60 / 159
時間旅行編
162.空中商店ラナ
空飛ぶ船アルゴー。
フォールグランド探索で大活躍した船だけど、探索が終わってからは出番がなかった。
飛んで出かけるほどの用事がなかったから、しばらく持て余していた。
だけど今日、そんなアルゴーの周りが人で賑わっている。
「ラルクさん、これどっちに置けばいい?」
「そこの棚の隣にお願いします! あと、机とテーブルを一式ほしいですね」
「あいよ! 親方に伝えとくぜ」
「助かります!」
紆余曲折あて、ウィルの街の一員になったラルク。
この船を使って世界中を飛び回り、うちの街で出来た物を広めていく。
そうして、この街のことを世界中の人に知ってもらうために。
現在はアルゴーを商業用の船に改造中。
作業する人たちは大忙しで、汗だくになって頑張っている。
すると、作業をするラルクのもとへ、シーナがやってくる。
「ラルクさん、お疲れ様です」
「シーナさんこそ、手伝いまでしてくれて本当に助かります」
「いえ、元はといえばワタシが言い出したことですから」
「そのお陰で、私は夢に大きく近づくことが出来ました。この恩は、一生をかけて代えさせてもらいますよ!」
「そ、そんな大げさですよ。ワタシはただ、手伝いたいと思っただけなので」
「それが何より嬉しいことです」
ラルクは嬉しそうな笑顔でそう言った。
シーナは照れくさそうに顔を隠して、小さく微笑んでいた。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
ラルクが街の一員になって三日後の夜。
僕は一人、屋敷の廊下を歩いていた。
時刻は夜の二時、皆はとっくに寝静まっている時間だ。
僕も偶々目が覚めて、何となく散歩をしていた。
すると、食堂の電気がついていることに気付く。
ソラが仕込みでもしているのかな?
いや、さすがに早すぎるか。
誰だろう?
僕はこそっと覗き込む。
食堂にいたのは、ラルクとシーナだった。
「この商品はこのくらいでどうですか?」
「う~ん、それだと利益があんまり……もう少し上げたいですね」
どうやら二人は、店で出す商品の値段や販売方法について話し合っているらしい。
そういえば、シーナにも相談しているって話していたな。
シーナはうちの経理も担当しているし、僕らの中で一番お金に強い。
机の上に並んでいる紙は、販売予定の商品と、それを作るのにかかる費用が書いたものだ。
アルゴーの改造は手伝えなかったから、出来るだけ助けになればと僕がまとめて渡したものだ。
こんな夜遅くまで?
熱心だな……というか、二人とも仲良くなったなぁ。
そう思いながら、こっそり眺めている。
「そうだシーナさん! そろそろ店の名前を決めたいのですが」
「そうでしたね。良い名前を考えないと」
「はい。そこでお願いなのですが……シーナさん」
「はい?」
「もしよろしければ、あなたの名前をいただけませんか?」
「……えっ、それはどういう……」
「いえ、ですからその……あなたの名前を、そのまま店の名前にしたいんです」
「え……えぇ!?」
シーナは驚いて、僕までビックリするくらい大きな声を出した。
「あ、え、あの……どうして?」
シーナが尋ねると、ラルクはもったいぶるように間を空けて話し出す。
「あなたが私を見つけてくれたから、こうして今も生きていられる。あなたが提案してくれたから、私は店を出せる。全部あなたがきっかけをくれました。私にとってシーナさんは、幸運の女神なんですよ」
「め、女神なんて……ワタシは人間でもないですから」
「種族なんて関係ありません。私にはあなたが、とても魅力的な女性にしか見えませんよ」
「なっ……」
シーナは顔を真っ赤にした。
まるで愛の告白みたいなセリフを、ラルクは普段通りの表情で口にした。
聞いている僕まで恥ずかしくなりそうだ。
「駄目でしょうか?」
「……えっと、やっぱり恥ずかしいです。ラルクさんのお店なんですし、ラルクさんの名前では駄目なんですか?」
「それでも良いのですが、私はやはりシーナさんの名前にしたいです」
「う……そう言ってもらえるのは嬉しいです。でもやっぱり恥ずかしくて……」
「じゃあ二人の名前を足せば良いんじゃないですか?」
僕は二人に後ろから声をかけた。
「「わっ!!」」
すると、二人は同じように驚いて声を上げた。
「こんばんは、二人とも」
「ウィル様? いつからそこに?」
「ちょっと前からだよ。名前の話を始める前から」
本当は静観しているつもりだったけど、ジレッたく思ったから、勝手に体が動いていたよ。
驚かせて悪いなとは思っている。
「ウィリアムさん、足すっていうのは?」
「いや、そのままが恥ずかしいなら、二人の名前の一部を混ぜて、新しい名前にしちゃえばいいかなって」
「いいですねそれ! そうしましょう!」
「シーナは?」
「そ、それなら何とか……でもどうしますか?」
「う~ん、そうだなぁ~ 例えば、ラルクとシーナでしょ? 【ラナ】っていうのはどう?」
「ラナ、ラナ……良いですね。私は気に入りましたよ! どうですか? シーナさん」
「良いと思います。可愛らしい名前だし、覚えやすいです」
「決まりですね! 店の名前は【ラナ】です!」
空中商店ラナ。
それがラルクの店の名前になった。
店の名前が決まった頃、時計を見ると三時を回っていた。
「じゃあ二人とも、そろそろ寝たほうが良いです」
「あ、こんな時間だったんですね」
「ワタシも気付きませんでした」
それだけ夢中だったみたいだ。
傍から見ていても、二人が楽しんでいるのはよくわかった。
実際にラナで世界を回るときは、ぜひシーナも一緒に行ってほしいと、このとき僕は思った。
フォールグランド探索で大活躍した船だけど、探索が終わってからは出番がなかった。
飛んで出かけるほどの用事がなかったから、しばらく持て余していた。
だけど今日、そんなアルゴーの周りが人で賑わっている。
「ラルクさん、これどっちに置けばいい?」
「そこの棚の隣にお願いします! あと、机とテーブルを一式ほしいですね」
「あいよ! 親方に伝えとくぜ」
「助かります!」
紆余曲折あて、ウィルの街の一員になったラルク。
この船を使って世界中を飛び回り、うちの街で出来た物を広めていく。
そうして、この街のことを世界中の人に知ってもらうために。
現在はアルゴーを商業用の船に改造中。
作業する人たちは大忙しで、汗だくになって頑張っている。
すると、作業をするラルクのもとへ、シーナがやってくる。
「ラルクさん、お疲れ様です」
「シーナさんこそ、手伝いまでしてくれて本当に助かります」
「いえ、元はといえばワタシが言い出したことですから」
「そのお陰で、私は夢に大きく近づくことが出来ました。この恩は、一生をかけて代えさせてもらいますよ!」
「そ、そんな大げさですよ。ワタシはただ、手伝いたいと思っただけなので」
「それが何より嬉しいことです」
ラルクは嬉しそうな笑顔でそう言った。
シーナは照れくさそうに顔を隠して、小さく微笑んでいた。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
ラルクが街の一員になって三日後の夜。
僕は一人、屋敷の廊下を歩いていた。
時刻は夜の二時、皆はとっくに寝静まっている時間だ。
僕も偶々目が覚めて、何となく散歩をしていた。
すると、食堂の電気がついていることに気付く。
ソラが仕込みでもしているのかな?
いや、さすがに早すぎるか。
誰だろう?
僕はこそっと覗き込む。
食堂にいたのは、ラルクとシーナだった。
「この商品はこのくらいでどうですか?」
「う~ん、それだと利益があんまり……もう少し上げたいですね」
どうやら二人は、店で出す商品の値段や販売方法について話し合っているらしい。
そういえば、シーナにも相談しているって話していたな。
シーナはうちの経理も担当しているし、僕らの中で一番お金に強い。
机の上に並んでいる紙は、販売予定の商品と、それを作るのにかかる費用が書いたものだ。
アルゴーの改造は手伝えなかったから、出来るだけ助けになればと僕がまとめて渡したものだ。
こんな夜遅くまで?
熱心だな……というか、二人とも仲良くなったなぁ。
そう思いながら、こっそり眺めている。
「そうだシーナさん! そろそろ店の名前を決めたいのですが」
「そうでしたね。良い名前を考えないと」
「はい。そこでお願いなのですが……シーナさん」
「はい?」
「もしよろしければ、あなたの名前をいただけませんか?」
「……えっ、それはどういう……」
「いえ、ですからその……あなたの名前を、そのまま店の名前にしたいんです」
「え……えぇ!?」
シーナは驚いて、僕までビックリするくらい大きな声を出した。
「あ、え、あの……どうして?」
シーナが尋ねると、ラルクはもったいぶるように間を空けて話し出す。
「あなたが私を見つけてくれたから、こうして今も生きていられる。あなたが提案してくれたから、私は店を出せる。全部あなたがきっかけをくれました。私にとってシーナさんは、幸運の女神なんですよ」
「め、女神なんて……ワタシは人間でもないですから」
「種族なんて関係ありません。私にはあなたが、とても魅力的な女性にしか見えませんよ」
「なっ……」
シーナは顔を真っ赤にした。
まるで愛の告白みたいなセリフを、ラルクは普段通りの表情で口にした。
聞いている僕まで恥ずかしくなりそうだ。
「駄目でしょうか?」
「……えっと、やっぱり恥ずかしいです。ラルクさんのお店なんですし、ラルクさんの名前では駄目なんですか?」
「それでも良いのですが、私はやはりシーナさんの名前にしたいです」
「う……そう言ってもらえるのは嬉しいです。でもやっぱり恥ずかしくて……」
「じゃあ二人の名前を足せば良いんじゃないですか?」
僕は二人に後ろから声をかけた。
「「わっ!!」」
すると、二人は同じように驚いて声を上げた。
「こんばんは、二人とも」
「ウィル様? いつからそこに?」
「ちょっと前からだよ。名前の話を始める前から」
本当は静観しているつもりだったけど、ジレッたく思ったから、勝手に体が動いていたよ。
驚かせて悪いなとは思っている。
「ウィリアムさん、足すっていうのは?」
「いや、そのままが恥ずかしいなら、二人の名前の一部を混ぜて、新しい名前にしちゃえばいいかなって」
「いいですねそれ! そうしましょう!」
「シーナは?」
「そ、それなら何とか……でもどうしますか?」
「う~ん、そうだなぁ~ 例えば、ラルクとシーナでしょ? 【ラナ】っていうのはどう?」
「ラナ、ラナ……良いですね。私は気に入りましたよ! どうですか? シーナさん」
「良いと思います。可愛らしい名前だし、覚えやすいです」
「決まりですね! 店の名前は【ラナ】です!」
空中商店ラナ。
それがラルクの店の名前になった。
店の名前が決まった頃、時計を見ると三時を回っていた。
「じゃあ二人とも、そろそろ寝たほうが良いです」
「あ、こんな時間だったんですね」
「ワタシも気付きませんでした」
それだけ夢中だったみたいだ。
傍から見ていても、二人が楽しんでいるのはよくわかった。
実際にラナで世界を回るときは、ぜひシーナも一緒に行ってほしいと、このとき僕は思った。
あなたにおすすめの小説
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く
ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。
5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。
夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…
お前には才能が無いと言われて公爵家から追放された俺は、前世が最強職【奪盗術師】だったことを思い出す ~今さら謝られても、もう遅い~
志鷹 志紀
ファンタジー
「お前には才能がない」
この俺アルカは、父にそう言われて、公爵家から追放された。
父からは無能と蔑まれ、兄からは酷いいじめを受ける日々。
ようやくそんな日々と別れられ、少しばかり嬉しいが……これからどうしようか。
今後の不安に悩んでいると、突如として俺の脳内に記憶が流れた。
その時、前世が最強の【奪盗術師】だったことを思い出したのだ。
魔法が使えない令嬢は住んでいた小屋が燃えたので家出します
怠惰るウェイブ
ファンタジー
グレイの世界は狭く暗く何よりも灰色だった。
本来なら領主令嬢となるはずの彼女は領主邸で住むことを許されず、ボロ小屋で暮らしていた。
彼女はある日、棚から落ちてきた一冊の本によって人生が変わることになる。
世界が色づき始めた頃、ある事件をきっかけに少女は旅をすることにした。
喋ることのできないグレイは旅を通して自身の世界を色付けていく。
俺に王太子の側近なんて無理です!
クレハ
ファンタジー
5歳の時公爵家の家の庭にある木から落ちて前世の記憶を思い出した俺。
そう、ここは剣と魔法の世界!
友達の呪いを解くために悪魔召喚をしたりその友達の側近になったりして大忙し。
ハイスペックなちゃらんぽらんな人間を演じる俺の奮闘記、ここに開幕。
没落した貴族家に拾われたので恩返しで復興させます
六山葵
ファンタジー
生まれて間も無く、山の中に捨てられていた赤子レオン・ハートフィリア。
彼を拾ったのは没落して平民になった貴族達だった。
優しい両親に育てられ、可愛い弟と共にすくすくと成長したレオンは不思議な夢を見るようになる。
それは過去の記憶なのか、あるいは前世の記憶か。
その夢のおかげで魔法を学んだレオンは愛する両親を再び貴族にするために魔法学院で魔法を学ぶことを決意した。
しかし、学院でレオンを待っていたのは酷い平民差別。そしてそこにレオンの夢の謎も交わって、彼の運命は大きく変わっていくことになるのだった。
※2025/12/31に書籍五巻以降の話を非公開に変更する予定です。
詳細は近況ボードをご覧ください。
【完結】英雄様、婚約破棄なさるなら我々もこれにて失礼いたします。
紺
ファンタジー
「婚約者であるニーナと誓いの破棄を望みます。あの女は何もせずのうのうと暮らしていた役立たずだ」
実力主義者のホリックは魔王討伐戦を終結させた褒美として国王に直談判する。どうやら戦争中も優雅に暮らしていたニーナを嫌っており、しかも戦地で出会った聖女との結婚を望んでいた。英雄となった自分に酔いしれる彼の元に、それまで苦楽を共にした仲間たちが寄ってきて……
「「「ならば我々も失礼させてもらいましょう」」」
信頼していた部下たちは唐突にホリックの元を去っていった。
微ざまぁあり。
劣悪だと言われたハズレ加護の『空間魔法』を、便利だと思っているのは僕だけなのだろうか?
はらくろ
ファンタジー
海と交易で栄えた国を支える貴族家のひとつに、
強くて聡明な父と、優しくて活動的な母の間に生まれ育った少年がいた。
母親似に育った賢く可愛らしい少年は優秀で、将来が楽しみだと言われていたが、
その少年に、突然の困難が立ちはだかる。
理由は、貴族の跡取りとしては公言できないほどの、劣悪な加護を洗礼で授かってしまったから。
一生外へ出られないかもしれない幽閉のような生活を続けるよりも、少年は屋敷を出て行く選択をする。
それでも持ち前の強く非常識なほどの魔力の多さと、負けず嫌いな性格でその困難を乗り越えていく。
そんな少年の物語。