『 使えない』と勇者のパーティを追い出された錬金術師は、本当はパーティ内最強だった

紫宛

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追放と加入

第8話 失意の森に向かいます

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分かれ道に差し掛かった。
ここから、右に行けばガング荒野が広がり、中ほどまで行けば荒野遺跡がある。
真っ直ぐ行くと、アロイス雪原が広がり、スノースノー領がある。
左に行くと、失意の森があり、珍しい薬草が沢山取れるダンジョンがある。

私は、月影草を取りに失意の森に向かうので、荒野遺跡に向かう白銀の狼とは、ここでお別れです。

「ヴァルツさん、ミネアさん、フレイルさん、ここまでありがとうございました」

改めて、深くお辞儀して感謝を伝える。

「いや、礼を言うのはこちらの方だ!」
「そうよ、まさかお礼にポーションが貰えるなんて、ありがたいわ」
「本当です、それに逃走用アイテムまで、頂けるなんて」

私達はお互いに握手をして、無事を祈って別れた。





※※※白銀の狼視点※※※

イレーネが失意の森に向けて歩き出したのを、白銀の狼のメンバーは暖かい目で見つめていた。
あの馬鹿勇者が、イレーネを諦めるとは思わない。必ず、接触してくるのは目に見えて分かっていた。

だから、俺達は街を出るまで一緒にいようと、北の大地方面の依頼書を手に取ってまで着いてきた。それは、ある意味正しかったようだが……

「流石に、街の外までは着いてこないな」
「一応、東の勇者ですからね」
「着いてきても、魔物が出たら一瞬であの世行きよ彼らは」
「イレーネなら、1人でも大丈夫だがな」
「そうね……イレーネなら、大丈夫ね」
「彼女は自身の強さに気付いてませんけどね」
「それは、彼らのせいでしょ?全く、自分たちの無能さをイレーネのせいにするなんて」
「そうだな」

俺達が、イレーネと出会ったのは2年前、王都ルセリアで大々的に行われた勇者王決定戦だ。

この催しは、勇者パーティは強制参加、冒険者パーティは任意で誰でも参加可能な武闘大会だ。勇者王の称号は1年有効で、ギルドカードに登録される。町や村で高待遇が約束されている。過去には、冒険者が下克上を果たし、勇者王と呼ばれた事があるという。

その武闘大会で、東の勇者パーティにイレーネがいた。錬金術師と聞いていたが、その戦いで大活躍をしたのはイレーネだった。
回復ポーションが粒状だったのも驚きだが、仲間に飲ませるのも独特だった。
時空魔法で、仲間の口の中と繋げ、ポーションを放り込んでいたのだ。

更に、仲間の攻撃が当たるように、相手の体付近と空間を繋げ、仲間に攻撃が当たりそうなら、空間を歪ませ当たらないようにしていた。
自身へ攻撃してくる者にも対応し、魔力尽きるまで戦っていた。

最終的には、北の勇者が優勝し、東の勇者は2位だった。それが許せなかったのか、奴らはイレーネを責めやがった。必死に戦い、仲間に貢献した彼女に。

その戦いで、俺達やヴォルフ、王族が彼女の正体を知った。全員が気づいた訳じゃない。
王族の印は、目に現れる。しかも興奮状態じゃないと現れない。だから、戦ってる時に気付けたんだ。

13年ほど前に、行方不明になった王女様だと。それが、東の勇者の小間使いの様な扱いを受けてると知って、憤りを感じた。王族なんて、東の勇者を殺さん勢いだったぞ。

東の勇者は気に入られねぇが、イレーネは良い奴だし、助けてやりたいって思うのは普通だよな。

「行くか」
「ええ」
「そうですね」

3人で物思いに耽っていたが、顔を見合せ荒野遺跡に向かって歩き出した。


※※※失意の森※※※

はぁ~着いた!
失意の森!薄暗っ!

辿り着いた時には、太陽は沈みお月様がこんにちはしてました。
まぁ、夜じゃないと月影草は取れませんからね。月影草と、月光草はとても似てて、夜にならないと見分けがつかない厄介な薬草だ。

本当は1人で失意の森に入りたくはない。
だってここは……

がささささ

「ひっ」

そ~っと振り返るが何も無い。

失意の森の夜モンスターは、死霊系が多いんです!ゾンビとかゾンビとかゾンビとか!!
わたし、オバケ苦手なんです!
いや、得意な人とか居ませんよね!
そうですよね!

なので、さっさと目的の物を採取して出ましょう!怖いので!

聖水を自身に振りかけ、死霊系モンスターを寄せ付けないようにする。さらに、聖者の魔よけを首から下げる。

「よし、準備万端!行くわ」

小さく拳を握り、よしっと気合を入れる。
失意の森のダンジョンLvは85以上。
私でも何とかクリア出来ます。

(あ)

凄い!エレメントコアだ!
しかも、欠片じゃない、完璧な形のエレメントコアだわ。レアアイテムが手に入るなんて幸先いいわね。
攻撃系アイテムを作る上で、高レベルのアイテム作りに役立つアイテムです。

さて、のんびりしてる暇はありません。
急ぎましょう。


大木の影から、先を覗く。
そこには、湖があり縁に淡く光る花が咲いていた。周りに敵が居ないことを確認して近付く。

月の光を浴びて、輝く光を放っているのが月光草。淡く光っているのが月影草つきかげそうです。

月影草を摘み、ついでに月光草も取る。
カバンに詰め込めば、リスト化され、混ざる心配がないから安心だ。


(……)

ふと気配がして、顔を上げる。

「嫌な予感がする……」
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