2代目魔王と愉快な仲間たち

助兵衛

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6話 龍の嫁入り

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「緑の! 一体どういう事ブヒか! 何故お主だけ帰ってきたブヒ! 」

「……」

「何とか言うブヒよ! 緑の刃! 」

取り乱した鉄の猪を一族のオークらが必死になって止める。
それを緑の刃はじっと聞き、俯いているだけであった。

「王はどうしたブヒか! 」

「山頂付近にて、ドラゴンと会っておる」

「それは! 分かっておるブヒ! 俺が聞きたいのは、何故あれ程までに怒り狂ったドラゴンの元に置いてきたのかと言うことブヒ! 」

緑の刃は王を置いて帰ってきた。
山頂にてドラゴンと会う、それは当初の目的通りでなんの問題も無い。
しかし、そのドラゴンが何故か怒り狂い魔力の余波でせっかく王が整えてくれた土地のマナまでもがまた狂いだしている。

「ドラゴンから頼まれたのだ、王と一体一で話がしたいと。何故、これ程までに怒っているのかは分からん……王と口論にでもなっているのであれば……」

「いや、それはないブヒ。ドラゴンは良くも悪くもあらゆる存在に無関心、ならドラゴンは自分と同等以上の力を持っている王を警戒しているのではないブヒか? 」

ある程度冷静なった鉄の猪が荒い息を吐きながら必死に考えを纏める。

「ドラゴンと王の直接対話、どう転ぶにしろここが魔物の転機となろう」

「……我らはここで祈るしか無いというブヒか。天上の存在による対話、一体どのような論戦が繰り広げられておるブヒか……」

「王……」

2匹は廃村から山を見上げた。
信ずる王、恐ろしきドラゴンの行く末を案じ、ただ彼らを待つしか出来ない自分を恨んでいた。







「おおっとっとと、裸の女の子がむっおっふ、むふっ、おっふ、おっ……」

「キモイ声を上げるな魔王ぶち殺すぞしかもなんだこの体40年前とは比べもんにならん程弱くなっとるではないか」

目が覚めると裸の女の子が目の前にいました。

一昔前のエッチめな漫画やアニメにありがちな展開で、目が覚めた瞬間は興奮MAXだった和也と和也の和也。

しかし、鋭い爪が自分の首元に添えられているのに気付き、ピクリとも動けないでいた。
和也の和也も動かなくなった。

パンツは冷や汗なんだがアレなんだか良く分からない液体でぐっしょぐしょである。

頼むから汗であってくれ。

そう言えばびっくりするほどユートピアをする前に水を飲んでたっけ、あら? 嘘やろ?

いやいや、流石にそんな短時間で体外へは出ないだろう。

出ないよな?

「魔王どんなお前でもお前はお前なのだ小便を垂れたくらいでそう百面相するものでは無い自信を持てその歳で小便を漏らすなぞお前くらいだぞ」

「うわぁぁぁぁ!!! 言った! 言ったなお前! 普通見て見ぬふりするとか気を使ってさり気なくとかさぁ!! そもそも君が蹴ってきたり裸だったり爪で脅したりしなきゃ嘘、君、裸じゃん。まだ裸じゃん」

「五月蝿い馬鹿め元はと言えばあんな巫山戯た真似をしているお前が悪いのだ分かったかお前が悪い」

突き付けられていた爪から少しでも距離を取るようにして後退り、目を両手で覆う。

「分かった! 分かった! あのびっくりするほどユートピアは俺が悪かった、だから服を着るんだ。じゃないと今度はもっと凄いのが出ちゃうぜ」

「馬鹿めドラゴンは服なんぞ着ない人間と同じにするなお前が従えてるオークやゴブリンも産まれたままの姿だったろう」

「いやいや! 爺やとかオークみんな最低限なんか着てたし! 大事な部分はきちんと隠してたし! 」

む? と言う顔をした美少女が裸足でかけて行き道から外れた崖、多分廃坑がある方に目を凝らした。
小さく何かを唸っている。

「あいつら布なんか巻きおってそうか魔王お前の入れ知恵だなそういえば40年前も裸は恥じらいがどうの言っていたなお前そんなナヨナヨした事を言っているから負けて死んだんだぞお前は」

「そりゃ言うでしょ普通! っていうか40年前のは俺じゃねぇし」

「ふん死の概念を乗り越えたくらいで記憶喪失になりおって安心しろ転生慣れした私が色々と教えてやるとりあえず下に降りるぞそろそろ山にも飽きてきたのだ」

濡れてしまった下半身をずっと気にしている和也の手を美少女が引く。
引く、と表現したがそんな可愛いものでは無かった、まるで米俵のように担ぎ上げられた和也はもう何がなんだか分からなくなって叫ぶ。

「ちょいちょい! その格好で行くの!? やめよ!? 廃坑とかゴブリンいっぱいいるんだよ? 飢えた狼なんだよ? 何か着て! 」

「五月蝿いぞ魔王黙っていろ見せて恥ずかしい肉体のつもりは無いさあ行くぞ今度はちゃんと守ってやるからな」

「違う違う! 君の裸を他の人に見られたくないんだ分かったか! 君の柔肌を見たのは俺だけにしときたいんだよぐへへおっと、違う今のは違うちょっと生々しい所出ちゃったけど前半だけ聞いて」

「……………………………………………………………」

急に黙りこくったドラゴンに放り投げられた。

「ぶぺっ」

もんどり打って非難の視線を送るも、まるで石像になったかのようにピクリともしない。

何分か経ってようやく口を開いた。

「……………………………………………………おう」

そう言って無表情のまま和也の上着、ジャージを剥ぎ取る。

「えっちょ!? 何故!? 何故?! 」

剥ぎ取ったジャージを着て、また和也を担いで歩き出した。
何かを着て、とは言ったがまさか剥ぎ取られるとは思わなかった和也はジャージの上が無くなった分、少し肌寒くなったので縮こまる。

「あの、言い難いんですけど、何も着たり履いたりしてないのに上着だけ着るとですね、へへ、ちょっと、むしろ逆にエロいなーって」

「ふんすふんすエロいと言うのは欲情するという事だろう魅力的という事だ分かった魔王私は魅力的なのだしかしもうお前以外には肌を晒さんふんすふんす誇れ魔王お前が私の裸を見れる唯一の存在となったのだふんす」

妙に鼻息荒く興奮している美少女は、和也に構わずずんずん山を下っていく。

「……あれ、もしかして話の流れ的に君ドラゴン? 」

今更な事を、視線の先でユラユラと揺れる美少女の尻尾を見て気が付いた和也であった。








「ええい! まだブヒか! 遅過ぎるブヒ! 」

「落ち着くのだ鉄の、まだ何かあったと決まった訳ではない」

鉄の猪が腰掛けていた岩を踏み砕いた。
土煙を鬱陶しげに払い除け、山頂に向かって吠える。

「落ち着いていられる訳ないブヒ! 王に何かあれば、我々は……お終いブヒよ、今度こそ! 二度も、王を死なせてしまうなど耐えられんブヒ……」

魔王がドラゴンと相対して数時間経とうとしていた。
身体の芯から凍えるような怒気は消え、今は静寂が山を包んでいる、それが逆に不気味で不安を煽った。

配下のゴブリンやオークらも落ち着きなく、畑仕事に集中しきれていないらしい。
無理もない。

「……もう待てんブヒ、救出隊を選抜しお迎えに上がるブヒ! 」

「落ち着けと、先程から申しておろう! 今我らが動きドラゴンを無用に刺激したとなれば」

「そのように慎重が過ぎるブヒから四十年前も! 」

ざわ……

「ッ! 」

「ブヒ!? 」

噛み付く程に詰め寄り合い口論していた二匹が、バッと山頂へと続き道に視線をやった。

肌がひりつく、冷たいナイフで撫でられ続けているような恐ろしい、生殺与奪の権を完全に掌握されたような感覚。

ドラゴンだ。

「黙れ、魔王が起きる」

人型をとっていたドラゴンは肩に魔王を担いでいる。

普段何も身に付けていないドラゴンは、山を登る直前まで魔王が身に付けていた上着を羽織っていた。

「ドラゴン……王とどの様な」

「黙れ、と言った」

「くっ……」

質量を持っているかの如く重く冷たい殺気、緑の刃は何も言えなくなり歯噛みした。
格が違う、命の段階が違う。

ドラゴンは魔王を木陰に横たわらせ、穏やかなその寝顔を満足気に確認すると、緑の刃と鉄の猪の元に歩み寄った。

「王を、どうしたブヒか」

「貴様、私は先程……いや、良い。少し自慢したい。声を落とせ、魔王が不快に感じたなら、そう私が受け取れば殺す」

そう言うとドラゴンは羽織っていた魔王の衣服を愛おし気に撫でる。

「妻になれと言い寄られた、プロポーズというやつだ」
 
言い寄ってない。

「な、なんと」

「この衣服はその証である、私がこれ以上他の雄に肌を晒さぬようにと持たされた」

剥ぎ取った。

「魔王と共に戦う、しかし配下としてでは無い、伴侶としてである。私は魔王と永遠を生きる」

普段のこの者を知る者からすれば絶対に想像出来ない、慈しむ聖母のような薄い笑みを浮かべ、ドラゴンが天を仰いだ。

世界の新たな節目がすぐそこにあるのを感じた。

尚、和也は嬉し過ぎてスキップしていたドラゴンの肩に顎をぶつけて失神中である。







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