せっかく、才能があるのに、このままじゃ、本当に損だよ?」
私は、更に、杏沙さんに問いただした。
「それは、あの子の思い付きとかじゃないでしょうか…。あの子、いつも思い付きで、行動する癖があるので…。」
「本当に、そうでしょうか…。」
私は、休憩室のテーブルの上から、一冊のノートを、持ち出し、杏沙さんに渡した。
「賢太君と、私が交わしている、交換日記です。といっても、その日あったことを、簡単にまとめているだけですが。」
「あの子が、日記を?」
少し驚いたように、訊ね返してきた。
「えぇ、私が、勧めました。さすれば、彼も、ここに来る口実ができますし、彼の、宿題の、糧になればと、思いまして。まぁ、彼がここに、通い始めて、まだ1週間ほど分ではありますが……。」
古川マスターが、答えた。
「とにかく、一ページ目から、読んでみな?僕も、時々読んでいるけど、なかなか、興味深いよ。」
8月18日 晴れ 賢太
今日、コーヒー屋さんによった。
店員の、お姉さんと、日記をすることになった。母さんが好きな、まっ茶をじゅんびしてくれることになった。
お姉ちゃん、むり言ってごめんなさい。
8月20日 晴れ 賢太
昨日は、かおりさんの友だちの寧々さんと、駅の周辺を、たんけんした。
母さんが、よりそうなコーヒー屋がたくさんあった。
8月22日 曇り 賢太
今日、まっ茶がとどいたらしい。明日、母さん喜んでくるかな…
「一言目、二言目には、“母さん”。杏沙さんが、賢太君を、想っているように、賢太君も、杏沙さんのことを、常に心配しているんですよ…。私には、それが羨ましくてなりません。」
私は、右の袖を、捲り上げた。それを見て、杏沙さんは、息を詰まらせていた。
「先ほど、申し上げた通り、私は親の愛情なんて知りません。知っているのは、非情だけです。
なので、私の勝手な理想なのかもしれませんが、家族というのは、心配し合うのが、常だと思っています。賢太君は、杏沙さんが思っている以上に、“今”のあなたを、気にかけています。母親がどうやったら、喜ぶかとか、どうやったら、元気になるかとか…。
偶には、それに甘えてみるのも、悪くないと思います。」
杏沙さんは、無言で俯いた。
「香織ちゃんの言う通り。偶には、羽目外して、自分の子と、向き合ってみなさい。」
今井さんが、杏沙さんの背中を、摩った。それに答える様に、何度か頷いた。
「話は変わるけど、あたしの下で働かない?せっかく、才能があるのに、このままじゃ、本当に損だよ?」
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