偽りの神話を打ち砕く者 ~最弱種族の烙印を押された俺、唯一の真実を知るチート能力で世界を救います~

酸欠ペン工場

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第10章

『魂の強さ』

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「見つけた……!」
カイは、割れるような頭痛に耐えながら叫んだ。彼の【真理の瞳】は、集落の外れにある古びた井戸の底に、邪悪な魔力の源を捉えていた。
「カイ、大丈夫ですの!?顔が真っ青ですわ!」
「平気だ……。それより、あの井戸に呪いのトーテムが隠されている。あれを壊さないと、みんなが……!」
能力の酷使で、カイの視界はぐらぐらと揺れていた。

ガロウは、カイの言葉を半信半疑で聞きながらも、民を救いたい一心で井戸へと案内した。その底には、不気味な紋様が刻まれた、黒い獣の骨のトーテムが突き刺さっていた。
「こいつが、元凶か!」
ボルガンが槌を振り上げるが、カイがそれを制する。
「だめだ!物理的に壊しても、呪いは霧散して被害が広がるだけだ!」
「じゃあ、どうしろってんだよ!」

「解呪の儀式が必要だ。僕がトーテムに触れて、呪いの術式を内側から解析する」
カイは、静かに言った。
「その間、僕は完全に無防備になる。だから、みんなに守ってほしいんだ」
「無茶ですわ!そんなことをすれば、あなたの命が!」
ルーナが悲鳴を上げる。呪いをその身に受ければ、どうなるか分からない。
「それでも、やるしかないんだ」

「ふざけるな!お前が死んで、何になる!」
ガロウが、カイの胸ぐらを掴んだ。
「お前のそのやり方は、ただの自己満足だ!俺は認めん!」
「それでも、これしか方法がないんだ!君の民を救うために、僕の力を貸してくれ!」
カイは、ガロウの瞳をまっすぐに見つめ返した。その瞳の奥にある真摯な光に、ガロウは思わず言葉を失った。

儀式が始まった。ルーナが防御結界を張り、ボルガンがその外で警戒する。カイは、意を決して呪いのトーテムに手を触れた。
「ぐっ……あああああっ!」
凄まじい量の邪悪な魔力が、カイの体へと逆流してくる。全身の血管が張り裂けそうなほどの激痛。意識が、闇に引きずり込まれそうになる。
「カイっ!」
「小僧、しっかりしろ!」
仲間たちの声が、遠くに聞こえた。

その時、トーテムから溢れ出した瘴気が、獣の形をとってガロウたちに襲いかかった。
「チッ、面倒な!」
ガロウは、カイを守るように立ちふさがり、大剣を振るう。
(こいつは……。自分の命を懸けて、俺の民を救おうとしているのか……)
力だけを信じてきた彼の心に、今まで感じたことのない感情が芽生えていた。

「ルーナ!術式の解析が終わった!北、東、南西の三つの紋様だ!」
カイが、血を吐きながら叫ぶ。
「それを、同時に破壊すれば……!」
「わかりましたわ!ボルガン、手伝って!」
「おうよっ!」
ボルガンが瘴気の獣を食い止め、ルーナが三つの風の矢を生成する。

「貫け!『トリプル・ゲイル』!」
三つの光の矢が、寸分の狂いもなくトーテムの紋様を撃ち抜いた。バキリ、と嫌な音がして、トーテムに亀裂が走る。
「まだだ!とどめを!」
カイは最後の力を振り絞り、トーて無に手をかざした。
「お前の嘘も、ここまでだ!『真理の光(トゥルース・ライト)』!」
カイの手から放たれた浄化の光が、トーテムを内側から完全に消滅させた。

呪いが晴れ、獣人たちが次々と意識を取り戻していく。その中心で、カイは糸が切れたように倒れた。
「カイ!しっかり!」
ルーナが、彼の体を抱きかかえる。ガロウは、その光景をただ黙って見つめていた。そして、ゆっくりとカイの前に膝をついた。
「……俺の、負けだ」
その声は、静かだった。

「お前の強さは、魂の強さだ。俺の剣、これからはお前のために使おう」
ガロウは、そう言うと、深く頭を下げた。
「ガロウ……」
「族長には、俺から話しておく。お前たちなら、『王の証』を持つにふさわしいだろう」
最強の戦友が加わった瞬間だった。カイは薄れゆく意識の中、仲間たちの顔を見ながら、静かに微笑んだ。
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