偽りの神話を打ち砕く者 ~最弱種族の烙印を押された俺、唯一の真実を知るチート能力で世界を救います~

酸欠ペン工場

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第12章

『神託の聖騎士』

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砂漠を抜け、一行が次なる目的地へと向かう平原で、それは突如として現れた。天から降り注ぐような、圧倒的なプレッシャー。空気が鉛のように重くなり、呼吸すらままならない。
「な、なんだ……!?この威圧感は……!」
ボルガンが、戦槌を握りしめて身構える。
「来るぞ!とんでもねぇのがな!」
ガロウの野性の直感が、最大級の警鐘を鳴らしていた。

彼らの目の前に、音もなく一人の騎士が舞い降りた。穢れを知らぬ純白の鎧は、それ自体が神聖な光を放っている。その顔を覆う兜のスリットからは、感情の読めない金色の瞳が、静かにカイたちを見据えていた。
「神の、使徒……!」
ルーナが、息をのむ。これまで対峙したどの敵とも、格が違った。

「神に仇なす者たちよ」
その声は、聖歌のように美しく、そして氷のように冷たかった。
「我が名はセラフィナ。神託を受けし聖騎士である」
彼女は、光でできた長剣を抜き放つ。
「神の御名において、あなたたちをこの場で断罪します」
それは、慈悲も情けもない、絶対的な宣告だった。

「上等じゃねえか!」
ボルガンが雄叫びを上げ、地面を蹴る。
「面白い。神の番犬がどれほどのものか、試してやろう」
ガロウもまた、大剣を構えた。だが、カイの【真理の瞳】は、絶望的なまでの力の差を映し出していた。
(見えない……!術式も、弱点も、何もかもが光に閉ざされて……!)

戦いの火蓋は、セラフィナの一振りで切られた。彼女の姿が掻き消えたかと思うと、次の瞬間にはボルガンの巨体をいとも容易く吹き飛ばしていた。
「がはっ……!?」
「速すぎる!」
ガロウが放った渾身の斬撃も、セラフィナは剣の腹で軽く受け流す。まるで、子供の遊びに付き合うかのように。

「罪深き者には、裁きの光を」
セラフィナが剣を天に掲げると、無数の光の矢が生成され、雨のように降り注いだ。
「くっ……!風の障壁(ウィンド・バリア)!」
ルーナが咄嗟に防御魔法を展開するが、光の矢が当たるたびに、結界に大きな亀裂が入っていく。
「だめですわ、威力が強すぎて……!」

「なぜ、抵抗するのですか」
セラフィナは、心底不思議そうに首を傾げた。
「神が定めた秩序こそが、この世界の絶対的な善。それに逆らうあなたたちは、ただの世界のバグなのです」
【絶対的正義】【揺るぎなき信仰】【慈悲なき憐憫】
カイの瞳に映る彼女の感情は、悪意とは程遠い、純粋なものだった。だからこそ、恐ろしかった。

「違う!」
カイは、恐怖を振り払うように叫んだ。
「僕たちの未来は、神やあんたが決めるものじゃない!僕たちが、自分たちで決めるんだ!」
「愚かなことを。それは自由ではなく、混沌です」
セラフィナの瞳に、初めて憐れみの色が浮かんだ。
「ならば、その幻想ごと、あなたを救済しましょう」

セラフィナの全身から、さらに強い光が溢れ出す。
「ガロウ、右から!ボルガン、正面から抑えろ!」
カイの指示に、仲間たちが動く。
「おうよっ!」
「任せろ!」
ボルガンが盾となり、ガロウが死角を狙う。ルーナの魔法が、セラフィナの動きをわずかに牽制した。

だが、彼らの連携も、絶対的な力の前にては無力だった。
「無駄なことを。あなたたちの絆も、神の秩序の前では、儚い夢にすぎません」
セラフィナの剣が、天を突く。空に巨大な魔法陣が描かれ、世界そのものを終わらせるかのような、絶望的な光が収束していく。
「さあ、終わりです。光に還りなさい」
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