14 / 41
追放と加入
第8話 失意の森に向かいます
しおりを挟む
分かれ道に差し掛かった。
ここから、右に行けばガング荒野が広がり、中ほどまで行けば荒野遺跡がある。
真っ直ぐ行くと、アロイス雪原が広がり、スノースノー領がある。
左に行くと、失意の森があり、珍しい薬草が沢山取れるダンジョンがある。
私は、月影草を取りに失意の森に向かうので、荒野遺跡に向かう白銀の狼とは、ここでお別れです。
「ヴァルツさん、ミネアさん、フレイルさん、ここまでありがとうございました」
改めて、深くお辞儀して感謝を伝える。
「いや、礼を言うのはこちらの方だ!」
「そうよ、まさかお礼にポーションが貰えるなんて、ありがたいわ」
「本当です、それに逃走用アイテムまで、頂けるなんて」
私達はお互いに握手をして、無事を祈って別れた。
※※※白銀の狼視点※※※
イレーネが失意の森に向けて歩き出したのを、白銀の狼のメンバーは暖かい目で見つめていた。
あの馬鹿勇者が、イレーネを諦めるとは思わない。必ず、接触してくるのは目に見えて分かっていた。
だから、俺達は街を出るまで一緒にいようと、北の大地方面の依頼書を手に取ってまで着いてきた。それは、ある意味正しかったようだが……
「流石に、街の外までは着いてこないな」
「一応、東の勇者ですからね」
「着いてきても、魔物が出たら一瞬であの世行きよ彼らは」
「イレーネなら、1人でも大丈夫だがな」
「そうね……イレーネなら、大丈夫ね」
「彼女は自身の強さに気付いてませんけどね」
「それは、彼らのせいでしょ?全く、自分たちの無能さをイレーネのせいにするなんて」
「そうだな」
俺達が、イレーネと出会ったのは2年前、王都ルセリアで大々的に行われた勇者王決定戦だ。
この催しは、勇者パーティは強制参加、冒険者パーティは任意で誰でも参加可能な武闘大会だ。勇者王の称号は1年有効で、ギルドカードに登録される。町や村で高待遇が約束されている。過去には、冒険者が下克上を果たし、勇者王と呼ばれた事があるという。
その武闘大会で、東の勇者パーティにイレーネがいた。錬金術師と聞いていたが、その戦いで大活躍をしたのはイレーネだった。
回復ポーションが粒状だったのも驚きだが、仲間に飲ませるのも独特だった。
時空魔法で、仲間の口の中と繋げ、ポーションを放り込んでいたのだ。
更に、仲間の攻撃が当たるように、相手の体付近と空間を繋げ、仲間に攻撃が当たりそうなら、空間を歪ませ当たらないようにしていた。
自身へ攻撃してくる者にも対応し、魔力尽きるまで戦っていた。
最終的には、北の勇者が優勝し、東の勇者は2位だった。それが許せなかったのか、奴らはイレーネを責めやがった。必死に戦い、仲間に貢献した彼女に。
その戦いで、俺達やヴォルフ、王族が彼女の正体を知った。全員が気づいた訳じゃない。
王族の印は、目に現れる。しかも興奮状態じゃないと現れない。だから、戦ってる時に気付けたんだ。
13年ほど前に、行方不明になった王女様だと。それが、東の勇者の小間使いの様な扱いを受けてると知って、憤りを感じた。王族なんて、東の勇者を殺さん勢いだったぞ。
東の勇者は気に入られねぇが、イレーネは良い奴だし、助けてやりたいって思うのは普通だよな。
「行くか」
「ええ」
「そうですね」
3人で物思いに耽っていたが、顔を見合せ荒野遺跡に向かって歩き出した。
※※※失意の森※※※
はぁ~着いた!
失意の森!薄暗っ!
辿り着いた時には、太陽は沈みお月様がこんにちはしてました。
まぁ、夜じゃないと月影草は取れませんからね。月影草と、月光草はとても似てて、夜にならないと見分けがつかない厄介な薬草だ。
本当は1人で失意の森に入りたくはない。
だってここは……
がささささ
「ひっ」
そ~っと振り返るが何も無い。
失意の森の夜モンスターは、死霊系が多いんです!ゾンビとかゾンビとかゾンビとか!!
わたし、オバケ苦手なんです!
いや、得意な人とか居ませんよね!
そうですよね!
なので、さっさと目的の物を採取して出ましょう!怖いので!
聖水を自身に振りかけ、死霊系モンスターを寄せ付けないようにする。さらに、聖者の魔よけを首から下げる。
「よし、準備万端!行くわ」
小さく拳を握り、よしっと気合を入れる。
失意の森のダンジョンLvは85以上。
私でも何とかクリア出来ます。
(あ)
凄い!エレメントコアだ!
しかも、欠片じゃない、完璧な形のエレメントコアだわ。レアアイテムが手に入るなんて幸先いいわね。
攻撃系アイテムを作る上で、高レベルのアイテム作りに役立つアイテムです。
さて、のんびりしてる暇はありません。
急ぎましょう。
大木の影から、先を覗く。
そこには、湖があり縁に淡く光る花が咲いていた。周りに敵が居ないことを確認して近付く。
月の光を浴びて、輝く光を放っているのが月光草。淡く光っているのが月影草です。
月影草を摘み、ついでに月光草も取る。
カバンに詰め込めば、リスト化され、混ざる心配がないから安心だ。
(……)
ふと気配がして、顔を上げる。
「嫌な予感がする……」
ここから、右に行けばガング荒野が広がり、中ほどまで行けば荒野遺跡がある。
真っ直ぐ行くと、アロイス雪原が広がり、スノースノー領がある。
左に行くと、失意の森があり、珍しい薬草が沢山取れるダンジョンがある。
私は、月影草を取りに失意の森に向かうので、荒野遺跡に向かう白銀の狼とは、ここでお別れです。
「ヴァルツさん、ミネアさん、フレイルさん、ここまでありがとうございました」
改めて、深くお辞儀して感謝を伝える。
「いや、礼を言うのはこちらの方だ!」
「そうよ、まさかお礼にポーションが貰えるなんて、ありがたいわ」
「本当です、それに逃走用アイテムまで、頂けるなんて」
私達はお互いに握手をして、無事を祈って別れた。
※※※白銀の狼視点※※※
イレーネが失意の森に向けて歩き出したのを、白銀の狼のメンバーは暖かい目で見つめていた。
あの馬鹿勇者が、イレーネを諦めるとは思わない。必ず、接触してくるのは目に見えて分かっていた。
だから、俺達は街を出るまで一緒にいようと、北の大地方面の依頼書を手に取ってまで着いてきた。それは、ある意味正しかったようだが……
「流石に、街の外までは着いてこないな」
「一応、東の勇者ですからね」
「着いてきても、魔物が出たら一瞬であの世行きよ彼らは」
「イレーネなら、1人でも大丈夫だがな」
「そうね……イレーネなら、大丈夫ね」
「彼女は自身の強さに気付いてませんけどね」
「それは、彼らのせいでしょ?全く、自分たちの無能さをイレーネのせいにするなんて」
「そうだな」
俺達が、イレーネと出会ったのは2年前、王都ルセリアで大々的に行われた勇者王決定戦だ。
この催しは、勇者パーティは強制参加、冒険者パーティは任意で誰でも参加可能な武闘大会だ。勇者王の称号は1年有効で、ギルドカードに登録される。町や村で高待遇が約束されている。過去には、冒険者が下克上を果たし、勇者王と呼ばれた事があるという。
その武闘大会で、東の勇者パーティにイレーネがいた。錬金術師と聞いていたが、その戦いで大活躍をしたのはイレーネだった。
回復ポーションが粒状だったのも驚きだが、仲間に飲ませるのも独特だった。
時空魔法で、仲間の口の中と繋げ、ポーションを放り込んでいたのだ。
更に、仲間の攻撃が当たるように、相手の体付近と空間を繋げ、仲間に攻撃が当たりそうなら、空間を歪ませ当たらないようにしていた。
自身へ攻撃してくる者にも対応し、魔力尽きるまで戦っていた。
最終的には、北の勇者が優勝し、東の勇者は2位だった。それが許せなかったのか、奴らはイレーネを責めやがった。必死に戦い、仲間に貢献した彼女に。
その戦いで、俺達やヴォルフ、王族が彼女の正体を知った。全員が気づいた訳じゃない。
王族の印は、目に現れる。しかも興奮状態じゃないと現れない。だから、戦ってる時に気付けたんだ。
13年ほど前に、行方不明になった王女様だと。それが、東の勇者の小間使いの様な扱いを受けてると知って、憤りを感じた。王族なんて、東の勇者を殺さん勢いだったぞ。
東の勇者は気に入られねぇが、イレーネは良い奴だし、助けてやりたいって思うのは普通だよな。
「行くか」
「ええ」
「そうですね」
3人で物思いに耽っていたが、顔を見合せ荒野遺跡に向かって歩き出した。
※※※失意の森※※※
はぁ~着いた!
失意の森!薄暗っ!
辿り着いた時には、太陽は沈みお月様がこんにちはしてました。
まぁ、夜じゃないと月影草は取れませんからね。月影草と、月光草はとても似てて、夜にならないと見分けがつかない厄介な薬草だ。
本当は1人で失意の森に入りたくはない。
だってここは……
がささささ
「ひっ」
そ~っと振り返るが何も無い。
失意の森の夜モンスターは、死霊系が多いんです!ゾンビとかゾンビとかゾンビとか!!
わたし、オバケ苦手なんです!
いや、得意な人とか居ませんよね!
そうですよね!
なので、さっさと目的の物を採取して出ましょう!怖いので!
聖水を自身に振りかけ、死霊系モンスターを寄せ付けないようにする。さらに、聖者の魔よけを首から下げる。
「よし、準備万端!行くわ」
小さく拳を握り、よしっと気合を入れる。
失意の森のダンジョンLvは85以上。
私でも何とかクリア出来ます。
(あ)
凄い!エレメントコアだ!
しかも、欠片じゃない、完璧な形のエレメントコアだわ。レアアイテムが手に入るなんて幸先いいわね。
攻撃系アイテムを作る上で、高レベルのアイテム作りに役立つアイテムです。
さて、のんびりしてる暇はありません。
急ぎましょう。
大木の影から、先を覗く。
そこには、湖があり縁に淡く光る花が咲いていた。周りに敵が居ないことを確認して近付く。
月の光を浴びて、輝く光を放っているのが月光草。淡く光っているのが月影草です。
月影草を摘み、ついでに月光草も取る。
カバンに詰め込めば、リスト化され、混ざる心配がないから安心だ。
(……)
ふと気配がして、顔を上げる。
「嫌な予感がする……」
2
あなたにおすすめの小説
僕の秘密を知った自称勇者が聖剣を寄越せと言ってきたので渡してみた
黒木メイ
ファンタジー
世界に一人しかいないと言われている『勇者』。
その『勇者』は今、ワグナー王国にいるらしい。
曖昧なのには理由があった。
『勇者』だと思わしき少年、レンが頑なに「僕は勇者じゃない」と言っているからだ。
どんなに周りが勇者だと持て囃してもレンは認めようとしない。
※小説家になろうにも随時転載中。
レンはただ、ある目的のついでに人々を助けただけだと言う。
それでも皆はレンが勇者だと思っていた。
突如日本という国から彼らが転移してくるまでは。
はたして、レンは本当に勇者ではないのか……。
ざまぁあり・友情あり・謎ありな作品です。
※小説家になろう、カクヨム、ネオページにも掲載。
友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。
だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった
何故なら、彼は『転生者』だから…
今度は違う切り口からのアプローチ。
追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。
こうご期待。
防御力を下げる魔法しか使えなかった俺は勇者パーティから追放されたけど俺の魔法に強制脱衣の追加効果が発現したので世界中で畏怖の対象になりました
かにくくり
ファンタジー
魔法使いクサナギは国王の命により勇者パーティの一員として魔獣討伐の任務を続けていた。
しかし相手の防御力を下げる魔法しか使う事ができないクサナギは仲間達からお荷物扱いをされてパーティから追放されてしまう。
しかし勇者達は今までクサナギの魔法で魔物の防御力が下がっていたおかげで楽に戦えていたという事実に全く気付いていなかった。
勇者パーティが没落していく中、クサナギは追放された地で彼の本当の力を知る新たな仲間を加えて一大勢力を築いていく。
そして防御力を下げるだけだったクサナギの魔法はいつしか次のステップに進化していた。
相手の身に着けている物を強制的に剥ぎ取るという究極の魔法を習得したクサナギの前に立ち向かえる者は誰ひとりいなかった。
※小説家になろうにも掲載しています。
【 完 結 】言祝ぎの聖女
しずもり
ファンタジー
聖女ミーシェは断罪された。
『言祝ぎの聖女』の座を聖女ラヴィーナから不当に奪ったとして、聖女の資格を剥奪され国外追放の罰を受けたのだ。
だが、隣国との国境へ向かう馬車は、同乗していた聖騎士ウィルと共に崖から落ちた。
誤字脱字があると思います。見つけ次第、修正を入れています。
恋愛要素は完結までほぼありませんが、ハッピーエンド予定です。
この国を護ってきた私が、なぜ婚約破棄されなければいけないの?
柊
ファンタジー
ルミドール聖王国第一王子アルベリク・ダランディールに、「聖女としてふさわしくない」と言われ、同時に婚約破棄されてしまった聖女ヴィアナ。失意のどん底に落ち込むヴィアナだったが、第二王子マリクに「この国を出よう」と誘われ、そのまま求婚される。それを受け入れたヴィアナは聖女聖人が確認されたことのないテレンツィアへと向かうが……。
※複数のサイトに投稿しています。
「魔道具の燃料でしかない」と言われた聖女が追い出されたので、結界は消えます
七辻ゆゆ
ファンタジー
聖女ミュゼの仕事は魔道具に力を注ぐだけだ。そうして国を覆う大結界が発動している。
「ルーチェは魔道具に力を注げる上、癒やしの力まで持っている、まさに聖女だ。燃料でしかない平民のおまえとは比べようもない」
そう言われて、ミュゼは城を追い出された。
しかし城から出たことのなかったミュゼが外の世界に恐怖した結果、自力で結界を張れるようになっていた。
そしてミュゼが力を注がなくなった大結界は力を失い……
英雄一家は国を去る【一話完結】
青緑 ネトロア
ファンタジー
婚約者との舞踏会中、火急の知らせにより領地へ帰り、3年かけて魔物大発生を収めたテレジア。3年振りに王都へ戻ったが、国の一大事から護った一家へ言い渡されたのは、テレジアの婚約破棄だった。
- - - - - - - - - - - - -
ただいま後日談の加筆を計画中です。
2025/06/22
聖女業に飽きて喫茶店開いたんだけど、追放を言い渡されたので辺境に移り住みます!【完結】
青緑 ネトロア
ファンタジー
聖女が喫茶店を開くけど、追放されて辺境に移り住んだ物語と、聖女のいない王都。
———————————————
物語内のノーラとデイジーは同一人物です。
王都の小話は追記予定。
修正を入れることがあるかもしれませんが、作品・物語自体は完結です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる