幼馴染が女勇者なので、ひのきの棒と石で世界最強を目指すことにした。

のきび

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第三章 ミスティアとクロイツ ―ふたりの魔王討伐―

ミスティアのクーデターまでの六日間 その十八 ~救世王ノ剣~

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「なあ、あんた俺を捕まえてどうしたいんだ?」
 俺は余裕綽々ようゆうしゃくしゃくで待つジュエリに問いかけた。

「にゃ? 狼人は狂うからハコブネに隔離するにゃ」
「隔離されたら狂わないのか?」
「当然にゃ、ただし仕事はしてもらうにゃけどにゃ」
 狂わないならこのままハコブネに隔離されるのも悪くないか。

「なら降参だ。俺はお前に勝てないハコブネにつれていってくれ」
「ダメにゃ」
「俺を捕まえに来たんだろ? なんでダメなんだ」
「その言葉使いにゃ。主従関係をはっきりさせるにゃ。叩きのめして屈服させるにゃ。早くジュエリを倒せる技を出すにゃ」
 ジュエリが俺に向かい指をクイッと曲げて見せ俺を挑発する。

「プハハハ、そんなものあるわけ無いだろ、」
 ジュエリは俺のその言葉に眉毛をつり上げ俺をにらむ。

「つまり技もないのにジュエリを挑発したにゃ?」
「まあ、そう言うことだ」
「ジュエリは嘘をつかれるのが一番嫌いにゃ、おみゃえ半殺しじゃすまないにゃ、9割9分殺してやるにゃ」
「優しいじゃないか、1分だけ残ってるってことは死なない確約みたいなものじゃないか。そんなんじゃ俺の心は折れないぞ」
 ジュエリはわなわなと体を震わせ俺をにらみつける。

「土下座して泣いて謝るまで殴り殺してやるにゃ!」
 殺しちゃったら謝れないだろ以外と天然なんだな。

瘴気狼カオスウルフ!」
 俺に襲い来る瞬間、瘴気狼をだしジュエリに襲わせる。しかし瘴気狼カオスウルフは一瞬でジュエリに飲み込まれた。
 まただ、瘴気蝙蝠カオスバットとは互角なのにジュエリには一切効かない。

「おみゃえバカにゃ元々ジュエリの感染瘴気にゃ自分の爪で怪我するのは赤ん坊にゃ」
 そうか元々この力の根源はあいつのものか、だからダメージを受けない。……いや本当にそうか?
 あいつはいつも手のひらで瘴気狼カオスウルフを吸収していた。
 俺の小手のように何か道具で吸収してるんじゃないか? よく見ると両手に指輪をしている。あれが吸収装置か? ならば。

瘴気狼カオスウルフ!」
 俺の爪から10匹ほどの瘴気狼を作り出し、俺は単身ジュエリに向かい突進した。

「にゃ? 瘴気獣を出しておいて自分が突っ込んでくるとかバカすぎにゃ」
 ジュエリは俺の爪を交わし俺の顔に蹴りを入れる。その瞬間俺の影から先ほど作った瘴気狼カオスウルフがジュエリを襲う。

「にゃああ!?」
 俺は吹き飛ばされながら、ジュエリが瘴気狼カオスウルフに腕や足を噛み砕かれるのを見た。やはり手以外からは吸収できないようだ。
 身体中を噛み砕かれジュエリは動かなくなった。俺は痛む身体をテレポーターの前まで引きずり腰を下ろす。

 俺のはこの先のことを考える。絆を結べない以上、俺は今日にでも邪骨精霊龍様の兵士になるだろう。
 このまま人が一人もいなくなったここにいるか?

 いや、この国から人がいなくなったと言っても、いつか人が来る。
 その時にその人達を襲い殺すかもしれない。できればそれはしたくない。

 自殺しても俺は確実に蘇る。

 やはりハコブネに連れていってもらうのが一番良かったのかもしれない。
 とはいえ殺してしまった今ではハコブネの場所もわからない。

 手詰まりだな。

 俺は上の空で瘴気狼カオスウルフが食い散らかすジュエリを見ていた。食べ終わったのか瘴気狼達がその場にとどまり俺を見る。

「おみゃえ、いい加減にするにゃ」
 俺の後ろからジュエリの声が聞こえ、殺気が俺の背筋を凍らす。俺は反射的に転がるように避けた。

「クッ!」
 背中を何かで切られた。血がとめどおりなく流れる。
 ジュエリは身体を黒い霧で覆い、俺を般若の形相でにらむ。

「許さにゃいにゃ、おみゃえはここで死ねにゃ!」
 黒い霧の一部が鎌のような武器になるとジュエリは一瞬で間合いを摘め俺の懐に入り「終わりにゃ」と言うと鎌を振るった。
 その鎌は俺の胴体を寸断して上と下に切り離した。

「グハッ!」
 上半身が落ちる瞬間ジュエリは俺の顔面を蹴りあげ、吹き飛ばされた俺は大柱にぶち当たり濡れ雑巾のようにズルリズルリと柱を滑り落ち床に倒れた。
 内蔵は完全につぶれ、心臓も止まった。だけど俺の超回復力は死ぬことを許さない。
 ジュエリは俺の下半身に鎌を突き刺した。鎌は俺の下半身を侵食し全てを飲み込んだ。

「次はアイツらにゃ」
「あ、あいつら?」
 しゃべることも難しい身体で俺はジュエリに質問した。アイツらがダレなのかと言うことを。

「なんにゃまだ生きてたにゃか?」
「アイツらって誰だ、誰のことだ」
「決まってるにゃ、雌豚と偽勇者のことにゃミリアスしゃま以外は皆殺しにゃ」
「目的は俺だろみんなは関係ないじゃないか」
「だめにゃジュエリの気が収まらないにゃ。だから皆殺しにゃ」
 このままだとミスティアがみんなが殺される。それは嫌だ何としても、どんなことをしても助けないと。

「やめてくれなんでもするから、ハコブネにも行くから皆を殺さないでくれ」
「何いってるにゃお前はここで死ぬにゃ、ペットにはもうしないにゃ」
「お、俺はどうなっても良いから、だから!」

『自己犠牲』
 邪骨精霊龍様の声が聞こえる。邪骨精霊龍様の力ならアイツを倒せる。

『お願いします、俺はあなたの兵になっても構わないだからアイツを倒す力をください』
『……それで良いのかサグルよ。それがお前のすべてか?』
 ミスティアを助けるためなら俺はどうなっても……。

 ”俺がお前を守る、世界中の人間がお前を汚れてると言っても、俺はそれ以上に綺麗だと言おう。だから二度と自分が汚れてるなんて思うな。ミスティアが傷つくことなんて、何もないんだから”

 俺のいつかの言葉が響き渡る。そうだ、俺は忘れていた彼女を絶対に守るって何度も約束した。ここで俺が死んでどうする。死んでミスティアを助けられるのか?

 助けられない。ならここで勝って未来を掴むんだ!

 その時、世界が暗転して俺は闇の中にいた。
 いつのまにか俺の前に一人の男がたっていた。

「ここは? それにあなたは?」
 男は俺の問いにニヤリと笑うと玉座をどこからか取りだし深々と座る。
「始めましてサグル。私はアキト、最初のウルガスの勇者にして最後の勇者だ。そしてお前が崇める邪骨精霊龍でもある」

「邪骨精霊龍様? に、人間だったのですか?」

「ああ、あの大きい方の星生まれの地球人だ」
 男が指を指した方を見ると虚空に二つの月が浮かび上がる。

「地球人? 真奈美さまと同じ……」
「私はこの星の人間が嫌いだ、だがお前は魂の無い作られた存在。それ故に私はお前に悪感情はない。だが作られたはずの魂の無い人間が愛を語る。そして愛する人間はこの世界の人間。まるで昔の私を見ているようでな」
 そう言って今の話は無しだと言わんばかりに手を振る。

「魂の無いお前が愛を語る。それは俺にとって好ましいものだった。だからお前には猶予を与えた、お前の愛を見てやろうと思ってな」
「俺の愛はあなたの望むものだったのですか?」
 だが俺の問いにアキト様は首を振る。

「愛に形はない、人それぞれ千差万別だ。ただ、お前の愛に確固たる信念があるかを見せてもらっていたのだ。そしてお前は強い意思をもって好きな女を守るといって見せた。だから私はお前に力を貸すことにした」

「そうだったのですか」

「ただな力を与えることはできる。だがその変わり次に死んだとき、お前の魂は私のものになるそれでも力を望むか?」

 人は死んだら普通は生き返れない。

 だから一瞬一瞬を大切に生きることができる。

 俺は復活できることで逆に臆病になってしまった。なら、元に戻れば、死が命を奪うなら俺はまた強くミスティアを守ることができるはずだ。

「おねが――」
「パパ回りくどいよ、お前が気に入ったから力を貸してやるで良いじゃない」
 俺の声に被せて、闇の中から一人の少女が現れアキト様の肩を叩く。

「カグヤ、人の精神世界に勝手に入ってくるなと何度いったら」
「またやらしい本作ったんでしょ? ママに告げ口しちゃうよ」
「やめてくださいお願いします」
 そう言うとアキト様は少女に土下座をする。え? え?

「大体さっきから聞いてれば普段俺って言ってるのに、なに私(拡張高く)って? 笑い死んじゃうわよ私」
「神なんだからある程度威厳を見せないとダメなんだって。もうパパ涙出てくるから本当許して」

「ええと、アキト様その方はどなたでしょうか?」
「ああ、この娘は――」

「まった、まった、私に自己紹介させて。私はカグヤ、そこにいる邪骨精霊龍アキトを父に持ち地球神ウルトスから生まれた神、邪骨竜神カグヤよ」
 そう言うとコートの裾をあげて少女はニコリと笑う。

「いや、カグヤちゃん勝手に邪骨竜神とか作らないでね? 君普通の神様だからね?」
「なんでよ、パパの血も受け継いでるんだから邪骨竜王でもあるんでしょ?」

「うーん、それはそうだけど可愛いカグヤちゃんに邪骨とか似合わないでしょ」
「はぁ、また親バカですか。パパったらいつもこうなのよ」
 そう言うと少女は屈託の無い笑顔で俺を見る。ミスティアとは違うタイプの笑顔だが、見ていると心が落ち着いてくる。

「うおっほん!サグル君、君ねうちの娘に手を出したらただじゃおかないからね? 次元の隙間に放りこんで二度と現世に戻れないようにするからね?」
「手なんか出しませんよ!」
 俺の言葉にカグヤは頬を膨らまし俺の胸に指を当てグリグリとする。

「ふーん君好きな人がいるんだね。名前はミスティアね。うん? この子好きな男いるじゃない」

「分かってますよ、それでも良いんです俺は彼女を守れればそれで良いんです」
「ふ~ん。君カッコウ良いね。パパ、この子私にちょうだいよ!」

「「は?」」

「私、この子気に入っちゃったよ、お婿さんにする」
「ダメに決まってるだろ! この子パパのお嫁さんなんだから」

「「え!?」」

「いや冗談だよ冗談? ここ笑う所だからね? もうカグヤちゃん本当勘弁してください今大事な話してるから」
「はいはい、じゃあ続きどうぞ」
 アキト様がおどけて手を前に出すカグヤ様に辟易したようすで椅子に座り直すと少し考え口を開く。

「まったく。ええとどこまで話したっけ?」
「あ、力を得ると不死ではなくなると」
「ああ、そうそう。でどうする? なんか軽くなっちゃったよ、カグヤちゃんのせいだよ?」
 そういわれたガクヤ様は顔で不満を表す。アキト様はそれを見て片手で謝るポーズをする。

「お願いします、こんなところで死ねないんです、俺はミスティアを守るって約束したから」
「ふむ、良かろう。私は大事な人を救えなかった、お前なら私に出来なかったことができるだろう」

「できなかった?」
「大事な人を助けられなかった、二度目の時にも守れなかった。お前はそんな愚か者になるなよ」

「あなたの好きな人はどうなったのですか?」
 アキト様はアゴに手を当てると少し考えて重そうに口を開けた。

「まだそちらの世界にいる、青髪の一族、その種族に必ず生まれる。そしてアイシャの生まれ変わりは必ず青髪に紫色が挿す。それは私との魂の繋がりによるものだ。私は彼女を守るためにウルガスのシステムに関与して、彼女だけが使える魔道具と人を送った。その人が狼人であるお前達だ、お前達獣人はアイシャの意思に逆らえない心が囚われどんな命令にも従うようになる、だからお前が好きな女の側にいたいなら、青い髪の女には近づくな」

「わかりました。その方に近づかないことにします」
 俺の言葉にカグヤがクスクスと笑いながらアキト様に寄りかかり淫靡いんびな表情を見せる。

「笑っちゃうよね、パパ今でもその女のこと好きなんだよ50億年間思ってるんだっけ?」
「50億年!?」

「そうそう、それでそれがママにバレて今封印されてるのよ、ママにね。パパはいつでもこの封印解けるんだけどママが怖くて引きこもってるのよ1万年程ね」

「……」

「ちょ、カグヤちゃん本当威厳無くなるからやめてね?」
 アキト様はため息を一つつくと佇まいを直し俺に向き直る。

「お前にはすでに私の魂を与えた。私の魂を分け与え本当の生物となった。お前はもう魂なき生物ではない。力を欲するなら唱えよ」
 アキト様は一拍置くとその言葉を俺の心に刻むように言った。

「”邪骨精霊龍ノ絆ドラゴンドライブ”と」

 俺の身体が魂が邪骨精霊龍アキト様とつながったのが分かった。力が知識があふれんばかりに流れてくる。

「これがミスティアを守る力」
 いや、ミスティアを守るのは俺の心だ。力じゃない。

「そうだそれで良いサグルよ。その心で好きな女を守って見せろ」
「ありがとうございます」

「では行けサグルよ、お前の未来に幸あらんことを」
「あー待って待って、私からもプレゼント」
 そう言うとカグヤ様は俺に軽い口づけをした。

「「!!」」

「なにしてんのカグヤちゃん! お前も避けろよサグル!」
「え? え? えええ!?」
 なんで俺キスされたの? あ、やばいアキト様の目が怖い。

「婚約のキスですよ?」
「いえ、俺には好きな人が」

「ああ、大丈夫よ私寿命長いからサグルが死ぬの待ってるね?」

「カグヤちゃんその言葉だけで怖いよ、サイコパスかな?」
「ママにあることあること言いふらしてやる」

「ごめんなさい本当に許してください」
 そう言うとアキト様は再び土下座をした。秘密が多い方なのだろうが子育てと言うのは存外大変なのだな。

「あ、サグルはもう行って良いから。というかもう帰って!」
 アキト様が土下座しながら手をシッシと振る。

「アキト様本当にありがとうございます。俺は……」
「ああ、良いからはやく行け。……期待してるぞサグル」

「はい!」

「じゃあねサグル死ぬの待ってるから」

「あ、はい」

 視界が暗転して世界は元に戻る。
 ジュエリが俺に鎌を下ろし命を刈り取ろうとしていた。

邪骨精霊龍ノ絆ドラゴンドライブ!!」

 俺の身体に邪骨精霊龍様の力が満ちる。怒りや悲しみそして愛に満ちた心、それらが渦巻きあって俺に力を与えてくれる。これが魂の叫びと言うものだろうか?

 目の前のジュエリの鎌を下ろすモーションがえらく遅く感じる。俺はジュエリの持つ鎌を蹴り飛ばし鎌を吹き飛ばした。吹き飛ばされた鎌はくるくると空中を回り床に突き刺さる。

「にゃ! なんでこんな一瞬で身体が回復するにゃ!?」

 俺の身体はすでに傷一つなく完璧に修復されてる。惜しむらくはほぼ丸裸だと言うことだ。と言うか身体に毛が生えてない。人間の身体だ。

「おい俺は今人間か?」
「ジュエリの攻撃を防ぐ化け物が人間な訳がないにゃ!」

「そうか?」
 鼻や口が前に無い頬も裂けていない。耳も人間の位置にある。
 どうやら戻れたようだ。
 とは言えこのままじゃ戦いに支障がでるな。

邪骨魔装ジャアム

 黒紫の霧が虚空からいでて俺を覆うと身体に鎧が装備された。それにともない身体の中の力が爆発的に上がる。

「にゃ! 嘘にゃ。なんでおみゃえからシンヤ様と同等の力の渦を感じるにゃ。にゃ、むしろそれ以上の……。そんな馬鹿なこと無いにゃ。神は一人にゃ! お前は殺すにゃ!」
 ジュエリは吹き飛ばされた鎌を拾うと、俺めがけ突進する。しかし、ジュエリのすべての動きが手に取るように分かる今の俺ではそうそう当たるものではない。
 俺はジュエリの後ろに回ると鎌を取り上げ四肢の間接を粉々に砕いた。

「ぎゃにゃぁ!!」
 四肢の間接を全て壊されたジュエリは立てなくなり仰向けに倒れ俺をにらむ。鎌の刃を首元に当て俺は問う。

「選べ死を受け入れるか降伏するかを」
 ジュエリの境遇をミスティアに重ねているのか俺はジュエリに自分の運命を決めさせた。

「舐めるにゃ狼人! お前はここで死ぬにゃ。ジュエリと一緒に死ぬにゃ!」

「これ以上お前に勝ち目があるとは思えないが?」

「良いにゃ馬鹿にするが良いにゃ、どうせジュエリもお前も終わりにゃ。”太陽ノ終日フォールンサン”」
 ジュエリがそう言うと外が眩しいくらいに明るくなる、外はすでに夕方で薄暗かったはずなのだが。
 蒸し暑い。気温が上がってる? と言うか暑いを通り越して熱い。

「何をした?」

「疑似太陽をこの国に落とすにゃ、どんなに素早いやつでも、もう逃げられないにゃ。にゃはははは」
 ジュエリは大口を開けて気が狂ったように笑う。疑似太陽? そんな魔法まであるのか中々に天使と言う存在も化け物だな。

 しかし……。

「残念だったな、今日の俺は化け物を越えた化け物だ、その力は無限大だぞ」
 月は出ている邪骨精霊龍アキト様の力が俺の身体に溢れんばかりに流れ込んでくる。

「今さら何をしても無駄にゃ!」
 俺は鎌を投げ捨て虚空から一本の剣を取り出した。

 救世王ノ剣メサイア(一式)”時ノ支配者クロッセル

 最初の勇者アキト様が作りし神剣デバイスを越える一振り超神剣タブレット
 剣に書かれた神代文字マントラが光り輝く。
 俺の中の膨大なマナを吸い上げ力に変える。その力を使い俺は呪文を唱える。

「”エルル全てのラシルものよゾラク凍りつけラバル先にホクル道はボラク無くナクル後ろにもホクル道はボラス無しヤロス発現せよ”」

 世界が色を失いすべてのもの・・が凍り、この世界で動くものは俺だけになる。分子や素粒子に至るまですべて凍りつき、時すらもこの世界では凍りつく。
 今動けるものは俺だけだ。神すらもその動きを止める。そしてこの暗闇の世界で俺だけはすべてを知覚できる。

 凍った世界を移動し外に出ると目の前に凍った光の玉が現れた。

「厄介なもの呼び寄せやがって」
 俺は上空にジャンプするとその凍った光を剣で叩き壊した。凍った光りはヒビが際限なく走り白濁する。これで粉々になったんだが念のため凍った空気を蹴り再びジャンプをすると、その光りの固まりに剣の腹でフルスイングを叩き込んだ。そのまま反動で落下し地表に戻った俺は凍らせた全てを溶かした。

 溶かされたもの・・達は色を取り戻し、活動を再開する。

 粉々になった光りは四方八方に飛び散り、そのほとんどは空を飛び越え宇宙にまで飛んでいった。だが、いくつかの上がり損なった光りの欠片は大地に落ち地表を焼いた。

 一瞬ミスティアのいるであろう隣国まで焼いてしまったのかもと焦ったが、被害はこの国だけで収まっているようだ。生きてる人が一人もいないのが不幸中の幸いだったな。

 俺の目は邪骨精霊龍アキト様とつながっており、この世界を俯瞰で見ることができる。ただし月が出ているときだけだが。

 城内に戻るとジュエリの姿が消え失せていた。

「逃げたか?」
 邪骨精霊龍様の目でも位置が把握できない。つまり世界の裏かハコブネに逃げたと言うことだろう。ハコブネは邪骨精霊龍アキト様の力が届かないといっていてしな。

「だけどな救世王ノ剣メサイア(四式)”次元ノ支配者ディメルソル”」剣の形が変わると俺の目にジュエリの姿が写る。一振りすればジュエリを殺せるだろうが。

「……やめておくか」
 あれはまかりなりにも神の使者である天使だ。真奈美様も天使には関わるなとおっしゃっていたし。
 この世界で住むなら神とはなるべくもめない方が良いのだろう。命拾いしたなジュエリ。
 俺は救世王ノ剣メサイアを虚空にしまうと空を仰ぎ見て邪骨精霊龍アキト様に感謝した。
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