2代目魔王と愉快な仲間たち

助兵衛

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4話 除霊in異世界

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さぁそんなこんなかくかくしかじかで始まりました大農耕バトル!

圧倒的膂力を誇るオークが鍬を振るう度に轟音と土砂が巻き上げられる!
あぁ! ゴブリンが何匹か吹き飛ばされた!

耕されたは良いもののグチャグチャな土壌をゴブリンが整地していく! 
あぁ! またゴブリンがオークの余波で吹き飛ばされた!

最後に爺やが目にも止まらぬ速度で麦の種を撒き、終了ー!!!!
あぁ! ゴブリンが爺やに当たって吹き飛ばされた!

「おい、めっちゃゴブリンの被害出てんじゃん!!! 」

ほわわーっと謎の光で哀れなゴブリン達の傷を治してやりながら叫ぶも、農作業に夢中な魔物らを止めることは出来なかった。

「それにしても凄いな、これ、えっとヘクタールとかの単位じゃピンと来ないな。とりあえず凄いな、目に見える範囲全部耕されてるじゃん」

「オウ、ハタケ、オワリマシタ」

「おーっす、お疲れ様。とりあえずここからは俺の仕事だし、ゆっくり休みながら目を見開いて耳の穴かっぽじって俺の仕事っぷりを後世に語り告げよ」

「ハハッ! 」

オークが耕し、ゴブリンが種を植えた畑に和也がそっと手を触れた。
腕が徐々に輝き出し、光が土に吸い込まれていく。

「んーーーーーー、育てー!!! 」

……ぴょこ。

植えてから間もない土から芽が顔を出す。

続いてニョキニョキと成長していく、早送りビデオを見ているかのような異様な光景が暫く続き、数分が経つ頃には辺り一面黄金の麦畑が広がった。

「よし、うどん食い放題だな。うどんの作り方、知らんけど」

「オウ! オツカレサマデス! 」

「うんうん、収穫とか加工とか君らでやってね。俺何もやり方知らんし」

「オマカセクダサイ! 」

農耕バトル後半戦、収穫フェイズが開始されるのを尻目に和也は坑道への帰路についた。
爺やが横を歩く。

「そう言えばさ、人間ってこの辺いないの? 」

「ニンゲン、コノアタリ、チカヨリマセン」

「なんで? 戦争に勝ったのに」

爺やが空を指さした。

「オソロシキ、ドラゴン、イマス。マモノマケタ、デモ、ドラゴン、マケナカッタ」

爺やの言葉を要約するならこうだ。

人類は魔物に勝ったが、それは全面的な勝利では無くある所では勝ち、ある所では負け、結果的に追い詰めたり補給を絶たったりして人類は勝ったらしい。
そんな数多の戦場の1つであるここは、1度も負けた事が無い人類にとっては目の上のたんこぶような場所であったそうな。

その理由はひとえに、ドラゴンがいたから。

ドラゴンと言えばあらゆる創作で最強かそれに次ぐ能力を持っている強力な魔物の中の魔物であるが、爺やの話を聞く限りこの世界のドラゴンもやはり規格外だった。

ドラゴンには3つの特殊能力が存在する。

1つは竜化、普段は省エネモード、もとい人型のドラゴンはこの力を使いよく知られる無敵のドラゴンに変身する、人型の時は飲まず食わずで数百年耐えれるらしい。
2つ目は竜結界、ドラゴンを常に包む結界でドラゴンより強い魔力の持ち主でないと突破出来ない無敵の結界らしい。
3つ目は竜転生、死んだら何年か後、卵になって復活する。

「……いや、逆になんで魔物負けたの? 」

「ウウ、メンボクナイ、デス」

こんな化け物が魔物サイドにいながら大局で負けたって事は、人類相当頑張った。
偉いぞ人類、でも今は魔物に養われるニートなので人間の肩は持てない。

「ユウシャ、ドラゴン、オンナジクライツヨカッタデス」

「勇者? え! そんなん居るんだやっぱ、ファンタジー……」

「ユウシャ、マエノオウ、アイウチ」

「あ、もう居ないのね。てか先代の王様戦死したんだ、俺って2代目? そもそも選考基準ってなんなのさ? 」

王の事となると途端に爺やは口をつむぐ。
言い難い、と言うより伝え辛そうな感じだ、魔物の言葉を喋れないのが悔やまれる。

「まーいいけど。というか、今勇者いないんなら今度はドラゴンと一緒になって勝てるかもな! なーんて、あはは」








「王が人類への再攻勢をご提案なされた」

尚、提案はしてない。

「おぉ!! 誠ブヒか緑の! 」

王が寝静まった後、未だ刈りきれぬ膨大な金の麦畑に最強のゴブリン緑の刃と最強のオーク鉄の猪が、二人っきりで人目を憚り密談を行っていた。
辺りには敵はいないはずだが、念には念を入れなければならない。
それ程までにこれ重大な話であった。

「うむ……」

「どうした、顔色が優れぬぞ。喜ばしい事では無いブヒか」

「確かに、喜ばしい事ではある。しかし再攻勢にはドラゴンの協力が必須であるとも、述べられたのだ」

「ッ! ……なるほど、お主の懸念も理解出来たブヒ」

ドラゴンは確かに無敵とも呼べるほど強力で、負け知らずの魔物の中の魔物と呼べる。
しかし、どうしようもないほど偏屈でプライドが高いのだ。
かつての戦争の際も王の呼び掛けに答えたは良いが、自分の決めた場所のみを守ると言って決して動こうとしなかった。

「しかし、当時は戦乱の真っ只中だったブヒ。王も直接出向いて話をする事が出来なかったブヒ、しかし今ならば」

「うむ、流石のドラゴンと言えど王自ら説得すれば参陣してくれるに違いない」

「では、何時行くブヒ」

「早速、明日出立する。留守を頼めるか」

「クククブヒ。誰に物を言っておる緑の、未だ我が刃錆びる事も欠けることも無いブヒよ」

「ふっ、背中を任せるにこれ程頼もしい男もおるまい」

王、当事者の進藤和也が何も知らず爆睡をかます裏で世界を揺るがす大きな話が進みつつあった。









「爺やー、どこ行くんだよー、もう坑道見えないくらい歩いてるよ? 足がもうパパンのパン……」

「モウスコシ、サキデス」

「えーー……」

麦畑が完成した翌日の早朝、いつもよりずっと早く起こされた和也は爺やに連れられて険しい山道を進んでいた。
何時もなら何のかんの言ってついてくるゴブリンも着いてきておらず、爺やと二人っきりの道中だった。
ロマンスの欠片もありゃしない。

「ふぅー……なんか空気薄い気がするなー。そんなに登ったっけ? 」

「ココ、ドラゴンノス、ドラゴンマリョク、ツヨイ、マナ、ミンナ、ドラゴンノミカタ」

「ひぇー、この辺ドラゴンの巣? おっかないなぁ」

皮の水筒に入れた水を1口飲み、少し先を歩く爺やを見据えて少し歩を早める。
肌がひりつくというか、産毛が逆立つような奇妙な感覚がずっと続いていた。
マナが味方する、というのは土や空気、木々やその辺の命無きもの全てに影響を及ぼしている、って事らしい。

魔法関連の知識は説明が抽象的過ぎて理解するのを諦めた。
和也は国語が苦手である。
ちなみに数学も苦手であり、社会も生物も科学も苦手で特に英語が弱い、次点で体育が不得意であり、唯一の得意教科は保健体育だ。
付きっきりで勉強を教えてくれた妹を良く困らせたものだ。

「ふぃー、ちょっと待って爺や。人間そんなに体力無いんだって」

額に滲み目に入ってしまった汗を拭う。
目を開けると。

爺やは居なくなっていた。

「あれ? 」

先へ行ってしまったのかと少し無理して走るが、前方には見つからない。

脇道も無く一本道だ、逸れる事はありえない。

「爺や? 嘘だろこの歳で迷子とか恥ずかしいよ、どうしよう」

気付けば辺り一面深い霧に覆われている。
さっきまで少し息苦しい程度だったのが、今はまるで貧血にでもなったかのように頭がふらついてぼーっとする。

「爺やー……」

気分まで憂鬱になってきた。
これもドラゴンの味方をしているというマナの仕業なんだろうか。


……


「なんか……」

「イラっとしてきたぞ」

憂鬱から一転、気分の折れ線グラフは激しいVの字を描いて急上昇をし始めた。
グラフが目指すは怒髪天、激おこプンプン丸ムカ着火ファイヤーである。

この時、貧血に似た症状やら異世界転移やらのストレスから和也から完全に常識が失われた。

……元々こんなんだった!

「なんだよドラゴンってよぉ、偉そうにしやがって! 」

憂鬱になったってどうなる訳でも無い。
なら、精一杯生命の限りドラゴンを舐め腐ってやろう。

脱いでやる!!! 

は? とお思いの読者諸兄方、こんな話が体験談があるのをご存知であろうか。

某巨大掲示板に投稿された心霊体験にて、霊の溜まり場となった自室から霊を追い出すべく投稿者自身が行った画期的除霊法、それこそが脱衣を前提としたびっくりするほどユートピア除霊法である。

この除霊法には特別な修行等が必要無い代わりに人間として大事な何かを投げ出すという強い覚悟が試される。
裸になるだけでは無い、近所迷惑なぞ考えず後先の事にも目を瞑り、全裸で尻を叩きながら「びっくりするほどユートピア! 」と叫ぶのである。
それも1度や2度ではない、投稿者は10分ほど続ければ解脱状態に到れると記述してあるがそれは1例に過ぎない。
まして相手は最強の魔物、ドラゴンである。
生半可なユートピアでは太刀打ち出来ないだろう。

「キャストオフ! 」

まずセオリー通り和也は服を全て脱ぎ去った。
エチケットとして靴下こそ履いて居るものの全裸である、ネクタイが無いのが悔やまれた。

パァン!!!

右手で右のケツを叩く。

高所特有のひんやりとした空気が赤く腫れたケツに沁み渡る。

パァン!!!!

左手で左のケツを叩く。

ブルン! と揺れたケツにから汗が迸った。
ほんとに汗か?

パァン!!!!
パァン!!!!!!
パァン!!!!!!!!

「あぁぁぁぁぁぁ!!!! びっくりするほどユートピア! びっくりするほどユートピア!! 」

全身全霊を込めてケツを叩き、そして叫んだ。

病的なまでに一定のリズムを刻み、しかし情熱を忘れる事無く魂のビートが深い霧の中を駆け巡る。

「びっくりするほどユートピアァ! ……ハッ! 」

ここで和也は天災的な発想に至った。
びっくりするほどユートピア除霊法が近所迷惑を顧みない強固な覚悟を試されているというのであれば、こんな山中でこの方法をして意味が無いのでは無いか。

常人であればここで我に返り、いそいそと服を着るであろう。
当然除霊は失敗である。

しかし! 和也はもう仕方の無い馬鹿であった! 

「なら! 逸れてしまった爺やに! 坑道で待つゴブリンやオーク達に! 聞こえるように! 」

パァン!!!!!!

ケツを叩く。

「響かせてやるぜ! 魂のドラム! そしてシャウトを! 」

パァン!パァン!!パァァァァン!!!!

「うぉぉぉぉ! びっくりするほどゆ」

「何してるお前! 」

「ぐはぁ!?? 」

何者かに顔面に向けた容赦ない飛び膝蹴りを受け、和也が思いっきりすっ転ぶ。
鼻を抑えなが立ち上がると、顔を真っ赤にした美少女が涙目で着地したのが見えた。



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