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2章
鎮圧
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店を裏口から出るとそこは、いつもと同じガランとした路地裏だった。
あいつらは、店を周りしらみ潰しに獣人種を追い出している筈だ。
そうなると、この路地裏にもいる可能性がある、一応ルーにはフードを被ってもらっているが何処でバレるか分からない。
路地裏は静かだが、大通りの方はかなり離れているというのに、演説を聞いた者たちの多さを示すかのように歓声が聞こえてくる。
「そういえば...特維って確か普段だと政治家の演説の時本部で暇してる奴らが警備に送られるんだっけ?」
私も1年周期で2ヶ月間、冒険省に泊まり込みで何かあった時の為に待機しているのだけれども、1回だけ。演説の警備員に駆り出されたことがある。
多少リスキーだが、ここから大通りを使っても商業区から最短でも2時間かかる中枢区まで路地裏を使って行くより、いいだろう。
どっちにしろ、壁を超えるのに大通りを通るのだから。
「一か八か、特維の誰かがいることを願って、行こうかしら...」
ピリピリとした空気感を纏うニールはいつも近くにいたルーですら、話しかけがたい状況になっている。
人気のある場所をひたすら避けて、大通りへ向かう。
迷路のような路地を更に、複雑に進んだおかげか、いつもの何倍もの時間がかかったが、人ひとり会わずに、大通りに出ることが出来た。
しかし、問題はここからだった。
大通りを埋め尽くすかのような人、人、人。
見渡す限り、人に覆い尽くされたその場所は、普段とは全く違う、痛いぐらい緊張した空気が張り詰めていた。
反獣人派の人間と獣人種の者たち、恐らくだが中には職を下ろされた者たちやその危機に晒されている者たちだろう。
まさに、一触即発のこの場所は、いつ何がきっかけで暴動が起こるかわからない。
回り込もうにも、かなりの距離を戻らなければならない。
しかも、反獣人派の人間のウロウロしている裏道をだ。
「突っ込んで巻き込まれるか、戻って絡まれるか....戻ってもいいのだけど、絡まれて、ハッ倒したところで、逮捕でんでんとかあるからやりたくないのよね....」
「マス...ター...」
すると、ルーが服の袖を引っ張てきた、振り返ると空を指さすルーが居た。
よくよく見てみると、なにかのお祭りやパレードで旗を吊るす為のロープがあった。
「ねぇ、ルー...」
「?」
ルーは首を傾げる。
「まさかとは思うけど、あれを渡れってこと?」
ここから反対の建物までの距離は、25m程で道の真ん中に、このロープを支えるポールが1本立っている。
「ん...」
コクリと頷くルーは、どこか誇らしげだった。
「....いいじゃない、上等じゃない、やってやろうじゃない!」
すると、ルーは軽々と家の壁にある窓の突起を使い登って言った。
私もルーほどでは無いが、同じように登った。
地上から10mは離れているだろうか?普通なら、足がすくむような場所だが、四の五の言っている場合でもない。
ルーは普通に歩くかの様に、2本並んだロープを足場に渡っていく。
「流石は猫だ...」
ニールは、恐る恐るロープに足をかける、ミシミシと軋むような音がロープから鳴り、今にも千切れてしまうのではないかという、恐怖がニールの中につのる。
覚悟を決めて、両足をロープに乗せて1歩2歩と歩み出す。
「な、なんだ...簡単じゃない....」
震えた声で、自分に言い聞かせるようにして、恐怖を押し殺しまた1歩2歩と進んでいく。
そして中間地点のポールの上に来ることが出来た。
「あ、あははは...やっと中間地点ね...」
ここで息を整え、もう半分を渡ろうとロープに足をかけた....その瞬間突風が吹き付ける。
風圧で体制が崩れる。
「わっ!キャッ!」
ロープから足がズルッっと滑り、落下するが何とかロープをつかむことができ、地面に叩きつけられることは無かった。
しかし、1度滑り落ちたらロープに乗るのはいくら身体能力が高くても、困難である。
そのため、私はのもう半分のロープを手を使って渡った。
「いろんな意味で死んだかと思った...」
落ちたら、注目の的になり精神的にも下手したら物理的にも死ぬ可能性があった。
「マ..スター?大丈...夫?」
「ええ、大丈夫よ大丈夫....」
正直特維であろう者が、この程度で膝を震えさせるなんてみっともないことだが。
私は、高くて細い道はほんっっっとに苦手だ。
私はルーの手を借り、立ち上がると屋根から飛び降りる。
こういうのは大丈夫だけれども、ああ言う綱渡りみたいなやつは本当に無理。
現場の指揮をする人間が居るとすれば、演説している本人の近くにだいたい本部が置かれるはず。
私はそう思い、演説してる政治家のいる場所に走った。
「獣人種は、魔族の血を多く引く!だからあの様な獣という穢れた動物の姿をしているのだ!それを我々はすぐ近くにまで.....」
路地裏から演説台の上で大声でそう主張する彼はまるで水を浴びたかの様に汗で濡れて居た。
「獣人種に対してあまり知識が無い、あるいは良いイメージを持っていない人々に対して魔族と言う悪のイメージの強い物を持ち出して、共通の敵にするとはね....」
「よォ嬢、なんか困り事か?」
話しかけてきたのは、デーンであった。
大きな盾を持ち、それには大小様々な種類の傷があり歴戦の戦士である事がわかる。
「ねぇ、デーンちょっとこんな状況で言うのもなんだけどね。この子をね....冒険省まで送ってくれるかしら?」
そう言い、私はルーを引き寄せデーンに見せる。
「確かにな....わかった信頼出来る部下に送るように伝えておく、それまで本部に居させておけ。
おい!テレハスを呼んでくれ!それと本部には誰一人として近寄らせるな!異論は認めない!」
「ありがとうデーン、今度1杯奢るわ」
「はっはっ、楽しみにしてるぜ。それとな、俺の長年の感が囁いているんだが....そろそろ暴動が起きそうなんだ。もしもの話だ、お前が良ければ....鎮圧に協力してくれないか?もちろん特別手当は出す。」
「もちろんやらせてもらうわ、と言うよりと私も特維なんだからやって当然じゃない?」
「そうだったな!お前は俺と一緒に獣人種達を抑え込むぞ、人間の相手は適当な奴らにやらせておけばいい。」
「私達2人で?」
「いや、そんなことはねぇぞ?騎士団訓練生を連れてきてある。いい訓練になるだろ?」
「ひよっこ達がやりすぎて死人を出さない様にね」
「そこは大丈夫だ、死人を出したらどうなるかは前もって脅してある。」
「言い聞かせるじゃなくて、脅したのね....」
デーンは彼らを、脅したと言うと透明な分厚い板で作られた盾と、ガスマスク、硬い木の棒で作られた警棒を渡してきた。
すると、一角で殴り合いが始まり瞬く間に全体に広がって言った。
「奴さん達、遂に始めやがったか...」
するデーンは懐から、レバーの付いた2つ缶を取り出した。
それは、1つが赤いラインが塗ってあり、もう一方は青いラインが塗られた缶だった。
「それと...この黒い顔に被るやつは...?」
「あの変態の作品のひとつだ、暴徒鎮圧用にって大量に持たされた。
確か、あいつが言うにはピンを抜いて3秒以内に投げる....」
赤い帯と青い帯の缶のピンを抜くとレバーがキンッっと音と共に飛ぶ
デーンはそれを、人々の中に投げ込んだ。
すると何かが弾けるような音が連続で響いいた。
そして時間差で、青い帯の缶から煙が出てくる。
それを吸った人々は目を抑え蹲ったり咳き込んだり、一瞬でカオスな空間が広がった。
「全隊!取り抑えろ!!」
そこからは、警棒で抵抗する人を殴る殴る。
こうでもしなければ、興奮した人達を取り押さえることは出来ない。
それに、相手は獣人種だあっちは何時でも私達を殺せるが、こっちは殺してはいけ。ない
それはもう、頭を死なない程度に全力で殴る。
そこに訓練生達が、追加で青いラインの入った缶を投げる。
気絶した者をその場に放置し次の暴徒に殴りかかる。
これの繰り返しだった。
あいつらは、店を周りしらみ潰しに獣人種を追い出している筈だ。
そうなると、この路地裏にもいる可能性がある、一応ルーにはフードを被ってもらっているが何処でバレるか分からない。
路地裏は静かだが、大通りの方はかなり離れているというのに、演説を聞いた者たちの多さを示すかのように歓声が聞こえてくる。
「そういえば...特維って確か普段だと政治家の演説の時本部で暇してる奴らが警備に送られるんだっけ?」
私も1年周期で2ヶ月間、冒険省に泊まり込みで何かあった時の為に待機しているのだけれども、1回だけ。演説の警備員に駆り出されたことがある。
多少リスキーだが、ここから大通りを使っても商業区から最短でも2時間かかる中枢区まで路地裏を使って行くより、いいだろう。
どっちにしろ、壁を超えるのに大通りを通るのだから。
「一か八か、特維の誰かがいることを願って、行こうかしら...」
ピリピリとした空気感を纏うニールはいつも近くにいたルーですら、話しかけがたい状況になっている。
人気のある場所をひたすら避けて、大通りへ向かう。
迷路のような路地を更に、複雑に進んだおかげか、いつもの何倍もの時間がかかったが、人ひとり会わずに、大通りに出ることが出来た。
しかし、問題はここからだった。
大通りを埋め尽くすかのような人、人、人。
見渡す限り、人に覆い尽くされたその場所は、普段とは全く違う、痛いぐらい緊張した空気が張り詰めていた。
反獣人派の人間と獣人種の者たち、恐らくだが中には職を下ろされた者たちやその危機に晒されている者たちだろう。
まさに、一触即発のこの場所は、いつ何がきっかけで暴動が起こるかわからない。
回り込もうにも、かなりの距離を戻らなければならない。
しかも、反獣人派の人間のウロウロしている裏道をだ。
「突っ込んで巻き込まれるか、戻って絡まれるか....戻ってもいいのだけど、絡まれて、ハッ倒したところで、逮捕でんでんとかあるからやりたくないのよね....」
「マス...ター...」
すると、ルーが服の袖を引っ張てきた、振り返ると空を指さすルーが居た。
よくよく見てみると、なにかのお祭りやパレードで旗を吊るす為のロープがあった。
「ねぇ、ルー...」
「?」
ルーは首を傾げる。
「まさかとは思うけど、あれを渡れってこと?」
ここから反対の建物までの距離は、25m程で道の真ん中に、このロープを支えるポールが1本立っている。
「ん...」
コクリと頷くルーは、どこか誇らしげだった。
「....いいじゃない、上等じゃない、やってやろうじゃない!」
すると、ルーは軽々と家の壁にある窓の突起を使い登って言った。
私もルーほどでは無いが、同じように登った。
地上から10mは離れているだろうか?普通なら、足がすくむような場所だが、四の五の言っている場合でもない。
ルーは普通に歩くかの様に、2本並んだロープを足場に渡っていく。
「流石は猫だ...」
ニールは、恐る恐るロープに足をかける、ミシミシと軋むような音がロープから鳴り、今にも千切れてしまうのではないかという、恐怖がニールの中につのる。
覚悟を決めて、両足をロープに乗せて1歩2歩と歩み出す。
「な、なんだ...簡単じゃない....」
震えた声で、自分に言い聞かせるようにして、恐怖を押し殺しまた1歩2歩と進んでいく。
そして中間地点のポールの上に来ることが出来た。
「あ、あははは...やっと中間地点ね...」
ここで息を整え、もう半分を渡ろうとロープに足をかけた....その瞬間突風が吹き付ける。
風圧で体制が崩れる。
「わっ!キャッ!」
ロープから足がズルッっと滑り、落下するが何とかロープをつかむことができ、地面に叩きつけられることは無かった。
しかし、1度滑り落ちたらロープに乗るのはいくら身体能力が高くても、困難である。
そのため、私はのもう半分のロープを手を使って渡った。
「いろんな意味で死んだかと思った...」
落ちたら、注目の的になり精神的にも下手したら物理的にも死ぬ可能性があった。
「マ..スター?大丈...夫?」
「ええ、大丈夫よ大丈夫....」
正直特維であろう者が、この程度で膝を震えさせるなんてみっともないことだが。
私は、高くて細い道はほんっっっとに苦手だ。
私はルーの手を借り、立ち上がると屋根から飛び降りる。
こういうのは大丈夫だけれども、ああ言う綱渡りみたいなやつは本当に無理。
現場の指揮をする人間が居るとすれば、演説している本人の近くにだいたい本部が置かれるはず。
私はそう思い、演説してる政治家のいる場所に走った。
「獣人種は、魔族の血を多く引く!だからあの様な獣という穢れた動物の姿をしているのだ!それを我々はすぐ近くにまで.....」
路地裏から演説台の上で大声でそう主張する彼はまるで水を浴びたかの様に汗で濡れて居た。
「獣人種に対してあまり知識が無い、あるいは良いイメージを持っていない人々に対して魔族と言う悪のイメージの強い物を持ち出して、共通の敵にするとはね....」
「よォ嬢、なんか困り事か?」
話しかけてきたのは、デーンであった。
大きな盾を持ち、それには大小様々な種類の傷があり歴戦の戦士である事がわかる。
「ねぇ、デーンちょっとこんな状況で言うのもなんだけどね。この子をね....冒険省まで送ってくれるかしら?」
そう言い、私はルーを引き寄せデーンに見せる。
「確かにな....わかった信頼出来る部下に送るように伝えておく、それまで本部に居させておけ。
おい!テレハスを呼んでくれ!それと本部には誰一人として近寄らせるな!異論は認めない!」
「ありがとうデーン、今度1杯奢るわ」
「はっはっ、楽しみにしてるぜ。それとな、俺の長年の感が囁いているんだが....そろそろ暴動が起きそうなんだ。もしもの話だ、お前が良ければ....鎮圧に協力してくれないか?もちろん特別手当は出す。」
「もちろんやらせてもらうわ、と言うよりと私も特維なんだからやって当然じゃない?」
「そうだったな!お前は俺と一緒に獣人種達を抑え込むぞ、人間の相手は適当な奴らにやらせておけばいい。」
「私達2人で?」
「いや、そんなことはねぇぞ?騎士団訓練生を連れてきてある。いい訓練になるだろ?」
「ひよっこ達がやりすぎて死人を出さない様にね」
「そこは大丈夫だ、死人を出したらどうなるかは前もって脅してある。」
「言い聞かせるじゃなくて、脅したのね....」
デーンは彼らを、脅したと言うと透明な分厚い板で作られた盾と、ガスマスク、硬い木の棒で作られた警棒を渡してきた。
すると、一角で殴り合いが始まり瞬く間に全体に広がって言った。
「奴さん達、遂に始めやがったか...」
するデーンは懐から、レバーの付いた2つ缶を取り出した。
それは、1つが赤いラインが塗ってあり、もう一方は青いラインが塗られた缶だった。
「それと...この黒い顔に被るやつは...?」
「あの変態の作品のひとつだ、暴徒鎮圧用にって大量に持たされた。
確か、あいつが言うにはピンを抜いて3秒以内に投げる....」
赤い帯と青い帯の缶のピンを抜くとレバーがキンッっと音と共に飛ぶ
デーンはそれを、人々の中に投げ込んだ。
すると何かが弾けるような音が連続で響いいた。
そして時間差で、青い帯の缶から煙が出てくる。
それを吸った人々は目を抑え蹲ったり咳き込んだり、一瞬でカオスな空間が広がった。
「全隊!取り抑えろ!!」
そこからは、警棒で抵抗する人を殴る殴る。
こうでもしなければ、興奮した人達を取り押さえることは出来ない。
それに、相手は獣人種だあっちは何時でも私達を殺せるが、こっちは殺してはいけ。ない
それはもう、頭を死なない程度に全力で殴る。
そこに訓練生達が、追加で青いラインの入った缶を投げる。
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これの繰り返しだった。
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