短編集

紫宛

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【嫁ぎたくないと叫んだ妹の代わりに~】

ニィナ&ルーファス(バレンタイン)

「ルース様、冬にサブマリン国に行くのは初めてですね」
「そうだな、寒くないか?」
「大丈夫ですよ」
われが温度調節をしておる。ニィナを凍えさせたりはせぬよ。お主もして欲しいか?』
「いや、俺は平気だ」 

今日は、サブマリン国で「バレンタイン」というイベントを行うそうです。その為の式典に、私達は招待されて……

バレンタインというのは、大切な人や大好きな人に、感謝や想いを伝える日だそうです。



「───!」

サブマリン国へ行く船に乗ろうとした時、海の方から何か声が聞こえました。その声に耳をすませようとしたら、肩にいたハイル様が『奴か……』と呟いて……

私達は船には乗り込まず、浜辺の方に移動しました。そこでハイル様が人避けの結界というものを貼って、声の主が来るのを待ったんです。ザヴァンと大きな音がして、海色の鱗を持った美しい竜が目の前に現れました。

『よっ!久しいな』
「お久しぶりです。海の龍神様」
「ご無沙汰しております。海の龍神殿」

ニィナは天の龍神の契約者の為、海の龍神から気軽に接しても良いと言われている。本当はルースも『畏まられるのは嫌いだ。普通に接しろ!構わねぇから』と言われているが……

『おい、俺は気軽に接しろと言ったろうが!』
「いや、しかし……」
『次はねぇからな。あと、お前らなら名前で呼んでも良いっつったろ?なんで呼ばねぇんだよ……』
「え?ですが……」
『だから、言ったであろう?奴に敬語は必要ないと。我にも「海の」では無く、名前呼びせよと言ってきおって…』

私の肩で、頭を左右に揺らしながら『全く、勝手をしおって』と、ブツブツ言うハイル様に苦笑が漏れ。

『まぁ、良い。それで、お主が我らをサブマリン国に連れて行くのか?』
『おうよ、俺が連れてった方が早いし、そのまま王城まで一気に連れてけるからな』

なんでも……サブマリン国の王城は海と繋がっていて、城の中にも水路があるそうです。謁見室や王様の執務室にも、水槽?みたいなのがあると聞きます。

海の龍神アウス様が、既に王様達の許可は取ってあると言ってました。

『よし、お前ら行くぞ』

海の龍神がそう言うと、ニィナの周りに水の膜が出来て浮き上がり、そのまま静かに海の中に入って行った。

「わっあぁ~」
「これは……」

海の中は透き通っていて幻想的で……綺麗な魚が沢山泳いでいて感動しました!

隣を優雅に泳いでいたアウス様が『凄いだろ?』と自慢げに胸を張って言いうと、肩にいたハイル様も首を伸ばし胸を張るように…

『ふむ、我の空も美しいぞ。今度、ニィナ達を招待してやろう』
『お?良いな!そん時は俺も行くわ』
『お主は呼ばぬ!』

と言いました。
ハイル様とアウス様は、とても仲がいいみたい。それを言ったら『気色の悪い事を言うでない!』と言われましたけど…でも、やっぱり仲がいいと思います。私はルース様を見て微笑み、彼もまた微笑んでいました。



皆と話している内にお城に着き、王様と謁見しました。サブマリン国の王様は、ルース様と同じ褐色の肌だけど、ルース様と違って温和な顔をしていると思います。

「よく来たの。街で祭りをしておる、楽しんでいくと良い」
「カカオを使ったチョコという菓子が、人気ですよ。甘みを抑えた物もあるそうですから、ルーファス様も召し上がれるかと」
「ありがとうございます!」
「悪いな」
『街に行くのか?よしっ』

何故か気合いの入った掛け声と共に、ボフッという音が響く。小さな魚だったアウス様は、海色の髪を後ろで緩くひとつに縛った男性に変わっていた。ハイル様と同じ美丈夫だけど、ハイル様と違って白い歯が印象的な頼れるお兄ちゃんって感じです。

『ま、待てお主!ついてくる気か?!そんな姿になってまで』
「おうよ、案内が必要だろ?街にはよく行くからな!任せろ!」
『要らぬ!』
「迷子になったら困るだろ?夜は2人っきりにしてやるからよ」

ハイル様の言葉を無視して、アウス様は私達を連れて街に繰り出した。目に入る光景は、どこもかしこも笑顔で溢れた人々だった。

『大好きな人に渡すの!それで告白する!』
『パパ、喜んでくれるかなぁ?』
『あの人は、甘いの苦手だったわよね……』
『俺男だけど、彼女に何か渡したいな』

聞こえてくる声も、大切な人を思ったものだった。

私も何かルース様に渡したいな……
別行動……は、させて貰えないよね……どうしよう…。

そんな時……ハイル様がルース様の肩に移動し『ルースよ、我に付き合ってくれぬか?』と言った。

(え?ハイル様?)
(我も、ニィナに何かプレゼントしたいのだ。故に、少し別行動だ)

『アウス。ニィナについてやってくれ』
「ん?いいぞ」
「ハイル殿?!」
『数時間の間だけだ。ニィナにはザインもアイーシャも付いておる、更にアウスもおるのだ。心配は要らぬだろう』
「ニィナ……」
「ルース様……私は、ルース様に何か贈りたいのです。ですから、少し間別行動です。ハイル様、ありがとうございます」
『よい』
「分かった。気を付けろよ?」

ルース様に頷きで返し、アウス様とザインさんアイーシャと一緒にショップに向かった。
ルース様の好みは分からなかったけど、ザインさんが色々教えてくれて3件目のお店でやっと満足のいくチョコが買えた。

広場に行くと既にルース様がいて、噴水の縁で座ってる姿が、なんていうか格好良くて……自然と熱くなる頬に手を添えた。

手で顔を隠しながら、それでも視界にルース様を映したくて、手の隙間から覗くと彼の視線が私を捉えた。

ゆっくりと彼の元に歩いていく。

「良いのは買えたのか?」
「はい」

時刻は夕方……太陽が西に沈み始めていた。

『ニィナ、我はアウスと共に少し離れておる。ルースと二人楽しんで来ると良い』
「はい!」
「……珍しいな…何か企んでるのか?」
『ついて行って良いなら、ゆくが?』
「…………」


ルース様が私の手を握り、歩き出しました。

「…………」
「……」

お互いに無言で、肩を寄せ合い、人気のない道を歩き浜辺に辿り着く。太陽は完全に沈み、夜の静けさが2人を包んだ。

「ルース様……」
「なんだ?」

私は立ち止まり、手に持っていた荷物の中から一つの包みを取り出す。落ち着いた色合いのリボンに包まれた箱は、先程買ったチョコレートだった。

カカオをふんだんに使った甘さ控えめのチョコレート。

「あの時、貴方が選んでくれたから、私は今も笑顔でいられます。
ありがとう、愛しています。これを受け取ってくださいますか?」
「俺の方こそ、ニィナが居たから救われたんだ。ありがとうな」

ルースは、ニィナからチョコを受け取ると抱き寄せ、唇にキスをした。角度を変え何度もキスをする。ニィナの体から力が抜けさそうになると、自らの足を彼女の足の間に滑り込ませ支えた。

「愛してる……俺のニィナ……」

バレンタインの夜、浜辺で愛を伝えた2人を見守る影が4つ。


『ふむ、幸せそうで何より』
「……まだ、出たらダメなのか?」
「2人とも……覗きは良くありませんよ」
「ザイン様も覗いてるではありませんか…」


~完~
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