短編集

紫宛

文字の大きさ
4 / 13
【国に勝利を齎して~】

ティルセリア&アルヴィス(バレンタイン)

「こんのぉ~!!今日が大事な日だと分かってて、問題起こしてんでしょうねぇ!!」

口が悪くなるのは仕方がない。
だって今日は、2月14日!世間一般で言えばバレンタイン!恋人同士のイベント!

なのに、なのにぃ!
私はどうしてこんな所で、盗賊を相手しなきゃいけないのよぉ!!!!

「あーぁ、セリアがめちゃくちゃ荒れてるよ」
「仕方ありませんね、今日までかかる予定では無かったですから」

僕とアルフィ、それからセリアは、ゼファード帝国に現れた盗賊退治にやって来ていた。元々は別々の場所に出没した盗賊退治だったんだけど……こいつら、結託してたんだよねぇ。だから、僕らも情報交換しながら、追い詰めてたんだけど……意外とすばしっこいんだよ。

「逃げるなぁ!!いい加減捕まりなさいよぉ!」

1番前を馬で駆けているのがセリアだ。
その後ろを僕とアルフィ、さらに後ろに兵達の順番で森を駆けてるんだけど……流石に、兵達に遅れが出てる。

森を駆けるのは、難しいからね。

「セリア!兵に遅れが出ています!これ以上の追跡は危険です!」
「なら、お前達は戻っていろ!この先は、野原だ!私は行く!」
「ああもう!こうなったら、セリアは聞かないよっ!」
「仕方ありませんね、副団長以外は戻りなさい!連絡を待て!」
「はっ!!」



暫く森を駆け抜け、抜けると視界が開けた。
セリアの馬がスピードを上げて追い上げるのを、後ろから眺めていると…何か悪寒が走った。

(あれ?この感じ……どこかで…)

隣のアルフィを見ると、同じように顔色を悪くさせていた。
そして、アルフィは上を指した。

(あぁ……やばい。僕たちに、とばっちりが来ませんように……)




その頃セリアは……

盗賊の首領と思われる人物を追い詰めていた。隣を並走し、飛び移る。

「はっ!!…っ!」

男を突き飛ばし、地面を転がり、馬乗りになって捕まえた。

「捕まえたぞ!!」
「うん。おめでとう」
「あぁ!ありがと……ぅ?」

拍手と羽音が後ろの方から聞こえた。
その瞬間、ゾワッとした何かが全身を駆け巡った。

(この感じ……前にも…っ)

「セリア」
「うぇ……?!」 

名前を呼ばれ、浮遊感に襲われる。
盗賊に馬乗りになって押さえていた私の体は、今はアルの腕の中……

「あ、……アル?!何でここにっ!!?」
「うん。会いたくなって来ちゃった」

そう言ってニコッと笑うが、ティルセリアは気付いていた。目が笑っていないことに。

「あ、アル?」
「ん?」
「何か、怒ってる?」
「なぜ?」
「い、いや……」

怒ってないよ。彼はそう言うが……ティルセリアも、同僚や部下も彼から発せられる怒気に戦々恐々とした。

「怒ってはいないけど……。セリア?どうして、俺以外の男に馬乗りになっているの?」
「ひっ!」

アルのバカ!
滅茶苦茶怒ってるじゃないの!

殺気にも似た気配が場を支配するけれど……

「殿下、話はコレをどうにかした後に城でした方が……」

勇気を出したアルフィが、アルに進言した事で殿下のまわりの空気が変わった。

「そうだね。ここじゃ、セリアへのお仕置も満足に出来ないし……ね?」
「ひぃ!」

ニコッと私に笑いかける顔が、鬼のようになってますっ!

逃げ……れる訳ないよねっ。
行動読まれてるもんねっ!
抱き上げられている上に、彼の飛竜オニキスに乗せられてしまったもの……。

……部下への指示……は……?
アルが、クルトとミクトに何やら指示していた。

これは、覚悟しなきゃダメか……な?

「じゃあ、フェイドにアルフィ。後は頼んだよ」
「「はっ」」




彼らを置いて、オニキスは力強く羽ばたくと、一気に空に舞い上がった。
城へは、数分で着いたわ。

そのまま、陛下に報告もしないで部屋に連れて行かれた。

「あ、アル?報告……」
「キースにさせる」
「あ、……」

私が言葉を紡ぐ前に唇にキスされた。
アルの行動は性急で、焦っているように感じられた。

「アル」
「なに?」

唇にキスを落とした後は、頬に額に首筋に胸に……次々にキスを落としていくアルヴィス。

「今日、なん、ん……のひか、…知ってる……は……ぁ」
「……」
「はや、く……帰り、たかった、の」
「その為に、男に馬乗りになったの?」
「ごめ……んむ……なさ、い」

アルのキスが止んだので、ゆっくりと体を起こして、アルヴィスに向き直り話し始めた。

「今日、バレンタイン、だって……聞いたの。大切、な人に、愛を伝え、る日だって」
「……」
「アルに、渡し、たくて……コレ」

そう言って私が差し出したのは、任務に出かける前に一生懸命作ったチョコケーキだった。

「……」
「いら、ない?」
「はぁ、貰うよ。……本当に、セリアに怒ってた訳じゃないんだ。俺だって、今日という日を一緒に過ごしたかったのに……誰かさんは任務に行ったし、迎えに行ってみれば、男の上に馬乗りになって、距離だって近かったし……ちょっとイライラしてただけだよ」

そう言ったアルの顔は赤く、隠すようにそっぽを向いてしまったけど、耳まで真っ赤だった。

そんなアルを後ろから抱き締め……想いを伝えた。

「愛してるわ」
「……俺の方が愛してる」
「ふふ、そうね」

~完~
感想 0

あなたにおすすめの小説

ちょっと大人な物語はこちらです

神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な短編物語集です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

抱きしめて

麻実
恋愛
夫の長期に亘る不倫に 女としての自信を失った妻は、新しい出会いに飛び込んでいく。

義姉と押し入れに隠れたら、止まれなくなった

くろがねや
恋愛
父の再婚で、義姉ができた。 血は繋がっていない。でも——家族だ。そう言い聞かせながら、涼介はずっと沙耶から距離を取ってきた。 夏休み。田舎への帰省。甥っ子にせがまれて始まったかくれんぼ。急いで飛び込んだ押し入れの中に、先客がいた。 「……涼介くん」 薄い水色の浴衣。下ろした髪。橙色の光に染まった、沙耶の顔。 逃げ場のない暗闇の中で、二人分の体温が混ざり合う。 夜、来て。 その一言が——涼介の、全部を壊した。 甘くて、苦しくて、止まれない。 これは、ある夏の、秘密の話。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

【魔法少女の性事情・1】恥ずかしがり屋の魔法少女16歳が肉欲に溺れる話

TEKKON
恋愛
きっとルンルンに怒られちゃうけど、頑張って大幹部を倒したんだもん。今日は変身したままHしても、良いよね?

極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です

朝陽七彩
恋愛
 私は。 「夕鶴、こっちにおいで」  現役の高校生だけど。 「ずっと夕鶴とこうしていたい」  担任の先生と。 「夕鶴を誰にも渡したくない」  付き合っています。  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  神城夕鶴(かみしろ ゆづる)  軽音楽部の絶対的エース  飛鷹隼理(ひだか しゅんり)  アイドル的存在の超イケメン先生  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  彼の名前は飛鷹隼理くん。  隼理くんは。 「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」  そう言って……。 「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」  そして隼理くんは……。  ……‼  しゅっ……隼理くん……っ。  そんなことをされたら……。  隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。  ……だけど……。  え……。  誰……?  誰なの……?  その人はいったい誰なの、隼理くん。  ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。  その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。  でも。  でも訊けない。  隼理くんに直接訊くことなんて。  私にはできない。  私は。  私は、これから先、一体どうすればいいの……?

黒瀬部長は部下を溺愛したい

桐生桜
恋愛
イケメン上司の黒瀬部長は営業部のエース。 人にも自分にも厳しくちょっぴり怖い……けど! 好きな人にはとことん尽くして甘やかしたい、愛でたい……の溺愛体質。 部下である白石莉央はその溺愛を一心に受け、とことん愛される。 スパダリ鬼上司×新人OLのイチャラブストーリーを一話ショートに。

淫らな蜜に狂わされ

歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。 全体的に性的表現・性行為あり。 他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。 全3話完結済みです。