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後日談
77 私が心酔する主(グレンダ視点)
披露宴に参加する時間が迫っていたため王太女の侍女達が戻って来た。
王太女の髪を結い上げたり化粧を直したり披露宴用のドレスを着付けたりと侍女達が忙しなく動いている中、私だけはこっそり抜け出して部屋から出て行ったメアリー様を追いかけた。
「メアリー様! お待ちください!」
王太女宮の敷地内ではあるが、王太女の私室からはだいぶ離れたので声を掛けても問題ないだろう。
そう思ったのは私だけだったようで、メアリー様はそのお美しい顔に厳しい表情を浮かべた。普段の穏やかな微笑しか浮かべない彼女しか知らない人間が見れば驚くだろう。
「わたくしの私室以外では、そう呼ぶのは禁止だと言ったはずよ。さっきだって呼んだわね。幸いリズはスルーしてくれたようだけど」
「……おそらく王太女様は気づいていらっしゃると思います。それでも私を傍に置いてくださっているのでしょう」
王太女に気づかれてしまったのは私のミスだ。
たとえ心酔する主が悪し様に言われようと、王太女の侍女としては追従するか聞き流すべきだったのに反論してしまった。
メアリー様にあれだけ愛されて、それを分かっているくせに、この方を悪し様に言う王太女が許せなかったのだ。
鈍いかと思えば妙に鋭い所もある王太女は、私のその態度を不審に思ったのだろう。
今までは他の侍女よりは心を許してくれているような様子だったのに、それ以来警戒されてしまった。
それでも私を首にしないのは――。
「リズの優しさね」
メアリー様は溜息を吐いた。その御姿さえ麗しい。
仕事に失敗して戻ればメアリー様が私に何かすると思ったのだろう。
王太女のその懸念は間違ってはいない。仕事に失敗した無能な部下などメアリー様には何の価値もないのだから。さっさと粛清するだろう。
自分を裏切っている侍女など気にしなければいいと思うのだが、そうできないのが王太女の優しさなのだろう。私から見れば甘いとしか思えないが。
実際は王太女の懸念は杞憂だ。肉体であれ精神であれ、愛する娘が傷つく事をメアリー様にはできないのだから。
「それに、あの子は分かっているのよ。あなたを首にしたところで、第二、第三のあなたやケイティが送られてくるとね」
監視と護衛のためにメアリー様は自分の部下を王太女の侍女にしている。愛する娘の普段の生活を知りたいのと彼女を守るためだ。
今は遠くに追いやれた王妃のベールで顔を隠していた私を含めた侍女五人もメアリー様の部下だ。王妃を監視するために彼女の侍女になったのだ。
私達五人が顔を隠していたのは王妃の命令だ。国王陛下に見初められないように。
下働きだろうと王妃や妾妃だろうと後宮にいるのは皆、王のための女だ。
王妃や妾妃という国王の「妻」でなくても後宮にいる以上、最初に国王のお手付きになる覚悟を持って暮らせと叩き込まれるのだ。
だからこそ、後宮で働く女性は容姿も重視される。国王の目に留まる可能性があるからだ。
それが嫌で王妃は侍女となった私達五人にベールで顔を隠すように命じたが、その心配は杞憂だ。
国王陛下は男色家ではないと思うが前国王のように女好きという訳でもないと思う。
現在の国王陛下、リチャード王は、即位直後は有力貴族の令嬢達を妾妃に迎えた。それは、国王になる可能性が低かった自分が国王になってしまったために重臣達の信頼を手っ取り早く得るために彼らを外戚にするためだ。
脳筋の王妃にはそれが分からないのだろう。自分以外の女が愛する夫である国王陛下の寵を得るなど我慢できないという思いしかないのだ。
国王陛下の不興を買い遠くに追いやられた王妃には、もう大勢の侍女など必要ない。
二人はそのまま王妃の侍女として変わらず彼女を監視し、二人はメアリー様の元に戻り、私は王太女の侍女になった。王太女の監視と護衛のために。
私が王太女の侍女をしているのも彼女を命懸けで守るのも、あくまでもメアリー様の命令だからだ。
たとえ、メアリー様が産んだ彼女が愛する娘だろうと、メアリー様の命令でなければ仕えたり守ったりはしない。
ケイティは王太女を真の主と思うようになったが、私が心酔する主は、今も昔もメアリー・シーモア様だけだ。
「それで、どうして、わたくしを呼び止めたの? 披露宴の主役である王太女の侍女なら色々やる事があって忙しいはずでしょう?」
言外に「職務怠慢よ」と私を咎めるメアリー様に私は項垂れた。全くその通りだ。
真の主はメアリー様だと思っていようと、その彼女に命じられて王太女の侍女をしているのに仕事を放棄して、こっそり抜け出してきた。侍女としても諜報員としても失格だ。
それは言うなら王太女がメアリー様を悪し様に罵っても聞き流せなかった時点で、そうなのだけれど。
「……どうしても気になって」
「そんな事で職務放棄するな」とメアリー様に怒られそうだが。
「王太女様にお渡ししたアレ、何ですか? 本当に媚薬をお渡ししたわけではないでしょう?」
愛する娘の性格を知り尽くしているメアリー様が、そんな危ない物を渡す訳がない。聡明だが時に突飛な行動をする王太女が興味本位で飲む危険があるのだから。
「あなたの言う通り、アレは媚薬などではないわ」
メアリー様は一拍置いて、王太女に渡した「媚薬」の正体を告げた。
「スピリタスよ」
「……世界一アルコール度数の高いお酒ですか?」
スピリタスはアルコール度数96度のウォッカだ。
「一応、リズには飲むなと言っておいたわ。女性が飲むと危険だからとか適当な事を言って」
男なら大丈夫で女なら危険な媚薬などあるはずがない。
妙な所で素直な王太女なら、この世で一番嫌いだと公言しているメアリー様の発言でも信じそうだが。
「スピリタスをストレートで飲んだら男でも危険ですよ」
メアリー様が渡したのは王太女の掌に入る程度の小瓶だった。あれを一気飲みしてもまず死ぬ事はないだろうが、強すぎるアルコール度数故に気分が悪くなって初夜どころではなくなるだろう。
「『媚薬』に頼らなければリズを抱けないような男なら、どれほど王配として有能でも要らないわ」
メアリー様は普段の彼女を知る者なら目を疑うような冷たい表情で言った。
媚薬に頼ってしか王太女を抱けない男なら急性アルコール中毒で死んでも構わない。だから、スピリタス(世界一アルコール度数の高い酒)を用意したのだろう。
国王陛下はアーサー王子(王太女の夫になったので彼は「王子」と呼ばれる)が有能だから王太女の夫にしたが、メアリー様はひとえに娘が彼を愛しているから認めているのだ。
「まあ、せいぜいアーサー様には今夜頑張ってもらいましょう」
メアリー様は呟いた後、私に王太女の私室に戻るように促した。
王太女の髪を結い上げたり化粧を直したり披露宴用のドレスを着付けたりと侍女達が忙しなく動いている中、私だけはこっそり抜け出して部屋から出て行ったメアリー様を追いかけた。
「メアリー様! お待ちください!」
王太女宮の敷地内ではあるが、王太女の私室からはだいぶ離れたので声を掛けても問題ないだろう。
そう思ったのは私だけだったようで、メアリー様はそのお美しい顔に厳しい表情を浮かべた。普段の穏やかな微笑しか浮かべない彼女しか知らない人間が見れば驚くだろう。
「わたくしの私室以外では、そう呼ぶのは禁止だと言ったはずよ。さっきだって呼んだわね。幸いリズはスルーしてくれたようだけど」
「……おそらく王太女様は気づいていらっしゃると思います。それでも私を傍に置いてくださっているのでしょう」
王太女に気づかれてしまったのは私のミスだ。
たとえ心酔する主が悪し様に言われようと、王太女の侍女としては追従するか聞き流すべきだったのに反論してしまった。
メアリー様にあれだけ愛されて、それを分かっているくせに、この方を悪し様に言う王太女が許せなかったのだ。
鈍いかと思えば妙に鋭い所もある王太女は、私のその態度を不審に思ったのだろう。
今までは他の侍女よりは心を許してくれているような様子だったのに、それ以来警戒されてしまった。
それでも私を首にしないのは――。
「リズの優しさね」
メアリー様は溜息を吐いた。その御姿さえ麗しい。
仕事に失敗して戻ればメアリー様が私に何かすると思ったのだろう。
王太女のその懸念は間違ってはいない。仕事に失敗した無能な部下などメアリー様には何の価値もないのだから。さっさと粛清するだろう。
自分を裏切っている侍女など気にしなければいいと思うのだが、そうできないのが王太女の優しさなのだろう。私から見れば甘いとしか思えないが。
実際は王太女の懸念は杞憂だ。肉体であれ精神であれ、愛する娘が傷つく事をメアリー様にはできないのだから。
「それに、あの子は分かっているのよ。あなたを首にしたところで、第二、第三のあなたやケイティが送られてくるとね」
監視と護衛のためにメアリー様は自分の部下を王太女の侍女にしている。愛する娘の普段の生活を知りたいのと彼女を守るためだ。
今は遠くに追いやれた王妃のベールで顔を隠していた私を含めた侍女五人もメアリー様の部下だ。王妃を監視するために彼女の侍女になったのだ。
私達五人が顔を隠していたのは王妃の命令だ。国王陛下に見初められないように。
下働きだろうと王妃や妾妃だろうと後宮にいるのは皆、王のための女だ。
王妃や妾妃という国王の「妻」でなくても後宮にいる以上、最初に国王のお手付きになる覚悟を持って暮らせと叩き込まれるのだ。
だからこそ、後宮で働く女性は容姿も重視される。国王の目に留まる可能性があるからだ。
それが嫌で王妃は侍女となった私達五人にベールで顔を隠すように命じたが、その心配は杞憂だ。
国王陛下は男色家ではないと思うが前国王のように女好きという訳でもないと思う。
現在の国王陛下、リチャード王は、即位直後は有力貴族の令嬢達を妾妃に迎えた。それは、国王になる可能性が低かった自分が国王になってしまったために重臣達の信頼を手っ取り早く得るために彼らを外戚にするためだ。
脳筋の王妃にはそれが分からないのだろう。自分以外の女が愛する夫である国王陛下の寵を得るなど我慢できないという思いしかないのだ。
国王陛下の不興を買い遠くに追いやられた王妃には、もう大勢の侍女など必要ない。
二人はそのまま王妃の侍女として変わらず彼女を監視し、二人はメアリー様の元に戻り、私は王太女の侍女になった。王太女の監視と護衛のために。
私が王太女の侍女をしているのも彼女を命懸けで守るのも、あくまでもメアリー様の命令だからだ。
たとえ、メアリー様が産んだ彼女が愛する娘だろうと、メアリー様の命令でなければ仕えたり守ったりはしない。
ケイティは王太女を真の主と思うようになったが、私が心酔する主は、今も昔もメアリー・シーモア様だけだ。
「それで、どうして、わたくしを呼び止めたの? 披露宴の主役である王太女の侍女なら色々やる事があって忙しいはずでしょう?」
言外に「職務怠慢よ」と私を咎めるメアリー様に私は項垂れた。全くその通りだ。
真の主はメアリー様だと思っていようと、その彼女に命じられて王太女の侍女をしているのに仕事を放棄して、こっそり抜け出してきた。侍女としても諜報員としても失格だ。
それは言うなら王太女がメアリー様を悪し様に罵っても聞き流せなかった時点で、そうなのだけれど。
「……どうしても気になって」
「そんな事で職務放棄するな」とメアリー様に怒られそうだが。
「王太女様にお渡ししたアレ、何ですか? 本当に媚薬をお渡ししたわけではないでしょう?」
愛する娘の性格を知り尽くしているメアリー様が、そんな危ない物を渡す訳がない。聡明だが時に突飛な行動をする王太女が興味本位で飲む危険があるのだから。
「あなたの言う通り、アレは媚薬などではないわ」
メアリー様は一拍置いて、王太女に渡した「媚薬」の正体を告げた。
「スピリタスよ」
「……世界一アルコール度数の高いお酒ですか?」
スピリタスはアルコール度数96度のウォッカだ。
「一応、リズには飲むなと言っておいたわ。女性が飲むと危険だからとか適当な事を言って」
男なら大丈夫で女なら危険な媚薬などあるはずがない。
妙な所で素直な王太女なら、この世で一番嫌いだと公言しているメアリー様の発言でも信じそうだが。
「スピリタスをストレートで飲んだら男でも危険ですよ」
メアリー様が渡したのは王太女の掌に入る程度の小瓶だった。あれを一気飲みしてもまず死ぬ事はないだろうが、強すぎるアルコール度数故に気分が悪くなって初夜どころではなくなるだろう。
「『媚薬』に頼らなければリズを抱けないような男なら、どれほど王配として有能でも要らないわ」
メアリー様は普段の彼女を知る者なら目を疑うような冷たい表情で言った。
媚薬に頼ってしか王太女を抱けない男なら急性アルコール中毒で死んでも構わない。だから、スピリタス(世界一アルコール度数の高い酒)を用意したのだろう。
国王陛下はアーサー王子(王太女の夫になったので彼は「王子」と呼ばれる)が有能だから王太女の夫にしたが、メアリー様はひとえに娘が彼を愛しているから認めているのだ。
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