真魚の兄弟

茄子むらさき

文字の大きさ
1 / 1

異常事態

しおりを挟む
「おい、じーさん!そろそろ起きねぇと法要遅れるぞ!」


週末。

山奥にあるこの小さな法楽寺の僧房に、宇津島恵士郎うつしまけいしろうの威勢のいい声が響き渡る。

「おい!起きろってば!」

恵士郎は、揺さぶっても一向に起きる様子のない老僧の頬をひっぱ叩く。

と、同時にうっと呻き声を上げてうっすらと目を開けたのは、祖父でここの住職である宇津島恵比蔵うつしまえびぞうだ。

齢80を超えるというのに、がっちりとした体格と皺の少ない顔のせいでそうは見えない。


「恵士郎、そんな大きな声でびっくりさせたら、じーちゃん心臓発作で死んじゃうよ」

僧侶をひっぱたくなど、罰当たりな弟をたしなめるのは双子の兄であるだ。「じーちゃん、おはよう。もう8時だから急がないと」と優しく声を掛ける。


「むう…もうそんな時間かい」

「だいたい坊さんのくせして寝すぎなんだよ。ちゃんとお勤めしろよ」

「いやはや、もう年だわな、わしも」

恵比蔵は恵士郎にぶたれた左頬を撫でながら苦笑いする。

「じーちゃん、朝ごはん食べてく?」
緋色の袈裟と頭陀袋ずだぶくろを取り出しながら恵が言う。

その後ろで恵士郎が「兄貴はじーさん甘やかしすぎなんだよ」と小声で言う。

「うんにゃ、腹減っとらんしええわ。ほうじゃ、恵、恵士郎、今日は寄り道せんで帰って来いよの」

「どうして?」
「なんでだよ」

同時に兄弟が聞き返す。


「なんでって―今日はお前たちの大事な日じゃろ」


恵比蔵に言われ、二人は顔を見合わせる。



「今日は誕生日か」



―誕生日。

まだ若い兄弟にとってその日中胸が高鳴る響きであるが、近頃やや反抗期に突入しつつある彼らはなんとなく素直に喜ぶことができなかった。

「別に誕生日だからってなんだよ…」
恵士郎がぼやく。

「大事な日じゃからの。学校終わったらさっさと帰ってこいよの」
そんな恵士郎の頭を雑に恵比蔵はわしわしと撫でた。

「あーっ!やめろ!…ったく、わかったよ!じーさんも法要遅れんなよ。兄貴、俺達も行くぞ!」
「じゃあ行ってきます、じーちゃん」
恵士郎と恵は部屋を飛び出した。そしてその後ろ姿を恵比蔵は目を細めて見つめる。


「…15年間というのはあっという間やったのう」

老僧の瞳の奥には強い光が宿っていた。




―聞いた話によると、恵と恵士郎には上にもう2人の兄がいて、父と母との6人家族であったそうだ。
しかし、母親は2人を出産してすぐに死に、父親と2人の兄は1年後の交通事故で後を追うように死んでいった。
そのため2人は両親と兄達の顔を知らず、2人にとって「家族」とはお互いと祖父の存在のみを指し、彼ら3人の会話の中では、既にこの世から去った肉親と兄弟のことなど触れることは一切なかった。
それは別に敢えて避けているわけではなく、もともと「存在しない」という事実が2人にとって「通常」のことであったからだ。

生まれた時から今の法楽時で仏門に入れなどと強要されることなく、恵比蔵と周りの僧侶たちにのびのびと育てられた。恵比蔵はそこそこ大きな寺の住職であるというのに、2人にとってはいつも優しい祖父で、父親かつ母親でもあり、そして2人は祖父のことが今も大好きだ。




「え、学級閉鎖?」
恵が教室の座席につくなり、奇妙な話を持ち掛けてきたのはクラスメイトの高瀬俊だ。

「そう。4組でインフルエンザ20人だって。おかしくね?」

インフルエンザで学級閉鎖なのは、日本全国毎年どこかで遭っているニュースでおかしくはない。しかし今はおかしい。

「…今7月だよね?」
「変だろー?毎年A型だとか熱があんまり出ない型とかいろんなヤツが出てんじゃん?だから今年は初夏に流行るヤツなのかって皆言ってる」
「ふーん…うちはまだいないよね?」
「いない。けど、既に5組でちらほら出だしてる」
「5組で?」

5組は恵士郎のいるクラスだ。

「片割れは大丈夫そうか?」
5組と聞いて少し顔色を変えた恵に、冗談っぽく俊が聞く。
「今朝は普通だったよ。まぁ恵士郎は身体が丈夫なのと鈍感なのが取り柄だからね…」
そう答えて恵は苦笑する。
「そうか。けど、インフルエンザだからよ。すぐ皆復活するだろ」
「そうだね…」

インフルエンザの集団感染はいつから始まっていたのだろう。普通、少しずつ広がっていくはずなのに。少しでも感染拡大の恐れがあれば、受験生であるこの学年にそれぞれ通達があるはずだ。それが今回何もなかったことに、恵は何となく違和感を覚える。

しかし、その疑念は教室に入ってきた先生が期末試験の範囲を話し始めた事ですぐ頭の隅に追いやられてしまった。



受験生にとって、今は集団感染によって閉鎖したクラスよりも、テスト範囲と我が身が1番大切なのだ。




放課後になり、さっさと教科書を鞄に詰め込んで教室を出ようとする恵を俊が呼び止めた。
「この後マック行かね?」
新作のデザートが食べたいのだと、スマホの広告を恵に見せる。女子が好きそうなポップなデザインの広告が目に映る。

「ごめん、今日は早く帰って来るように言われててさ」
「えーなんだよぉ。あの和尚おしょうさんにか?」
「うん。恵士郎も早く連れて帰らないと」
「相変わらず仲いいなーお前ら。法要でもあんのかよ?」

「法要じゃないけど…」
そう言い掛けた恵ははたと目を見張る。俊の右肩にうっすらともやのようなものが見えたからだ。

「どうした?」

恵の視線の変化を感じて俊が聞く。すると靄はすぐに消えた。―気のせいか?



「いや、ごめん。今日さ俺ら誕生日なんだよ」
「え、お前それ早く言えよー!」
「ごめん、ごめん。今度そのマック奢ってね」
「それはいいけどよぉ。ったくなんか知らなかった自分がショックだぜ…」

うなだれる俊にくすりと笑いながら「じゃあね」と恵は教室を出る。教室を出ると恵士郎が廊下の窓にもたれかかって待っていた。今までのやり取りを見ていたようだ。

「お待たせ」
「遅せぇぞ兄貴。早く帰るぞ。じーさんが待ってる」



寺に帰ると、大広間が壮大にお祝いモードになっていた。縦長の広いテーブルを兄弟を中心に、恵比蔵を始めとする寺の僧侶たちが囲んでいる。

テーブルの上には、僧侶達が丹精を尽くした料理たちがずらりと並び、奥の方にはこの和室に合わないポップなバースデーケーキが鎮座している。

重厚な和の雰囲気であるこの広間も、まるでアメリカンホームドラマのパーティを絵に描いたような飾り付けが施してある。

しかし、これが通例で、毎年兄弟の誕生日はこんな感じだ。「坊さんがこんなことしていーのかよ」と恵士郎は毎回突っ込みを入れている。


「ほほう、こんな時期に流行り風邪か」
「流行り風邪じゃねえよ。インフルエンザだよ」
恵比寿顔の祖父に恵士郎がつっこむ。
「俺の隣のクラスは完全閉鎖して、俺んとこも今日で10人目が出た。もう学級閉鎖してもおかしくないぜ」
「恵士郎は何ともないか?」
「俺はまーったく。何にもねぇよ」
「恵も大丈夫か?」




恵比蔵にじっと見つめられ、恵は一瞬たじろぐ。昔からこの瞳に見つめられると、嘘がつけないような心の内を見透かされているような変な気持ちになるのだ。

「大丈夫だよ、じーちゃん。じーちゃんももう年だから気をつけてよね」
恵はそんな気持ちをかき消すように振る舞った。恵士郎もそんな恵の後に続く。

「そうだぜー。じじぃなんだからよ、いきなりぽっくり逝くなよ。俺たちは仏門すら入ってねぇからな、死なれてもこんな無駄にデカい寺なんか継げねぇぞ」
「寺は大丈夫じゃ。ご先祖様が守ってくれようし、この者たちもおる。いつどうなっても安泰じゃわい」
そう恵比蔵が言うと、周りの僧侶たちは穏やかにほほ笑んだ。皆、恵達が生まれた時から見守って来てくれた者達だ。




「その流行り風邪も何らかの原因のうえにあるかもしれんの」
「原因?」
恵士郎が聞き返す。
「偶然に起きることなどない、というのが仏教の教えじゃ。あらゆることに理由がある。そして起こった苦しみは終わらすことも出来る」
「まぁインフルエンザはいつか治るだろうけどよ」
「そうじゃ。始まりには必ず終わりがある」




―苦しみが起こるには必ず理由がある。そんな祖父の言葉に少し恵は引っかかるものを感じた。

今日見た、あの俊の左肩にかかっていた靄が気になった。
俊は大丈夫だろうか。何となく直感でそう思った。






恵の予感は的中した。





翌日、5組の生徒は恵士郎を含む5人を残して全員が学校を欠席した。原因はやはりインフルエンザらしい。



そして、俊もまたインフルエンザに罹患し学校を欠席したのだ。他にも俊を含めて恵士郎のいる7組は5人が同理由で欠席した。


やはりあの靄は何かあるのか―?
恵はスマホを取り出し、俊の連絡先を開きメールを作成しようとした。しかし、はたとその手を止める。


インフルエンザの潜伏期間というのは、短くても24時間だ。



まず4組で集団感染が起こった。4組の人間が5組の人間に接触したとしても…、いや教師が細菌を運んだとも考えうるが、たった1日で5組の半数以上が潜伏期間を経て罹患したというのか?
しかも、潜伏期間は最低24時間というだけで、必ずしも全員がそのタイミングで症状が出るとは限らないはずだ。


不自然だ。


「せっかく学校来たのによぉ。うちも学級閉鎖だと~。まぁこれから家に帰れるししばらく休みだからラッキーだけどな」
恵士郎というと、そんな恵の心配事はよそにとても嬉しそうにしていた。ホームルームの後、わざわざ恵に報告しに恵のクラスまでやってきたのだった。





「なんか嬉しそうだね」
「嬉しいに決まってるだろ。ま、せいぜい勉強頑張りたまえよ、兄貴」
ぽんっと恵の肩に手を置いた。
「今日はもうまっすぐ家に帰りなよ、恵士郎」

恵は何となく、そうした方がいい気がした。

「なーんでだよ。せっかく休みになったんだから、これからインフルの生き残り達と遊ぶんだよ。…ってあれ?」
恵士郎が急に訝し気な顔を見せた。
「どうしたの?」
「いや…今日確か予報では晴れだったんだけどな」
そう言い恵士郎は窓から空を見上げる。確かに登校していた今朝までは晴天が広がっていたはずだが、今は真っ黒な雲が空一面に広がっている。




「変な天気だなぁ。傘持って来てねぇけどまぁいいか」
「恵士郎」
「何?」
「今日は本当に家に帰った方がいいよ」
「だからなんでだよ」
めずらしい恵の真剣な表情に、恵士郎は少し怯む。
「理由はないけど」
「理由になってねぇよ」
「なんか今回のインフルエンザの集団感染は少しおかしいと思うんだ」
「季節外れなだけだろ」
「それだけじゃないよ」
「じゃあ他にどこがおかしいんだよ?」
「そもそもインフルエンザって―」


恵が言い掛けた瞬間、ドンッという地響きと共に建物が揺れた。と、同時にキャアと周りの女子が悲鳴を上げたのが聞こえた。そして教室や廊下の照明がパッと消える。




「地震か?!」
身構える恵士郎。しかし、揺れは続かず、ビリビリと地響きの余韻だけが足元に伝わってくる。視界は真っ暗闇だ。
「いや…地震じゃなさそうだね」
「じゃあ雷でも落ちたか…?」
「いや…雷でもない…。恵士郎…、お前…」
恵の声色が少し怯えている。
「なんだよ」
「左肩のそれは何…?!」




真っ暗闇なはずなのに、恵士郎の左肩にのっている「それ」は黒いのにはっきりと見えた。
俊にも掛かっていた靄と同じようなやつだ。だが、それは今はもう靄というより完全に形がはっきりと人型になりつつある。

「なんだよ、何もいねぇじゃんかよ!気持ちわりぃな」
―恵士郎には見えていない?
しかし、今はその事に構っている暇はない。
「いるんだよ、何か。とりあえずここは良くない気がする。外に出よう!」

恵は恵士郎の手を引き教室を飛び出た。
するとそこには廊下で同級生たちが皆、苦悶表情を浮かべうずくまっていた。それぞれが黒い靄を纏っているのがわかる。

「どういう事だよ、これ…」
「…わからない。行こう」


恵は先を急いだ。昨日から引っかかていたインフルエンザとこれは何か関係があるのだろうか…?

奇妙だ。走りながら恵は思った。何百人という生徒がいるはずのこの学校だが、通り過ぎる教室に人っ子一人いない。

皆どこへ行ったんだ…?



校舎を出るとその異様さに恵はすくみ上った。

校舎全部が黒い靄に包まれているのだ。

「お、おい…これもう夜じゃねぇかよ」
靄は恵士郎にはやはり見えていないようだ。そういえばさっきの肩にいたやつは―

我に返り、弟の肩に目をやるとそこには先程の人型の靄はもういなかった。



「これどうなってんだ…」
恵士郎が空を見上げ驚愕している。恵自身も冷静を装ってはいるが今にも腰が抜けそうだ。


瘧鬼ぎゃくきの仕業じゃよ」

背後で聞きなれた声がし2人が振り返ると、そこには数人の僧侶を引き連れた袈裟姿の恵比蔵がいた。

「じーさん!」
「じーちゃん!」
2人の声が思わず重なる。
「なんでここに?法要はどうしたんだよ?!」
「それどころではないだろう。一大事じゃ。そうじゃろ、恵?」

恵比蔵が恵を見据える。

「え…なんで恵?」
恵士郎が目を見張る。
「じーちゃんには見えてるの?」
やっとの思いで絞り出した恵の声は震えていた。
「見えとるさ。お前もやっと見えるようになったんじゃの」
ふわりと恵比蔵は微笑む。

「お、おい…見えてるとか、ぎゃくなんとかの仕業とか…ブッ飛んだ話してんじゃねぇよ…俺にもわかるように言ってくれよ!」

しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

【完結】私は、幸せ者ね

蛇姫
ファンタジー
奇病を患った少女は笑う。誰よりも幸せそうに。 ショートショートは完結ですが、恐らく短編になる同作品を執筆中です

魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。

カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。 だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、 ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。 国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。 そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します

白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。 あなたは【真実の愛】を信じますか? そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。 だって・・・そうでしょ? ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!? それだけではない。 何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!! 私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。 それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。 しかも! ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!! マジかーーーっ!!! 前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!! 思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。 世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。

魅了の対価

しがついつか
ファンタジー
家庭事情により給金の高い職場を求めて転職したリンリーは、縁あってブラウンロード伯爵家の使用人になった。 彼女は伯爵家の第二子アッシュ・ブラウンロードの侍女を任された。 ブラウンロード伯爵家では、なぜか一家のみならず屋敷で働く使用人達のすべてがアッシュのことを嫌悪していた。 アッシュと顔を合わせてすぐにリンリーも「あ、私コイツ嫌いだわ」と感じたのだが、上級使用人を目指す彼女は私情を挟まずに職務に専念することにした。 淡々と世話をしてくれるリンリーに、アッシュは次第に心を開いていった。

もしかして寝てる間にざまぁしました?

ぴぴみ
ファンタジー
令嬢アリアは気が弱く、何をされても言い返せない。 内気な性格が邪魔をして本来の能力を活かせていなかった。 しかし、ある時から状況は一変する。彼女を馬鹿にし嘲笑っていた人間が怯えたように見てくるのだ。 私、寝てる間に何かしました?

いまさら謝罪など

あかね
ファンタジー
殿下。謝罪したところでもう遅いのです。

いっとう愚かで、惨めで、哀れな末路を辿るはずだった令嬢の矜持

空月
ファンタジー
古くからの名家、貴き血を継ぐローゼンベルグ家――その末子、一人娘として生まれたカトレア・ローゼンベルグは、幼い頃からの婚約者に婚約破棄され、遠方の別荘へと療養の名目で送られた。 その道中に惨めに死ぬはずだった未来を、突然現れた『バグ』によって回避して、ただの『カトレア』として生きていく話。 ※悪役令嬢で婚約破棄物ですが、ざまぁもスッキリもありません。 ※以前投稿していた「いっとう愚かで惨めで哀れだった令嬢の果て」改稿版です。文章量が1.5倍くらいに増えています。

処理中です...