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The birth of a girl___少女の誕生

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くらい、暗い道。
眼に映るものは漆黒の暗闇だけだ。
そんな中を、不安になりながら少女は歩く。
4、5才くらいだろうか。
ストレートな金髪に、青眼。
少女ながらも、美しい人間だ。

「ここ....どこなんだろう?」

声を発しても返ってこないし、真っ暗だし...
それに、なぜか
うおん、うおんというこえ
耳にずっと響いている。
不快な音で、嫌いな音だ。
為す術もないが、だからこそ歩き続ける。
否、歩き続けるしかないのだ。

「道、なんだから....
きっとどこかに、繋がってるよね..?」

でも、まともな思考ができたのは
ここまでだった。

『あなたは、悪魔だ....』

なに...?何なの...!????
何か...会話が聞こえる....。

『いいえ、私はただのシスターのひとりですもの!!!!
そんな、ただのシスターをころすのですか?』

でも、金髪少女の脳内に響く声は
もしも、反発できなかったとしても
言わなきゃいけない気がした。
直感的に、本能的に。

「やめて....やめて、おかあさん!!!!
ねぇ、やめてよ!!!!!
いちどでいいから、
おかあさんにあいたいよ.....!!」


そう言った。言おうとした。
その脳内の声の主に届いたかは分からないが、
全身全霊で願った、つもりだった。


でも、その少女が願ったとき...
少女の体に、異変が起きた。
というか、起き始めたのだ。

どんどん見た目が幼児退行していき、
最初は普通に二足歩行で歩けていたのが
徐々にはいはい歩きになった。
見た目も、
金髪の4、5才くらいの少女だったのが
手も足も、本当に存在しているあるのか分からないような、
体に細い糸が延びた、胎児の姿になった。

さっきまで、光は見えなかったはずだ。
でもいつの間にか、
目の前が明るくなっていて.....



ドテッ


落ちた、音がした。

おぎゃあ、おぎゃあ、と
その産み落ちた個体は泣き喚く。
つまり、その瞬間、
少女___いや、赤子は
この世に生を受けたのだ。
尊いひとつの命が、ここで____。

だが、状況は
とてつもなく最悪だった。

赤子の母親はすぐそばにいるのに、
首から真っ二つに分かれ、切断されてしんでいる。
未だに血は垂れている。

でも赤子にとってはこれが、
最初で最後の、自分の眼でみた母親の姿だったのだ。


うわぁああん、うわぁあああぁああん....
この産まれたばかりの赤子に、
もう心が宿っているのかどうかは定かではない。
でも、きっとこの泣き声こえ
いきている母親を見れなかったことへの
後悔、悲しみのはずだ。
ならば、存分に泣き続けるべきだ、と思う。
しかし____


『さて、処刑しころし終わったし、もう退散しようか』
『ん.....?』
『まて、これを見ろ』
『あれ、赤ん坊、ですか....?』
その個体は、紅い血で塗れていた。
『どうして、こんな所に....』
さっきまで胎内にいたのだから、
真っ赤なのは当然だ。
『おそらく、今ころした悪魔の...
子供、ではないでしょうか...』
『.......』
『にしても本当、酷いものですよね。』
『それ、お前が言うか....?』

そんな会話がされている中でも、
世間を知らない赤子は、泣き喚いている。



『悪魔の娘....
こいつも、ころすべきだと思うのだが。』
『いや...でも、
生まれてすぐの子をころすのは、
流石にどうかと...』

『まぁ、いい』

『こいつの父親はどういう奴なのかは知らん。が、
儂自身も、気になるのでな...』
『何に、ついて...??』

『そんなの、決まっておるじゃろう。』

一間空け、その男はこう言った。

『ただ儂は、単純に...な、
悪魔と、『普通の』人間の間の子は
普通の人間として育つのか、
それとも
悪魔として育つのか....』

『それが凄く、気になるのじゃよ』

口角を上げてニヤリと微笑む老人処刑執行人___。
その姿は、さながら悪魔のようであった。
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