異世界労働戦記☆スキル×レベル☆生産者ケンタ

のきび

文字の大きさ
51 / 67
4章 守りたい者たちは誰なのか

黒い飛行体と黄金の戦士。

しおりを挟む
「ケンタの情報はあったです?」
 クニャラは冒険者ギルドでケンタの情報を集めるサラをさせかすように尋ねる。

「だめだ、あれから半年も経つのにケンタの情報は一切ない。完全に消息が消えてしまった。あの村以外でケンタは現れていないそうだ」
 サラはクニャラとレオナに申し訳なさそうに言う。王にも協力を仰いでケンタの情報を得ようとしたが若い王は贅沢三昧で人質のシーファを抱くことしか考えていなかった。

「わたし……。わたし探しにいく」
 そう言ったのはレオナだった。経験値が身体の中に入ったその日、クニャラとサラの説明を受けてケンタが生きている可能性があると知ったレオナは今すぐにもケンタに会いに行きたかったのだ。

「レオナだめです、この国は私たちが守らないと滅ぶのです」
「ケンタさんは生産職なんだよ? この国よりも自分の身を守れないじゃない。誰かが助けないとだめなんだよ」

「ケンタは強いです。レオナを救い、私たちを救ってくたです。ケンタを信じるです!」

「……だけど」

「それにクニャラたちがこの国から出たらシーファが王のモノになってしまうのです」

「そんなの、わたしには関係な――」
 レオナはその言葉を飲み込む。彼女にとってケンタ以上の存在はこの世に存在しない。
 シーファにはなんの感情もない。だが家族であるサラを悲しませるわけにはいかないと、そのためにこの国に残っているのだ。

「それにクニャラたちがいなくなったらケンタの帰ってくる家もなくなってしまうです」

「……わかったわ」
 レオナはケンタに会いたい心を押し殺してこの国を守ることにした。
 レオナが国を守ると決意すると、若い女の兵士が慌ただしく二人の元に立ち報告する。

「クニャラ様!レオナ様!天使の軍団が攻めてきました。物見の報告によると100万体はくだらないと言う報告です」

「100万体です!?」
 ありえない数だった、今まではせいぜい数千、多くても2,3万程度の攻撃だったのだ。それがいきなり100万の軍勢となって、このブレイドオル王国に進軍してきたのだ。

「何体来ても関係ないわ蹴散らせば良いだけ」
 二人は高速馬車に乗り戦地へおもむく。そのあまりの敵の数にサラも来ると言っていたのだが。王からの帰還命令により一緒についていくことは叶わなかった。
 若い王は臆病なのだ。
 おっとり刀で戦地に赴くと敵のあまりの多さに驚愕した。天使の軍団で山が銀色に光っているのだ。
 二人の顔には絶望の二文字が浮かんでいた。さすがに100万の敵と戦うのはクニャラ、レオナ共に未知数なのだ。

「魔力が持つか分からないのです」

「でも、それでもケンタさんは50万の軍勢に一人で立ち向かった。100万ならちょうどあなたと私でケンタさんと同じことができるわよ」
 脳筋らしいレオナの考えにクニャラは笑う。

「レオナはバカなのです」

「クニャラ、あなたに謝っておきたいことがあるの。あなたに辛く当たってごめんなさい。あなただって辛かったはずなのに」

「良いのです。レオナとは弱いときからの仲間ですし家族なのです」

「うん」

「それにそう言うこと言うう人は戦争で死ぬです」

「うん気を付ける」

 そう言うとレオナは親指を立てサムズアップする。だがクニャラはそれに答えずに頭を下げる。

「クニャラもレオナに謝らないといけないのです」

「なに?」
 クニャラは握ったままの左手をレオナに差し出した。

「この中にケンタの指輪があるです。死んだと思いたくなくて。これをレオナに渡したらケンタが死ぬと思って持ってるのをレオナには言えなかったです」

「もしかしてそれを拾うためにその火傷やけどったの?」

「ハイです。でも、ケンタがいると思ったです。指輪のところにケンタがいると思って……」
 指輪のある左手をクニャラは右手でギュッと握る。その手をレオナはそっと包み込む。

「良いわよ、それはクニャラのよ。クニャラがケンタさんに渡して」

「いいのです?」

「当然じゃない。でも理由がわかったんならいい加減その傷治しなさいよ?」

「これはベラリルト王避けです。強くてかわいいクニャラは狙われるです。ケンタ以外はお断りなのです」
 ブレイドオル王国の若き王ベラリルトは女好き、特に幼女が好きな特殊性癖の持ち主なのは公然の秘密なのである。

「プッ、確かにあの糞王ならありえるわね。シーファ狙われてるしね」
 そして二人はいつしか抱き合っていた。今までのわだかまりを取り払うように。

「まあ、今はこいつらを倒して生き残らないとね」

「なのです。ケンタが帰ってくるまで負けないのです」

 そこからの二人の戦いは、まさに勇猛果敢だった。各個撃破だった時とは違い、二人の連携プレイでいつもより早く楽に天使の軍団を殲滅していった。

 しかし圧倒的な数の暴力、クニャラやレオナの魔力がほとんどつきかけていると言うのに敵はまだ半分も減っていない。

「クニャラ様、レオナ様、魔力を回復してください。その間は私たちが引き受けます」
 騎士団の者たちが二人を引かせ、その間に敵を押さえる。二人と違い強くない騎士団の者たちではあったが模造品とは言え魔法の装備を装着しているので多少は時間が稼げる。

「大丈夫クニャラ?」

「魔力がカラカラなのです。レオナこそ大丈夫なのです」

「ケンタさんがくれた二本の剣がなかったら死んでるよ」
 そう言うとレオナはフフフと笑う。
 その笑みには絶望の二文字は無い、必ず生き残ろと言う強い意思が感じられる笑みだった。

 二人は体を休め魔力を回復させるが騎士団がすぐに押され出す。魔力回復薬を飲むが、たいして魔力は回復していない。

「そろそろ行かないとだめね」

「なのです」
 二人の魔力は微量しか回復していない。だが二人は戦場へおもむく。ケンタのように。
 生産職なのに自分達を守ってくれたケンタのようにと。

「あんたらだけに行かせないよ」
 そう言って二人の肩を掴んだのはサラ・ゴメスティリス・パラドンナだった。
 その後ろにはシャーロンやシーファまでいる。

「なんで?」

「国王、いやベラリルトだね、あいつをぶん殴ってきたよ。あんな奴は国王じゃない」

「大丈夫なの?」

「家族を失ってまで貴族の地位を守りたくない」
「そうです、私はまだ家族にさせてもらってないんですから」
「だね、ケンタさんには恩を返せてないしね」

 シャーロンやシーファ、太陽の華フラワーの面々も集まり天使の軍団を迎え撃つ。
 だがここで戦えるのはクニャラとレオナ、サラの三人だけである。シーファとシャーロンが強いと言っても武装的に無理があるのだ。
 次第に数の暴力の前に押され出す。クニャラの魔力が切れたとき敵の猛攻を押さえきれず防衛線は決壊する。

「もう魔力がつきるです!」
 クニャラの杖にはレオナやサラのように特殊スキルはない。故に魔力がつきたら戦力外になってしまうのだ。

「私も魔力がつきるわ」
「私もだ」

 三人の魔力がつきてクニャラが戦闘に参加できなくなると天使の軍団は待ってましたとばかりに三人を襲う。
 しかし、太陽の華フラワーのメンバーが集まり三人を守るように防御の陣をとる。その後ろでレオナが剣を掲げる。

「ケンタさんに会うまで死ねないのよ”アローレイン”!」
 光の矢が敵を貫く。しかし、それは焼け石に水で敵の進軍は止まらない。
 もう終わりかと、空を仰ぎ見るみんなの目に巨大な黒い飛行体が目に入る。

「なにあれ」
「新手か?」

 飛行体の先端から大量の筒が発射され地表に当たる前に割れるように開いた。
 その中には大量の小さな筒が入っており、それが射出されると地表の天使の軍団を一瞬で凍らせた。

 黒い飛行体から三体の小さな飛行体が飛び出て上空を旋回する。

ドラゴン?」
 その三体の飛行体は超高速で飛び天使の軍団を射出物で破壊する。その三体の飛行体の上に人が乗っているようにも見える。

「すごいのです」

「なにんにせよ味方のようだ」

「話してる暇はないわよ」
 呑気に話しているクニャラとサラにシーファの注意喚起の声が飛ぶ。

 氷の攻撃や射出物を抜けた天使の軍団が疲弊したクニャラたちを襲うその時、上空を舞う三体の飛行体から三人の人が飛び降りる。

 ”ドスン”

 クニャラたちと天使の軍団の間にそいつは降り立った。爆音と土煙の中にいたのは金色のフルメイルを着込んだ男だった。
しおりを挟む
感想 12

あなたにおすすめの小説

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2巻決定しました! 【書籍版 大ヒット御礼!オリコン18位&続刊決定!】 皆様の熱狂的な応援のおかげで、書籍版『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』が、オリコン週間ライトノベルランキング18位、そしてアルファポリス様の書店売上ランキングでトップ10入りを記録しました! 本当に、本当にありがとうございます! 皆様の応援が、最高の形で「続刊(2巻)」へと繋がりました。 市丸きすけ先生による、素晴らしい書影も必見です! 【作品紹介】 欲望に取りつかれた権力者が企んだ「スキル強奪」のための勇者召喚。 だが、その儀式に巻き込まれたのは、どこにでもいる普通のサラリーマン――白河小次郎、45歳。 彼に与えられたのは、派手な攻撃魔法ではない。 【鑑定】【いんたーねっと?】【異世界売買】【テイマー】…etc. その一つ一つが、世界の理すら書き換えかねない、規格外の「便利スキル」だった。 欲望者から逃げ切るか、それとも、サラリーマンとして培った「知識」と、チート級のスキルを武器に、反撃の狼煙を上げるか。 気のいいおっさんの、優しくて、ずる賢い、まったり異世界サバイバルが、今、始まる! 【書誌情報】 タイトル: 『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』 著者: よっしぃ イラスト: 市丸きすけ 先生 出版社: アルファポリス ご購入はこちらから: Amazon: https://www.amazon.co.jp/dp/4434364235/ 楽天ブックス: https://books.rakuten.co.jp/rb/18361791/ 【作者より、感謝を込めて】 この日を迎えられたのは、長年にわたり、Webで私の拙い物語を応援し続けてくださった、読者の皆様のおかげです。 そして、この物語を見つけ出し、最高の形で世に送り出してくださる、担当編集者様、イラストレーターの市丸きすけ先生、全ての関係者の皆様に、心からの感謝を。 本当に、ありがとうございます。 【これまでの主な実績】 アルファポリス ファンタジー部門 1位獲得 小説家になろう 異世界転移/転移ジャンル(日間) 5位獲得 アルファポリス 第16回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞 第6回カクヨムWeb小説コンテスト 中間選考通過 復活の大カクヨムチャレンジカップ 9位入賞 ファミ通文庫大賞 一次選考通過

『急所』を突いてドロップ率100%。魔物から奪ったSSRスキルと最強装備で、俺だけが規格外の冒険者になる

仙道
ファンタジー
 気がつくと、俺は森の中に立っていた。目の前には実体化した女神がいて、ここがステータスやスキルの存在する異世界だと告げてくる。女神は俺に特典として【鑑定】と、魔物の『ドロップ急所』が見える眼を与えて消えた。  この世界では、魔物は倒した際に稀にアイテムやスキルを落とす。俺の眼には、魔物の体に赤い光の点が見えた。そこを攻撃して倒せば、【鑑定】で表示されたレアアイテムが確実に手に入るのだ。  俺は実験のために、森でオークに襲われているエルフの少女を見つける。オークのドロップリストには『剛力の腕輪(攻撃力+500)』があった。俺はエルフを助けるというよりも、その腕輪が欲しくてオークの急所を剣で貫く。  オークは光となって消え、俺の手には強力な腕輪が残った。  腰を抜かしていたエルフの少女、リーナは俺の圧倒的な一撃と、伝説級の装備を平然と手に入れる姿を見て、俺に同行を申し出る。  俺は効率よく強くなるために、彼女を前衛の盾役として採用した。  こうして、欲しいドロップ品を狙って魔物を狩り続ける、俺の異世界冒険が始まる。 12/23 HOT男性向け1位

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

第2の人生は、『男』が希少種の世界で

赤金武蔵
ファンタジー
 日本の高校生、久我一颯(くがいぶき)は、気が付くと見知らぬ土地で、女山賊たちから貞操を奪われる危機に直面していた。  あと一歩で襲われかけた、その時。白銀の鎧を纏った女騎士・ミューレンに救われる。  ミューレンの話から、この世界は地球ではなく、別の世界だということを知る。  しかも──『男』という存在が、超希少な世界だった。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

異世界転移から始まるハーレム生活〜チートスキルを貰った俺は、妹と共に無双する〜

昼寝部
ファンタジー
 2XXX年、X月。  俺、水瀬アキトは戦争の絶えない地球で『戦場の悪魔』と呼ばれ、数多の戦で活躍していた。  そんな日々を過ごしていた俺は、ひょんなことから妹と一緒に異世界へ転移することになった。  その世界にはダンジョンが存在しており、ライトノベルなどで登場する世界観と類似していた。  俺たちはその世界で過ごすため女神様からチートスキルを貰い、冒険者となって異世界での生活を満喫することにした。  これは主人公の水瀬アキトと妹のカナデが異世界へ転移し、美少女たちに囲まれながら異世界で無双するお話し。

チート魅了スキルで始まる、美少女たちとの異世界ハーレム生活

仙道
ファンタジー
リメイク先:「視線が合っただけで美少女が俺に溺れる。異世界で最強のハーレムを作って楽に暮らす」  ごく普通の会社員だった佐々木健太は、異世界へ転移してして、あらゆる女性を無条件に魅了するチート能力を手にする。  彼はこの能力で、女騎士セシリア、ギルド受付嬢リリア、幼女ルナ、踊り子エリスといった魅力的な女性たちと出会い、絆を深めていく。

異世界で快適な生活するのに自重なんかしてられないだろ?

お子様
ファンタジー
机の引き出しから過去未来ではなく異世界へ。 飛ばされた世界で日本のような快適な生活を過ごすにはどうしたらいい? 自重して目立たないようにする? 無理無理。快適な生活を送るにはお金が必要なんだよ! お金を稼ぎ目立っても、問題無く暮らす方法は? 主人公の考えた手段は、ドン引きされるような内容だった。 (実践出来るかどうかは別だけど)

処理中です...