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ゲームの世界じゃないみたい
しおりを挟む「………んッ、うゅぅ……?」
パチパチという音とお腹の空くいい匂いに沈んでいた意識が徐々に浮かび上がってきた。
ゆっくり目を開けると僕はテントの中の様な所に寝かせられていた。
起き上がると身体にかけられていたタオルがパサりと落ちて自分が裸な事に気付き慌ててタオルを巻き付けて身体を隠した。
それから外から流れてくるいい匂いが気になってテントから顔を出すと真っ暗な森の中黙々と焚き火の火で料理をする金髪のイケメンさんがいた。
(確か…助けてくれた人……)と思いながらその様子を眺めていると僕が見てる事に気付いたイケメンさんが近付いてきた。
「おはよう、身体の調子はどうだ?痛い所はあるか?」
イケメンさんに話しかけられ特に痛い所もなかったので首を横に降ると今度は「食欲はあるか?」と聞かれたので答えようとすると口より先にお腹がなって返事をしていた。
「食欲はありそうだな。ほら、もうできてるからこっち来な」
恥ずかしくなって顔を逸らしてるとイケメンさんが僕の手を引いてテントから引っ張りだした。
その勢いでイケメンさんの胸板に強く顔をぶつけてしまい、抗議を込めた視線で見上げてると急に身体が浮く感じがして気付くと僕はお姫様抱っこの体勢で抱き上げられていた。
「え!?や、あの、下ろして!?自分で歩けるから!?」
いきなりお腹が鳴るよりも恥ずかしい体勢にされてしまい、じたばたと抵抗してみても僕を抱く腕は一切揺らぐ事はなく軽々と運ばれた。
そして抵抗虚しく僕はキャンプで使うような折りたたみ椅子に座ったイケメンさんの脚の上に座らされ、お腹に回された腕でガッチリと確保されてしまった。いわゆるお膝だっこである。
「あの、恥ずかしいので下ろしてくれると……」
「椅子が1つしか無いからダメだ」
「僕は地面でも……」
「女の子1人地べたに座らせて飯を食えと?」
「いや、あの、僕は………」
「話は飯を食べてから、いいね」
「あぅ…、はい……」
下ろしてもらおうと頼んでみたけど有無を言わさぬ感じで淡々と言われてしまい結局イケメンさんの膝の上でご飯を食べる事になった。
メニューは香草をまぶした焼肉と切れ目の入った丸パンとコップ1杯のお水。
イケメンさんは焼肉をパンに挟んで食べていたので僕も真似をして焼肉パンにして食べてみた。
「美味いか?」
肉汁の染み込んだパンと噛みごたえバッチリのお肉を口いっぱいにもぐもぐしてると頭上から話しかけられたので見上げながらうんと頷いた。
恥ずかしいより今はご飯が大事なので!
それから水を飲みぷはぁーと一息ついてから手を合わせてごちそうさまをした。
大変美味でした!
ーーーーーーーーーーーーーー
「ご飯もだけどスライムから助けてくれてありがとうございました。助けて貰えなかったら本当にダメだと思ったし……、本当にありがとうございました」
ご飯を食べ終えて一息ついた後、僕はイケメンさんを見上げてスライムから助けてもらった事への感謝を述べてペコりと頭を下げた。
お膝だっこされたままだけど。
「それと…、あの…、1つだけ頼みたい事があって………」
「頼みたい事?」
「はい…!あの、僕の代わりに運営さんに連絡を取って欲しいんです!メニューとかいろいろ使えるようになる前になんでか入れちゃったみたいで……ログアウトとかが出来なくて………、不具合なのか描写とか感覚も変だし………、何でもはできないけどお礼も後でちゃんとするのでお願いします!」
そして他の人に会えたら頼もうと思っていた事を伝えるとイケメンさんは僕の身体を持ち上げて向かい合わせになる様に座り直させた。
いきなり何をと思い見上げるとイケメンさんは真面目な顔で僕を見つめて「落ち着いて聞いてくれ」と切り出した。
「いいか、まずこの世界はゲームじゃない。ここは『エルザイア』という世界で君はこの世界に落ちてきた『落ち人』、つまり異世界人という事になる」
「え……、異世界……?落ち人……?」
「混乱するのは分かるが私も1年前に『Alternative World ONLINE』というゲームを始めたらこの世界に落とされたんだ。その時はかなり焦ったよ、ただのOLだった私がこんな身体になってしまったんだからね」
「え……、OL……?えぇ!?イケメンさんは女の人なの!?」
ここがゲームじゃなくて異世界だって事にはびっくりした。でも普通のゲームならありえない様な事が何度もあったからもしかしたらって考えはあった。
けどそれ以上にイケメンさんが女の人だった事に僕はびっくりした。
だって身体もしっかりしてるし口調も男っぽい喋り方だしどこからどう見ても男の人しか見えないのに。
「そうだよ。本名は奈津 恵、今は色々あってナツメと名乗ってるんだ。君も名前を教えてくれるかい?」
イケメンさん改めナツメさんはそう言いながら僕の頬にスっと手を添えてにっこり微笑んだ。
「ひゃぁぁ………!?あ、あの、えっと…、悠木 要18歳です……!今は女の子だけど中身は男で、僕も『Alternative World ONLINE』を始めて、そしたらキャラメイク途中で気を失って、気付いたら草原の所にいました!」
頬を撫でる手のくすぐったさで変な声が出たのが恥ずかしくなって僕は早口で答えた。
その途中ナツメさんの顔が一瞬だけ獲物を前にした獣みたいになったような気がした。
けど改めて見ても特に変わった感じも無いし気のせいだったのかな?
「そうか、カナメは男の子だったのか」
「は…、はい。あの……ナツメさん」
「ん?なんだ?」
「帰る方法とかって、あるんですか…?」
「残念だが無い」
それからあればいいなと気になってた帰還方法があるのかを聞いてみたけど即答で否定されてしまい僕はガックリと肩を落とした。
「カナメはこれからどうするんだ?」
「え、あ…!僕……、どうしたら………」
ナツメさんに言われ、今の僕には行くあても帰るあても無い事に気付き途方に暮れた。
「カナメがよかったら私の家に来るか?」
「え…?」
「場所は町の端の方だが辺りは静かだしそれなりの庭も付いている。何部屋か空きもあるし良ければ一緒に来て欲しいんだが。あぁ、もちろん嫌なら断ってもいい、決めるのはカナメだ」
「い…嫌じゃないです!…けどなんでそこまでしてくれるんですか……?」
ナツメさんの提案は行くあてのない僕にはとてもありがたいものだった。
でも会ったばかりなのにこんな良くしてくれる理由が分からず僕はナツメさんに聞いてみた。
「なんでと言われても、普通に考えてこんな可愛い女の子を放っておけるわけないだろ。それにカナメは男の子だったんだろ?それはつまり女の子として必要な知識が一切無く、また今後生きていく上で確実に苦労するという事だ。だからそうならないように私が付きっきりで教えてやろうと思ってな」
「あの…、でも…、それだと僕ばっかりでナツメさんのメリットが何も無い気がするんですが……?」
「メリットか?それならあるぞ。カナメという最高に可愛い女の子と同居する事が出来るなんてこれ以上ないメリットだろ。むしろ来てくださいと土下座するレベルだ」
「………えぇぇ!?ダメですよそんなの!?何か他に無いんですか…!?僕に出来る事ならしますから…!」
「私としてはカナメと同居出来るだけで十分なんだが……。そうだな、家事とかいろいろ頼んでもいいか?私は掃除とかそういった事が苦手なんだ」
「はい…!それなら大丈夫です!他にも僕に出来る事があれば何でも言ってくださいね!」
「そうか?じゃあーー」
土下座されそうになったのは驚いたけど僕は家事等の雑務と……、その後ナツメさんに誘導されるがままに了承してしまった寝る時は必ずナツメさんの抱き枕になるという恥ずかしい条件で同居する事になった。
どうしてこうなったの!?
しかもーー
「ぜ、絶対目を開けちゃダメですからね!?」
「分かってるって」
ーー「じゃあ今日から開始な」というナツメさんの無情なる一言によりその条件は今日から適用され、更に掛け布団もといタオルは僕が身体を隠すために使っているものしか無いらしく二人で寝る為には裸で抱き枕になるしかないという羞恥プレイをする事になってしまった。
一応テント内の明かりを消した上でナツメさんには目を瞑ってもらっているけど会ったばかりの人と狭い空間に二人きりでしかも自身は裸という普通ならありえない状況に心臓が緊張でバクバクと早鐘を鳴らす。
「カナメまだか?早くしないと目を開けるぞ?」
「だ、ダメです!?ぁぅぅ……、お、男は度胸……!」
覚悟を決め、でも正面から抱かれるのは恥ずかし過ぎて死ぬので少しだけスペースを開けて背を向けて寝転がった。
「カナメは抱き枕なんだから離れたらダメだろ?」
「うわわ……!?」
すると恥ずか死なないように背を向けてたはずの僕の身体がくるんとひっくり返され胸が押し潰れる程に抱き締められた。
「おやすみカナメ」
チュッ……
そしてナツメさんは僕の首筋にキスを落とすと満足したのか1人であっさりと眠ってしまった。
(え…、あ……、え……、いま……、キス……、され…、わあぁぁぁぁぁ!?!?)
羞恥心で混乱しまくりの僕を置いて。
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